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ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

文科省の「就職氷河期世代」教員採用がダメなのは「今さら何言ってんだ感」に加えて「支援になっていない」から。

こんな記事があった。求む、バブル崩壊で教員を断念した40~50歳代…文科省が「就職氷河期世代」の積極採用通知へ(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース読んでもらえばわかるが、今さら何言ってんだ感がひどい。最近、就職氷河期世代支援が話題になることが多いのは、40代から50代になった氷河期世代が、社会が背負えないレベルの重荷になることが判明したからだ。公による支援策の多くは就業支援だ。はっきりいって手遅れ。15年遅い。僕は「体力と気力の衰え著しいアラフィフをブラック環境の職場に放り込むつもりなのか、雑に使うなー」と冷ややかに見ている。冷ややかなのは、本気でやっているようには見えなかったからだ。「氷河期世代見捨ててません!」というポーズに見えたからだ。それに、政治や行政は手を打っている、それに乗るかどうかはあなた次第!といういつもの自己責任に持ち込むやり方には耐性が出来てしまった。

今回の文科省の施策、これが酷い。今更感だけではなくこれまでとはガチ感が違うからだ。以前から懸念されていた人材の穴を明らかにしたうえで、これまで見捨ててきた氷河期世代で埋めればちょうどいい、氷河期世代もあの頃叶えられなかった夢を叶えられてサイコーじゃないか、ウインウイン!という意志と目的が感じられる。それがまた大真面目で上から目線なのがヤバい。ポーズならスルーできるが、間違った方向のガチはやめてくれ。きっつー。

僕は、1974年2月生まれの団塊ジュニア世代で、氷河期世代前半に新卒採用され社会に出た。運よく職に就けて、今は中小企業の管理職として働いている。そういう人間なので「30年弱の間、いちども浮上するきっかけがなかったー」と主張する人に対しては、「他に問題があるのではないか」と疑っている。そんな僕が振り返っても、就職活動をしていた頃は、努力が報われない、思い通りにならない時代だった。僕自身、希望する職には就けなかった(書類選考で全滅)。教員志望のほとんどが枠の少なさに絶望して諦めていた。景気が悪くなれば民間が採用枠を減らすのは仕方がない。当時は悪魔の所業のように見えたものだが、長年民間企業で働き採用する側になって仕方のなさがよくわかった。

だが、景気に左右されない(されにくい)公までがあの頃民間と同様に採用枠を減らしたのはどうなのだろう。教員採用がある程度の枠を維持していたら…と考えずにはいられない。氷河期世代が問題になることは予想されていたが、何も手を打たずに、どうしようもなくなって、ようやくヘビーな腰を上げて対策をはじめたのが今の状況だ。僕自身はサバイブできたからいいが、同じ世代の仲間が、高齢になり、他の世代より所得が低く、少子化の原因とされ、健康状態も悪く、財政を圧迫しかねない、社会のお荷物扱いされるのは我慢ならない。

で、今さら氷河期世代支援。そのすべてが今さら感が強い。加えて文部省の施策は、構造的な欠陥というか国の無策の結果を、被害を受けた当事者たる氷河期世代でカバーしようとしていて、それを「あの頃あきらめた教員という夢をかなえてみませんか」的なスタンスでやっているのがヤバい。世代のことを全然わかっていない。僕が他の世代だったら「ナイスアイデア!」「効率的!」と賛成したかもしれないが、当時者なので「ふざけてるの?」と言いたくなる。あまりにも人を軽んじている。氷河期世代で沈んだままの人だけではなく、同世代の人間全体を軽く見ている。氷河期世代が就職しようとしていた時代、不景気で採用枠がなく努力は報われなかった。だが、生きていくためには働かなければならなかった。夢や目標を諦めなければならなかった人も多かった。

それでも氷河期世代は「タイミングが悪かったよねー」と自嘲しながらしぶとく二十数年間生きてきた。その間、救済らしい救済はなかった。それが今になって氷河期世代がお荷物になるのが目前に迫ってから、手遅れの支援、それも人材不足の現場仕事へ向かわせようとしているのだからバカにしている。地獄を見た人間をさらに地獄へ行かせるのか。文部省の施策にいたっては、かつての夢をかなえませんか的な上から目線である。なんで何もしてくれなかった国を助けなきゃいけないの?バカなの?記憶力ゼロなの?人の人生で遊ぶなとしか言いようがない。もっともムカつくのは、ここ二十数年間の時間とそれに付随する努力と経験を軽んじているよね。夢だけでなく、積み重ねてきたものを捨てさせて「あきらめた教員の夢をかないましょう!」なんて、本気でそれが氷河期世代支援になっていると思っているのだろうか。大丈夫?

まあ感情論は抜きにして、相応の年齢で経験を重ねてきた、裏切られてひねくれまくっている氷河期世代を採用するのなら相応の待遇を約束してくれるのだと信じている。まさか、有期契約なんてことはないでしょうが、同じ世代の教員より低い待遇もありえない。欲しいのは夢を叶えようみたいな綺麗事ではなく、相応の待遇と保証だ。そうでなければ20年働いてきたキャリアや実績を投げ捨てられない。ただでさえ、氷河期世代は見捨てられてきたのだから、困っている国を助ける義理がない。それもキャリアという犠牲を払ってまで。全然わかっていないよね。

僕には教職員になる願望も、教員免許も無いけれども、もし僕が文部省の施策に乗って教職員になるのなら今の1.5倍から2倍の給与、現在管理職なのでそれに相当する校長か最低でも教頭のポジション、年下の管理職を付けないという条件でなければやらない。人の人生で遊んでいるのだから、これくらいのコストは安いものだ。人間を都合よく使うためには、相応の対価を支払わなければならない。僕が20年間必死に働いてきて学んだことのひとつだ。自分たちの失策でつくった穴を僕ら氷河期世代で埋めないでくれ。ゴミじゃないんだから。(所要時間38分)