Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

僕の人生にフィジカルAIは間に合わなかった。

フィジカルAIが100m走で世界新を超える記録で走ったり、長距離走を走ったりするニュースを見た。素人の僕でも技術の凄さはわかるし、「すごいな」「未来キター」と興奮するけれども、「僕の人生には間に合わなかったなぁ…」という落胆の方が大きい。僕は今、52歳。AIやロボットに仕事をまかせて、セクシーなロボと熱い時間を過ごす…そんな未来を夢見ていたのだけど…その夢はついに叶わなかったのだ。

僕は給食会社の営業部長だ。リストラを愛してやまない会社上層部の老人たちが、フィジカルAIやロボットの導入によって大規模なリストラが断行できると主張していた。リストラで人件費を削減すれば利益になるという主張だ。給食業界をまったく知らない人間らしい考えだ。

現時点では給食事業においてフィジカルAIやロボットに人間の代役は難しい。給食事業の現場業務は時間によって細々したタスクを切り替えてこなしていかなければならない。専門性よりも汎用性が求められるので現在のフィジカルAIではまだ無理だ。たとえば社員食堂の現場のパートの仕事は掃除、準備、仕込み、盛り付け、配膳、提供、片付けと複数名が時間により役割を変えながら進めていく。現在のフィジカルAIでは難しい。このように性能面で人間の代わりになれない。

もちろん、そう遠くない未来に、汎用性を求められる仕事ができるものも開発されるけれども、超高額なマシンになるだろう。ファミレスの猫型配膳ロボが300万円という記事を見かけたことがあるが、少なくともその十倍以上の価格3000万以上になるのではないか。それに対して人間のパートなら時給1250円で1日5時間働いた場合、20日間勤務で125,000円である。

5人パートが必要な現場をフィジカルAI5台でカバーすると一億五千万円である。社員食堂に一億五千万円かけられるか。かけられない。そのコストを委託費に充当してもクライアントが受け入れないだろう。給食会社が設備投資するかといえばできない。そんな金はない。給食事業はローリスク・ローリターンのビジネスモデルなのだ。このようにコスト面で圧倒的に人間の方が安いのである。

また、一般的に給食委託契約は現場に配置する人員によって委託費が算出されている。人件費削減のためにフィジカルAIを導入したら、委託費を下げるクライアントが出てくるかもしれない。安定した収入源である委託費のダウンは給食会社にとって大ダメージである。このように給食事業においては、フィジカルAIは性能面よりもコスト面で導入が難しく、委託費ダウンの危険性もはらんでいる。給食会社のローコスト体質をなめてもらっては困る。

それと魑魅魍魎が跋扈する給食の現場をなめてはいけない。パートのおばちゃんたちが自分たちの居場所を守るためにフィジカルAIやロボットに対して破壊工作やイジメ行為をするかもしれない。自分の居場所を守るためなら人間はなんだってやるのだ。僕は現場で数々の修羅場を見てきた。人間はおそろしい。

だが、悪いことばかりではない。これらの課題がヒューマニズムをもたらすかもしれない。コストの問題が「ロボットは味気ないので、人間に配膳してもらったほうがいい」というヒューマニズムに転換されるのである。当社の会社上層部も突然、ヒューマニズムに目覚めた。おそらくニュースでフィジカルAIやロボット導入のコストを知ったのだろうね、今は「人間第一」「人を大事にしないと企業は生き残れない」と言いはじめている。ただ高齢者なので本音を隠せず「人間は安くていい」と漏らしてもいる。人間は性能が低い。

フィジカルAIやロボットより人間の方が安い。汎用性が必要な仕事になると求められる性能も高くなる。そのぶん人間とフィジカルAIやロボットのコストの差は大きくなる。給食事業のようにお金がかけられない事業においては、フィジカルAIの導入は現実的ではないだろう。少なくとも僕が定年退職するまでは難しい。どれだけAI技術が発達しても僕の人生には間に合わない。早く仕事を奪われたいのに…悲しい。

これらの話は現場の仕事についてのものであって、当社会社上層部のようにくだらない思い付きを話しているだけの人間は、今すぐ生成AIと交換できる。その危険性を会社上層部に示唆しているけれども「AIにハンコが押せるか?接待ゴルフが出来るか?」と真顔で返されてしまうと、何も言えなくて、己とAIの無力さを認めざるをえないのだ。(所要時間25分)給食事業の実態についての書籍を昨年出しました→【電子版限定特典付き】 給食営業マン サバイバル戦記 カスハラ地獄、失注連鎖、米の仕入れも赤信号