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元給食営業マンが考える学校給食における諸問題の元凶

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給食で中学生700人中毒 埼玉・上尾(共同通信) - Yahoo!ニュース

 学校給食では問題がときどき起こるけれども、個々の事案ではなく、それらの元凶ではないか?と僕が考えているものについてお話したい。先日、「〇〇市の学校給食担当ですが御社は給食事業をやっていますか?」という問合せがあった。今の会社にも給食部門はあるので、その旨を回答。その日は「あらためてご連絡します」という事務的な言葉で終了。数日後、同じ役所の同じセクションから電話があり、「来年度の学校給食の見直しをはかります。公正な取引をはかり、よりよい提案によって学校給食の内容を向上させます。貴社は参加しますか?」と言われた。「条件を見て検討します」と答えて、後日、わざわざ郵送で「令和4年度学校給食調理業務調査票」が封書で届いた。会社名、代表者名、所在地、営業担当者名、連絡先、という記入項目のあとに、プロポーザル参加資格が記載されていた。

1.自治体の定める参加資格を有すること 2.〇〇内に本社または営業所を有すること 3.資本金年間売上高 4.事業継続年数 5.過去3年間食中毒事故を起こしていないこと 6.現在〇〇市内または近隣自治体において学校給食調理業務を受託していること。等々。

そして最後に意向の有無に〇を記す欄があった。

要件6で落胆した。またかよ、と。現時点で市内で学校給食調理業務を受託していない業者は参加意向を示しても最初の段階で排除されてしまうことが一目瞭然だからだ。一応、入札を成立させるために門戸をひらいているように見えるが、現業者(現体制)をひっくり返すのはほぼ無理である。だから数十年同じ業者が学校給食を受託している現状があるし、学校給食専門の給食会社が成立するのだ。いい給食を運営しているのではなく、外部が入れない仕組みが構築されているだけなのだ。それが不祥事の元凶ではないか。

十年くらい昔の給食営業マン時代、同様の通知を受け、その点について自治体の担当者に質問したことがある。「これ現実的に新しい業者は入れませんよね」。担当者は「要件を満たしていれば新しい業者様に変更する可能性はあります。金額と提案次第です」という答え。「でも現在受託していないと選ばれませんよね。現業者でほぼ決まりですよね。近隣自治体で実績のある会社にわずかに可能性が残りますけど。形は公募や競争という体裁を取っていることになっていても、これ、ほぼ現業者以外排除ですよね」「そんなことはありません。良い提案があれば」「良い提案といっても提案する段階まで進めませんよね。要件満たしていないからという点で落選でしょ。やめてもらえませんか可能性がないのに、入札を成立させるためだけにウチみたいな会社に声をかけるの」「そんなことはありません」という不毛なやりとりを繰り返した末、エントリーしてみたけれど要件を満たしていないので落選した。案の定、提案や入札まで行けなかったのだ。

なぜ、こういう要件を設定して排除をするのか。学校給食の実績のない会社には任せられないという安全性の観点から、が表向きの理由だろう。実際は、今の体制を変えたくない何らかの事情がある、ということだろう。それが委託受託双方に何をもたらすのかはご想像に任せるが。そもそも学校給食運営は、給食というカテゴリの中で特別難易度の高いものではない(病院給食も求められる安全性は高く、なにより個別対応が細かい。何百規模の病院で個別に食札変更がバリバリあるのを想像してもらいたい)。普通に給食事業を運営できていれば、特段難しい仕事はないのだ。それでも安全性がーという理由で排除していく。ではなぜ、昨今起きている学校給食における事故は何十年も続けている体制で起きるのか。安全なはずではないのか。学校給食は何十年も同じ体制で運営を続けている異常なところが多い。異常であることが異常でなくなっているのが異常なのである。

冒頭の調査票については「ウチが受託する可能性はゼロだから」と思い放置していた。民間企業は無駄なことはしない。当たり前である。放置してたら電話がかかってきた。調査票はどうなりましたか?参加意志や要件を満たしていなくても提出してもらわければ困ります、などと言うので、「ウチは全然困りませんよ。仕事にならないものに力を入れる企業はありませんから」と申し上げた。公務員は無駄なことに力を入れている。からかう気力もないので、すぐに対応します、つって調査票をみて驚いた。メールアドレスの記載があるところにファックス番号が…。実印が必要なんて…。いまどき指定された提出手段が持参か郵送かファックスなんて…。新しく変えるつもりなんてないことが、こういうところにあらわれてしまうのだろう。

いろいろと悪口を並べてしまったけれども、ほとんどの学校給食は本当によくやっていると思う。けれども、ここで述べたような体制を変えない姿勢が、汚職的なものや運営の硬直を招いているのもまた事実だと思う。本当にガチで見直さないことで誰に何があるのだろうね(棒読み)。単純に変化を嫌う昔からのお役所仕事なのかもしれないが…。絶望的なのは、ウチの会社はほぼ全国エリアで業者登録をしているけれども、この調査票のようなやりとりがこの秋ウチだけでも何十件も行われていることなのである。(所要時間28分)

お仕事エッセイ満載の本を出しました。→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。

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