感染による自宅療養から職場復帰して1か月経過した。おかげさまで目立った後遺症はない。家庭では奥様に対してもともと稲穂のごとく頭を垂れて過ごしてきたが、感染以来はますます立場がなくなり額を床に擦り付けるように生きている。キン肉マンなら額の肉マークが擦り消えているだろう。
会社では復帰後に上層部から「どこで遊んでいた?正直に言ってみろ」「たるんでいるから病気になる」などと心ないことを言われて、眉間のしわが濃くなるばかりだ。だが、もっとも厄介なのは、会社上層部の高齢者が「自宅療養」と「在宅勤務」の違いを理解していないことである。「家にいる=サボる」という重度の出社病患者なのだ。
もともと、彼らは在宅勤務に反対の立場であった。「家では社員はサボる。会社に顔を出して気合を入れないと仕事にならない。交通費はそのための必要コストだ」というのがその理屈。「会社にいる人間は仕事をしている/自宅にいる人間はサボる」という認識の上層部自身が、会社に来て、パーテーションのなかで昼寝と読書(鬼平)に明け暮れているのだから悪夢である。
僕は業務効率化(在宅勤務も含む)をすすめてきたので上層部から目をつけられていた。そのため自宅療養中、激しいのど痛、倦怠感、高熱で寝込んでいるところ、上層部から「希望通り自宅にいるならいつもどおりに仕事をしろ」「自分で家でも会社と変わらず仕事ができるといってきたのなら証明しろ」と嫌味を言われた。これは僕に対する普段からのムカつきと、自宅にいるという要素だけを取り出して都合よく解釈していることと、そして自宅療養と在宅勤務の違いがまったくわかっていないことの悪魔合体の結果であった。
職場復帰してからも、僕自身が自宅療養中に仕事ができなかったことを証拠に在宅勤務はダメという謎理論をときどき聞かされている。昨日もその話をされた。上層部イチの高齢者である。呼び出されて、その話を聞かされているとき、当該上層部の発言のなかで言葉が滅茶苦茶になっていることに気が付いた。自宅勤務。在宅療養はまだいい。勤務療養、療養勤務については意味不明であった。僕を非難したいがためにワンダーなことを言い始めているのか、単に、漢字四文字ならぶと理解が追い付かないだけなのか。劣化って悲しいね。
呼び出しておいて自宅療養、在宅勤務、勤務療養、療養勤務の混じった意味のとりにくい話を浴びせながら上層部は目をとじていた。きっつー。ついていけねー。昼食後、眠い時間だ。お昼寝の時間でちゅねー。漢字四文字以上は理解できないと看過した僕は「小林陵侑すごかったですねー」「北方領土どうなりますかねー」「渡辺竜王おしかったですねー」とグロッキーな相手が自宅療養や在宅勤務と識別できない情報を与えた。漢字四文字の3番目がRYOUやRYUだったら自宅療養と認識するみたいである。誤情報をあたえるジャミングであった。
上層部は目をとじて腕を組んで、そうだな、そうだな、と反応したあとで、眠気が限界に達して永劫の眠りにつくつもりなのだろうね、「今日はこのへんにしておこう。行ってよし」と僕を解放した。彼には自宅療養と在宅勤務の違いは永遠に理解できない。今の生き方を止められない。齢69才。奇しくもプーチン露西亜大統領閣下と同じ年齢である。劣化はさけられない。一方的に振り回されるのは周りの下々である。悲しいし、やってられない。(所要時間18分)
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