Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

マネジメントってレベルじゃねーぞ

僕は食品会社に勤務する営業部長だ。中小企業なのでやることが多い。新規開発営業の他にもイベント時のスーツアクター(トナカイくん/トン吉)当番、トナカイくんとトン吉の保守管理等重要業務も任されている。最近は、食材高騰や人件費高騰や人不足の直撃を受け、それらを担当する中間管理職が慌ただしく動いているため、彼らの手が回らないマネジメント業務もやらされている。事業本部長の代理である。事業本部長は「代理だから難しく考えなくていーよー。難題に当たったら持ち帰ってねー」とライト感覚で言ってくれた。

取り急ぎ対応する必要があったのは某小規模事業所。責任者とその他パートスタッフの関係がうまくいっていないという報告を受けての対応だ。マネジメント業務を代理で受ける際に、落ちついている事業所を任せるという約束をしていたので、ルール違反っちゃあ違反だけれども、事業所収益は問題がないので、そういう意味で問題がないということだったのだろうと解釈した。僕は、性善説で生きているのだ。

一応、営業部長として部下を管理しているが、現場管理はビギナーである。だが不安はなかった。経営の神ピーター・ドラッカーのマネジメントの教えが傍らにあったからだ。それに従えば大きな間違いを犯すことはないだろうと確信していた。一抹の不安は、ピーター・ドラッカーの『マネジメント』は難しそうなので、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を通じて概要と薄味になった理論を学んだ点にあった。つまり営業部長が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んだら、状態。大丈夫。僕は、楽天的に生きているのだ。楽天カードも持っているしね。そういえば「はてな」ユーザーだった著者の岩崎夏海さんをネットで見かけなくなったけどお元気なのでしょうか。

『もしドラ』の教えにもとづいて真摯に現場に入って一緒に働いて一連の仕事を見てから面談することにした。まず責任者の女性。仕事を良く知っていて経験も豊富。熱意もある。しかしながらスタッフとの関係がうまくいっていない。彼女は言った。「言うことを聞いてくれない」「何回指導しても覚えない。覚えようとしない」と。そのあとで「でもこういうのも含めて責任者の仕事だと理解しています」と付け加えた。僕が好感を持ったのは言うまでもない。だが離職率の高さという現実がある。彼女は「主任が厳しいからじゃないでしょうか」と私見を述べた。「あの人は感情的になりすぎるから」。それから責任者女史は僕に「部長さんは私の味方ですよね」と質問した。『もしドラ』を1回通読した僕は、目の前にいる人物に事業所の責任者として貢献している実感を与えなければならないと思い、「よくやってくれていると思います。結果も出していますしね。特定の人の味方にはなれません。皆さんの話を聞いてからにします」とビミョーな言い方に終始してしまった。動機付けに失敗したかもしれない。僕は、生来の風見鶏なのだ。責任者ははっきり言った。「私は主任とはうまくやれません」

主任と面談した。仕事を良く知っていて経験も豊富。熱意もある。経験という点では、責任者よりも事業所で長く働いているので上といえるかもしれない。しかし、責任者とはうまくいっていない。彼女は言った。「(責任者は)意見を取り入れてくれない」「好き嫌いでシフトを組む」「感情的になって大声で叱責する。それを理由に離職するパートもいる」と。「でもそういう責任者とパートのあいだの橋渡しをするのが私の仕事だと思っています」と彼女は付け加えた。僕が好感を持ったのは言うまでもない。「責任者は感情で動いているんですよ」と付け加えた。「だから私もついムキになっちゃって。あと仕事がないのに必ずパートを最後まで残そうとするんですよ。理由を訊ねたら必要だからって言うわけ。だから私たちは嫌がらせだと解釈しているのですけど…。ここの数字が良いのはスタッフに恵まれているからですよ。部長さんはどう思いますか」と立場を明確にするよう求められた。『もしドラ』を1回通読した僕は、組織の定義付け、何のためにこの事業所は存在しているのか明確にする必要を感じていた。「皆が感情的になっているように僕には見える。感情のベクトルの向け方が少々違うのではないかな。結果が出ているのも本社は認識しています」「部長さんはどちらの味方ですか」「どちらの味方でもないです。今回の件は持ち帰って判断させていただきます」またも微妙な言い方になってしまった。動機付けに失敗したかもしれない。僕は、生来の小心者なのだ。そんな僕に主任は言った。「私は仕事だから割り切っていますがあの人(責任者)のことが好きではありません」

難題を本社に帰り、頭を抱えていると、本来この業務をやらなければならない事業本部長がいたので相談したらダメ出しをされた。お前がやるべき仕事なんだけどな。「ダメダメ。どちらの味方か白黒はっきり付けてこなきゃ。相手が正しくても味方。間違っていても味方。そうやってその場かぎりをうまく回していくのがマネジメントの本質だよ。君みたいな慎重さはこういう場合はうまくいかない要因になりかねないぞ」「そうですか」「はっきりいってね。あの二人はお互いを嫌いあっているから、その場その場で相手の話にあわせてそのときどきの敵の悪口を口先だけあわせて言っていればオッケー。それで数字は出ているんだから」と本部長は言った。それから「君には任せてられない」といって彼は僕を事業所の担当から外した。

しばらくたってから、当該事業所の従業員から事業本部長のまずい対応で収拾がつかない状態になっていると本社人事部の従業員相談室へ通報が入った。まーねーという感想しかない。マネジメントは大切だ。だがマネジメントが通用するのはある一定のレベルをこえた人間にかぎられると僕は思っている。今回のように感情的に突き動かされて行動する人、仕事と割り切れずに好き嫌いを判断に持ち込む人、それ以外にもお金を盗む人、時間が守れない人、言ったことを2秒で忘れる人、二度寝の遅刻を注意したら三度寝をかます人、もしドラを春のドラえもん映画だと思っている人、意義をイギーポップ、動機付けを動悸息切れ、そういうレベルの人にマネジメントは無力すぎるのだ。マネジメントってレベルじゃねーぞ、と叫びたくなる。絶望的なのは、こういうケースが特別ではないことだ。慢性的な人不足が原因だ。僕のような代理でマネジメントに苦戦している者もいるだろう。特別じゃない、どこにもいるわ、僕は部長A。(所要時間42分)