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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

リストラはつらいよ

会社の悪口で盛り上がっていた仲間と袂を分かち、裏切り者の名を受けて、会社の忠犬になる。そんな今の僕の心境がわかるのはキムタクくらいのものだろう。今夏より部長になった僕は事業全体のリストラに取り組んでいる。粛々とデスノートに仲間の名を書き記す胃の痛い作業。恥部に残る仕事。きっつー。同族経営の弊社において僕が事業部のトップに登用されたのは抜本的徹底的な「聖域なきリストラ」を敢行するため。ということになっているが実のところ、リストラを敢行したいが憎まれたくない、憎まれ役は外様の人間でいい、というボスの男気の産物にすぎない。

 

スタッフの仕事を精査するために毎日現場を訪れている。権力志向の薄気味悪いオバはんを除けば、親しかった仲間はどこかよそよそしいし、露骨に避ける者もいる。統括管理する立場になった僕を畏怖し、陰で「トンカツ」「ポンコツ」という敬称で僕を呼ぶ者がいるのも知っている。とても悲しい。築き上げた薄い人間関係がいとも簡単に崩壊した現実が悲しいのではない。リストラされる側による、リストラされても仕方のないような、子供じみた対応に悲しくなったのだ。二度とあんなヒラ社員には戻りたくない。搾取する側でありたい。勝利者でありたい。

 

僕に出来ることは可能なかぎりフェアに評価を下すことだ。予断や偏見を持たず、平等に評価すること。結果として、かつての仲間に失格の烙印を押すことになってしまうかもしれない。憎悪の対象になったり、殺人予告を受けたりすることもあるかもしれない。そんな犠牲を顧みず、強い信念をもって会社を立て直す。それが僕に課せられた仕事なのだ。僕は第一次デスノートを作り上げボスに提出した。フェアな評価に基づく「聖域なきリストラ」の第一歩。なるべく憎しみのターゲットにならないよう、即刻退場していただくのは始末に負えないボンクラ数名に留めておいた。

 

ここに列挙した人物はバカとハサミのバカになれない人間なのでハサミで首チョンパしましょう、という内容の報告書。誤算は、そのボンクラ共が全員たまたまボスの親族であったことだ。まさか。フェアに精査・評価した結果がこれである。運命のイタズラ。あるいは偶然の産物が導きだした当然の結果。逃れられないボンクラの血。デスノートを見たボスはただ一言。「これは見なかったことにする」あった。《聖域なきリストラ》にも聖域はあったのだ。

 

今、僕は聖域ある聖域なきリストラのために、ボスの血縁に触れないよう注意しつつ、リストラ対象の頭数をそろえるためだけに、かつて仲間が犯した小さな失敗を漁ってはデスノートに書き入れるという恥知らずな仕事に従事している。犬!裏切り者!与えられた仕事を真面目にやっているだけなのに社内での風当たりは強まるばかり。きっつー。弊社。ジャニーズ事務所。同族経営の素晴らしさばかりが目につく今日この頃、キムタクの心境を想うだけで僕は我がことのように泣けてくるのだ。(所要時間17分)