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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

別居していた妻が帰ってきた。

週末婚なのか、それとも、ただの終末への助走なのかわからない。ただ、確実に言えるのは断続的な別居生活が突然終わったということ。今はいつまで続くのかわからない平穏な時間を過ごしている。他者と関係を築き、維持していくためにはある種の無関心が必要だと僕は思う。分かり合えやしないことを分かり合うしかないのだ。ポジティブに諦めること。期待しすぎないこと。妻と別居しているとき僕はひたすら前向きだった。床を相手に格闘したり終日果てるまで動画を試聴したり、妻がいるときには絶対に出来ないことに積極的に取り組んだ。結婚していいことなど数えるほどしかなかったけれども、その中でも心の奥底から良かったー!ラッキー!と胸を張れるものの一つが女性向けランジェリーのカタログが日常にあることだった。ああ、憧れのピーチジョン!僕のランジェリーへの憧憬はカタログを越えて実物ランジェリーに到達。気がつくと僕は、灯りを抑えた部屋の中心で、ブランドはピーチジョンかしらん、ピンク地に黒い淫靡なビラビラの付いたブラジャーを着用し立ち尽くしていた。特別な感慨は無かった。ブラジャーの中のスカスカの空間が妻の不在を僕に思い出させただけだ。満たされない気持ちは千の風になって下半身に向かっていた。驚くことに女性向け下着は上下一対でワンセットになっているらしい。ピンクと黒のパンティーを履いて蜷川実花ワールドへヘビーローテーション、その甘美な誘惑を押さえつけるのは世界中のどんな独裁者でも無理だろう。しかし布が少ない。ほとんど紐。役立たずの僕のきのこの山がはみ出すのは不可避。きのこの山、上から出すか、横から出すか。いずれにせよ、はみ出してしまったらはみ出す前の自分には戻れない。一瞬、躊躇するが自分を取り戻す。大事なのは自分の生きたい人生を生きること。ありのままの自分になるの少しも寒ないわレリゴーレリゴーとアナ雪も高らかに歌いあげていたではないか。僕はパンティーを履いた。締め付け、きっつー。部屋の角をポールに見立てポールダンサーの如くくねくね踊り狂う僕の背中の方から「寒っ…」という女性の声…。あれから数日が経ったけれどもおかげさまでまだ通報されてはいない。親しき仲にはある種の無関心が必要なのだ。ランジェリー無断拝借の件はまだ許されていない。そもそも許しなど要らないのだろう。そう。許しなんか要らないのだ。許し許されのギブアンドテイクであればあるほど関係は脆くなっていく気がする。勝手に僕のステテコを履いている妻とはおあいこではないかと思うけれども、それこそギブアンドテイクの関係性を相手に求めることになるし、そもそもはみ出しきのこの山の立場でそれを指摘するのは躊躇われる。(所要時間14分)