Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

果てしなきZ世代

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諸事情で離脱した同僚の代理で、これまで付き合いの少なかった部署の社員たちと一緒に仕事をしている。なるべく目立たないように仕事を進めている。なぜなら仕事デキル感が会社上層部に伝わると、給料据え置きで、業務がアドオンされるのが目に見えているからだ。さいわい代役業務のなかで「これは…」と思うことは少なく、「このまま任期が終わったらいいな、あんなことこんなこといっぱいあるけど」と浮かれている姿を神様が見ていたのだろうね、少々気になる光景に出くわしてしまった。若手社員の仕事への周囲の対応がおかしいのである。新商品(メニュー)の試作における試食をした社員たちが「いいんじゃない」「まあまあだね」と評価、意見、感想にならない言葉を発しているのである。なんとなく良い商品な空気が醸成されていた。開発を担当した若手女性社員は「ありがとうございますー」とニッコリ笑っている。ヌルすぎる。味については個人差があるのでいろいろな意見を聞かなければいけないが、コストや工程は経験と知識で判断しやすいはずだ。僕から見て、若手が担当した新商品は、工程が複雑すぎるし、コストがオーバーしているのも明らかだった。僕らはその点については指摘しなければいけない。そのはずが「いいんじゃない」「まあまあ」になっているのだからとんでもないことである。

なぜこんなことが起きているのか。人事部から若手社員を大切に丁重に扱うように指示が出ていたからだ。僕が所属している営業開発部は中途採用が中心で、ここ数年新卒がいないので最近の若者がどういうものなのかわからなかった。ただ、会社として新卒採用が難しくなっているのは知っていた。とくにウチのような中小企業は苦戦している。やっと入ってくれた新人が辞めてしまうのは大きな損失。新人の離職率が高いと、今後の新卒採用に障害が出るからと人事が警戒しているのである。そういえば、部長会議で人事担当が「最近のヤングは注意や助言を叱られていると解釈するので気をつけましょう」と発言していた。先輩社員がヒントを出して考えさせようとすると、タイプやコスパを重視する若手からは「ヒントなんていいから答えを教えてください」と言われ、答えを教えると「その程度のものですか」と言い出す始末らしい。相手にするだけでストレスフルだ。僕が「ゆとり世代だかZ世代だか知りませんけど」と前置きして発言しようとすると、人事担当は遮って「ゆとり世代とかZ世代とか、『世代』を出したらダメです。負けです。『世代』を口にすると中高年扱いされて馬鹿にされるだけです。堪えましょう」と言うのである。なぜ我々が耐え難きを耐えねばならないのか。意味がわからなかった。

ガツンと言ってやろうと思った。どうせ代役だし、お客様へのサービスのクオリティが下がるのは回避しなければならない。それで若手が潰れてしまうのならかまわない。そう思って僕は自分なりにまとめた意見を述べさせてもらった。工程とコストについて、少々厳しくなったかもしれない。僕は当該若手を戦力にしたかった。ウチの会社を辞めてもかまわない。辞めてもやっていけるような最低限のスキルと知識を身につけてもらいたかった。僕の意見を聞くと、若手は「わっかりましたー」といってニッコリ笑った。意見についての感想を求めると「部長の意見は頭の片隅に入れておきます。多様性は大事ですから」といってふたたびニッコリ。「指摘を受けてどう対応するの」「ニッコリ」「改善案は?」「ニッコリ」

僕は気づいた。彼女の笑みは外に向かっていないことに気が付いた。自身への笑みなのだ。そして現代の若者の処世術なのだと。どこから来るのかわからない自信とポジティブな自己評価を鎧にして、意見や助言を「怒られている」「非難されている」と都合よく変換し、笑みを浮かべて余裕を醸し出して突き進むのだ。楽しく、自分を、個性を表現する世代。僕はこうした若者と一緒に働くのはあと数年なので関係をうまく築こうとは思わない。そのまま進んでいただいて新しい社会を作ってもらいたい。ずっと笑っていればいい。その笑みが自身のためだけにしかならないことに気付くまで、笑ってよ君のために。とはいえ仕事は仕事なので、新商品の開発はゼロからやり直すよう命じた。周りからは面倒なことになると言われているけれど、仕事とは面倒と隣り合わせのものだ。だから仕方ない。Z世代との距離は果てしなく遠く、僕が現役でいるうちに分かり合えるとはとても思えないけれどもそれで全然かまわない。(所要時間22分)