Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

職を辞するにあたって…

会社を辞めることにしたが、僕のような平々凡々の人間がこの年齢(あと数日で42才)で転職するのはなかなか厳しいようである。揺らぐ決意。いかん。辞める決心を確固たるものにするべく、今朝、形からいくぞ、つってネクタイを絞めずヒゲも剃らずに自宅を飛び出した。しかし、会社との距離が縮まるにつれ、熱気は冷め、叱責を恐れる気持ちばかりが膨張、窓やビルディングに映る小汚い自分の姿に泣きたくなる一途。結局、会社に到着したときにはネクタイを締め、マスクで顔を隠していた。通勤途上で何でも揃ってしまう日本社会が悪い。

 
あまり知られていないようだが転職サイトという便利なサービスがある。見ず知らずの人の転職にタダで力を貸してくれるらしい。便利だが物好きもいるものだ。そして僕が「登録企業ウン万社」「前職から大幅に給与アップ」「コンサル的な立場の人が君の転職を親身にバックアップ」というコピーに誘われるようにいくつかのサービスに登録してみたのは昨年の秋頃のことである。
 
「41才本厄、営業職、希望給料月100万円、賞与年二回、社会保険完備、退職金制度あり、転勤なし、残業なし、資格なし、特技なし、通勤30分以内」という妥協した条件を登録したものの、求人は一件もヒットしなかった。何度やってもゼロ。永遠のゼロ。これが41才のリアル。きっつー。幾千万の企業のうちどこからも求められない中年に生きている価値はない。悲しみのあまり、それ以来、転職サイトには近づかないようにしていた。
 
 
しかし、退職を決意した今、久々に転職サイトを覗いたら、各サイトの、転職を最後までサポートしてくれるコンサル的な人たちから職務経歴書を充実させましょうというメッセージが届いていた。企業の採用担当者の目にとまりやすい職務経歴書をつくるのだ。それが企業からの非公開スカウトにつながるらしい。なるへそ。「正直に、嘘は書かないように」というコンサル的からのアドバイスに基づいて渾身の文章をこしらえた。以下の文章はその要約である。
 
「まもなく42才。一貫して営業畑。現職ではハードな職場環境で約20人の同僚が遺恨退職していく姿を見て見ぬふりをしてきました。ですから精神力と体力には少々自信があります。昨夏、心身を壊して3ヶ月ほどの休職を経験しましたけれども。性格的には根暗で皮肉屋。人付き合いが苦手です。ただ、他人にどう思われようと意に介さないフレキシブルさはあると自負しております。学生時代は特に夢中になったものもなく、夢も希望もない無気力なヒッピーのような人間でした。もちろん他人様にアッピール出来るような立派な資格など持っていません。言語については、人並みに平仮名、カタカナ、漢字、ローマ字の読み書きは一応できます。二十年の会社員生活でさしたる実績もありません。そもそもこのような場所にかような文章を書いている時点でたかが知れているじゃないですか。ふつつか者ですがよろしくお願いいたします。かしこ。追伸。アビバで学んだのでエクセルで簡単な表はつくれます」
 
 
正直に書いたつもりだがコンサル的な立場の人たちからの反応はない。四十を越えてからの転職は相当に厳しいようだ。今、僕は江ノ島の海岸近くに車をとめ、暗い未来に頭を抱えながら、凍えそうなカモメ見つめ泣いているところだ。ツライ邂逅冬景色。
 
(この文章は134号線沿いのコンビニに車を止めて15分間で書いた遺書である)