
野球部が甲子園出場したこともあるスポーツ強豪校私立高知中央高校の200円食堂が5月に廃止されてコンビニになったことが話題になっている。news.yahoo.co.jp
保護者や学生が学校を選んだ理由に「リーズナブルな学食」を上げていたので批判の声が出るのも、食堂をウェブサイトでアピールしていた学校が批判されるのも仕方ないだろう。なお、食堂を運営していたのは近森産業(高知市)である。https://chikamori.co.jp/company/ サイトを見ると給食会社ではなく食品製造会社のようだ…。これポイントなので覚えておいてね。
ざっとニュースで前提条件を確認して給食業者は参入できないとわかった。参入してはいけない案件。学校側としては、学内コンビニで使える1人30,000円分のポイント配布で何とか収束を図りたいところだが、1日3食コンビニ飯は保護者には受け入れ難いところだろう。そこで今回はこの200円食堂がなぜ運営が厳しいのか、もし僕が勤める給食会社が参入したら?という仮定で分析して学食運営について考えるきっかけにしてもらいたい。
今回の業者撤退を受けて行われた業者コンペは非公開だ。そのため前提条件についてはざっくりとしたものになってしまう。対象者は寮生240名(全学生700名だが確実な食堂利用者で算定)で朝昼夕の3食提供、土日も提供の月間30日運営で試算。食材コストと運営コストのふたつに分けて試算してみる。食材は1食あたり400円かかっているとして400円× 240人分× 3食× 30日= 864万円(月額)。「200円食堂」といわれているように、うち単価200円分を学生(保護者)が負担するので、 50%の432万円分を学校側が負担する食材コストとなる。
次に運営コスト。現業者は自社食品工場で調理したものを持ち込んで提供することでコストを削っていたと思われるけれども、新たに参入する業者はそうもいかない。無休3食提供事業所なので社員3名体制で月300,000円× 3人分× 1.4とざっくり試算して126万円。パートの人件費は高知県の最低賃金1023円なので1030円として朝昼夕提供として1030円 × 8時間× 5人× 30日×1.4 で173万円(1,730,400円)。先程の社員分と合算して労務費は約300万円(299万円)。そこに経費300,000円と営業利益300,000円を合算した額360万円が食堂の運営コストになる。テナント代は無償としておく。
食材コスト(学校負担分)432万と運営コスト360万円の合計額792万円が運営コストとなる。学校側はプラス水光熱費も負担する。これが給食会社が運営した場合の試算になる。ざっくりした試算だが的外れではないと思う。なぜなら学校側は寮生に30,000円分のポイントを支給してるからだ。つまり30,000円× 240人分720万円、この金額が食堂運営予算と考えられる。試算は792万円。月額マイナス72万円。これでは給食会社は参入できない。しかも試算は営業利益30万円である。月間稼働30日間の事業なら100万は欲しい。不足分70万円を試算に足すとコストは862万円。食堂運営予算が720万に対して142万円がアドオンされてしまう。一か月862万円、年間だと1億344万円。学校が給食会社に支払うのは相当な負担だ。
ちなみにアドオン分を保護者が負担すると学生一人で月額5,916円アップになる(142万円÷240名)。一食当たりだと65円(5,916円÷30日÷3回)アップ、年額だと学生一人当たり70992円アップ。それを負担しろというのはなかなかハードルが高い。また学生が減れば一人当たりの運営コストは増すばかりだ。それと学校はこれらの運営コストに加えて光熱費と施設維持費を負担しなければならない。この規模だと月額数十万はかかっているはず。厳しい。つまり給食による運営は無理という結論になる。
元運営業者は、セントラルキッチン方式(食品工場)を駆使してここまでよく運営していたと思われる。工場と現場の人員不足と、食材原価の高騰を撤退の理由としていたが、それは本音だろう。売上が変わらず、セントラルキッチンのコストがかさめばこの方式は成り立たない。
学校側が食堂を継続するための選択肢は地元でセントラルキッチンを持つ元運営業者しかなかった。残された手は食堂運営をあきらめての(形態変更)、コンビニ導入だった。上記試算のとおりウチのような給食会社は参入できない。部下がこの学食の案件を持ち込んだら「屋上へあがろうか…」と言うだろうね。問題は、原資となる学生数の減少で学食の予算が足りなくなっていること、そして業者撤退の本気度と代替の業者の見込みを学校が見誤ったことだろうね。食堂廃止のアナウンスが遅くなったことを含めて対応が雑なのはいうまでもない。以上。(所要時間26分)給食業界についての本を昨年出しましたヨロシク。
