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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

退職カードを切って会社に戦いを挑んでみた。

今夏、部長に昇進し、課長時代よりも大きな責任を負って仕事をしているわけだが、《会社の経営が良くなるまでしばらく昇給は見合わせ》という非人間的な扱いを受けている。しかも、規程どおり課長手当はカットされてしまったので、結果的に課長時代よりも手取りは減ってしまった。アホか。バカバカしくなったので会社に直談判することにした。課長手当を、取り戻す。これは金のためではない。プライドの問題だ。僕の課長手当は年18,000円。月に換算すると1,500円、1日当たり75円。きっつー。決して金のためではないことがよくわかると思う。本意ではないが「退職」のカードを切ることにした。「社長、今のままでは私は辞めざるをえません」「理由は?」ハードな仕事と貰っている金が見合わない、1日75円削られたらやり繰り出来ない等々あれこれ理由を話した。正義は自分にあると信じて。するとボスは動じることなく、デスクの上で腕を組み直し「君を信頼し、評価して部長に上げたのに私の顔に泥を塗るつもりか?」と言った。ボスの顔は血で汚れていて泥パックでは綺麗にすることは出来ない。ボスは僕の《どれだけ会社に対して文句を言っても絶対に辞めようとしない隷属的気質》《コキ使っても壊れない耐久性》を評価していると言って笑った。いい笑顔だった。僕は『評価』に弱い。生まれたときに親戚のおばはんから「あら可愛いわね」と褒められてから40年以上、誰からも褒められたことのない人生を送っているからだ。誰からも信じてもらえない人生でもあった。小学4年の秋、お地蔵様にお供えしてあったオハギを盗み食いしているという疑いをかけられて近所のおっさんに捕まったことがある。「イタズラしているとバチが当たるぞ!」と。僕は神に誓ってイタズラでオハギを食べたりはしていないので罪を認めなかった。しかし周りの大人たちは誰も僕の話を信じてはくれなかった。父も。母も。僕はイタズラからではなく、空腹を満たすため、つまり生存のためにオハギを食べただけなのに…。僕が天才をもって看破していた、仕事もせずに地蔵を監視していた近所のおっさん(当時40歳前後)の危険性に、周りが気付くのはそれから数年後、おっさんが幼女にイタズラをしてしょっぴかれるまで掛かるがそれはまた別の話になる。内容はともかく、少なくともボスは僕という人間を信じ評価してくれている。初めて人から信頼されて、枯れ果てた海綿体に血がだーっと流れ込むような、熱い、満たされた気持ちになった。こうして僕は恥をしのんで退職カードを下げ、今ふたたび会社の軍門に降ったのである。人から信頼されて評価されるというのは、課長手当よりもずっと重いものなのだ。(所要時間12分)