Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

まおとこが あらわれた!つうこんの いちげき!

振り返れば5年前まで僕は他人が汚した便器の始末をするような人生を送っていた。たとえば友人の家に集って酒を飲んでいるとき、尿意を催してトイレに駆け込むときまって便器には誰かのウンコがこびりついていて、トイレの神様なんて信じちゃいないけれど僕はいつもそれをキレイキレイしてきた。僕の前にはいつも汚れた便器があり、死ぬまで僕の未来には汚れた便器が待ち構えている。人生とはそういう業の深いものなのだと半ば諦めていた。他人のウンコをこすり落とし続ける人生が終わったのは5年前、結婚をしたとき。信じがたいことだが妻はウンコをしない。2度ほど残り香めいたスメルを嗅いだことがあるが、本人が「私はしない」と頑として認めないので、公式にはウンコをしたことがないことになっている。つまり僕の住むマンションのトイレを汚すのは僕のブツしかありえず、それは僕以外のブツが存在しないことを意味している。しかしその状況が一変した。マンションの便器に僕以外のウンコが付着していたのだ。妻に詰め寄れば、私じゃない私じゃないの当たり前だけどね、と何か言いにくいことがあるように声を絞り出すだけ。けれど僕は大人。クソを憎んで人を憎まず、つって罪とクソを一緒に水に流した。しかし悲劇は終わらなかった。その後も便器にウンコがこびりついていることが数度あったのだ。くっそー。妻は私じゃない私じゃないの当たり前だけどねと俯くばかりだし、僕のウンコではありえない。そこから導かれる答えは第三者の第三者による第三者のためのウンコ。恥ずかしながら告白するが、薄ペラな人生を無為に送ってきた僕には女性のウンコを見た経験がない。きっとGODIVAのチョコレートのように可憐なものにちがいない。だが便器に残された遺留品はGODIVAとはかけ離れていた。敢えて言おう。チョコボールであると。これは男がひねり出したもの。間男襲来!僕は即座に数年前に妻のパート先で仲良くなっていた大学生のスグル君の、スポーツマンだけが持ちえるイヤーな感じの笑顔を思い出した。僕の不在を見計らってマンションを訪れわざわざ便器にマーキング。なんて変態的でイヤな奴なのだろうか。ウンコを片付けさせられる亭主の怒りを知らしめなければならぬ。間男マジ許すまじ。殺す。殺してやる。カレーライスに毒を入れてやる。待て。ウンコする直前にウンコに酷似したカレーライスを食べるか普通?でも変態だからなあ。などと間男抹殺プランを練っているうちにひょんなことから間男の正体が義理の父と判明。娘を心配するあまりにマンションをたびたび訪れ時々ウンコをしていく義理の父の方が変態間男の一万倍は厄介で御しがたく、おかげさまで妻との関係も不安定になり、これぞまさしく痛恨の極み。(所要時間13分)