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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

自宅療養から復職しようとしたけど会社に入れてもらえない。

日記

 頭痛、首痛、吐き気、おまけに不眠。体調不良で3ヶ月ほど休職していたが本日をもって職場復帰することにした。体調不良の原因は、経営方針転換に伴う撤退交渉(数字が出ている事業や契約締結間もない仕事含む)と上層部の一部が画策する我が営業部の解散・外注化工作によるストレスと積み重ねられた疲労。じっさい、完調には程遠いが、それでも復帰を決めたのは「ゴミは分別して出しておいてくださいね。今日は可燃物ですからね」とため息をつきながらパートに出かけていく妻の背中を見るのはつらかったし、終日ドクターマリオでクスリ漬けの生活をしていてはダメ人間になると思ったからだ。

 

 よーし、毒をもって毒を制してやる、僕が殺られるか、会社が殺るかだ!という仁義なき気概で出勤した午前9時、おかしいね、会社に入りたいのに入れない。社員カードが無効化されていてドアが開かない。パワハラか、モラハラか、セクハラか。すかさず僕は総務部長に電話をかけた。

 

 体を壊して悪いことばかりではなく良いこともあった。たとえば健康時代には見えなかった人間の本質が見えるようになった。抵抗勢力の筆頭、総務部長は僕に対して常に「君のような人物は会社にふさわしくない。顔が嫌いだ。すべてが嫌いだ」と言ってきたり、「ユニットリーダー」という蔑称で呼ぶような、イヤな人物だった。しかし、僕が自宅療養をはじめると「いつまで休んでいる?う~あ~。早く復帰しろ。う~あ~。そんなに長い間会社を休んで、う~あ~、周りがどう思うか考えてみるといい」と心配して朝昼夕と故・大平首相のモノマネで電話をかけてきてくれる、心優しい側面を見せるようになった。ありがとう病気。あいにく超能力を持ち合わせていない僕に『周りの人がどう思っているのか』を覗けることなど出来るはずもなく、そのときは「うっせ!バカ!」と言い返すことしかできなかったけれども。

 

 僕は3ヶ月完全に休んでいたのではない。僕が休みはじめたあと、部下の一人が、僕を真似たのではないと信じたいところだけども体調不良を理由に休みを申し出たのだ。6月頃だろうか。その頃、僕は会社のこと仕事のことを考えるだけで激しい吐き気に襲われていて、正直にいえば部下の問題も総務や人事に任せてタッチしたくはなかったのだが、直属の上司として、そうはいってもいられなかった。というのも人事部が「休職のためには診断書持参で面談をしなきゃダメだといってるのに貴様の部下がいうことをきかない。なんとかしろ」と僕に処理を頼んできたからだ。

 

 猛烈な吐き気、に耐えながら電話すると部下は「診断書を郵送すれば事は足りる。なぜ面談が必要なのか」と言う。「必要かどうかは会社が決めることだぞ」「なぜですか」「ルールだから」「課長も会社と話し合いをして休んだのですか」「もちろん。ルールだからね」「そのルールが間違っていたとしたらどうなんですか?労働者が体調不良を理由に休むのに医師の診断書があれば十分でしょう」「いや、だから」この不毛極まりない議論は、空回りし続け、当該部下が「別に会う必要なんてない。しなきゃいけないことたくさんあるし、電話代かさんで迷惑してるんだ」と宇多田ヒカルのように言って終わった。電話代かさんで迷惑したのは僕だった。

  

 会社に入れてもらえないのは単純な手違いであった。電話の先の総務部長は「ボタンのかけちがい」と極めて凡庸な言い方で僕に詫びた。僕はボタンのかけちがいに気が付かないなんてファッション感覚が疎い可哀相な人なんだな、これだから終生において吊るしのスーツしか着たことがない人は嫌なんだよね、大人の対応で謝罪を受け入れることにした。ボタンのかけちがいは、宇多田ヒカルのようなことを言っていた部下のせいだった。

 

 あのやりとりのあとで彼は退職することになった。退職する際も、就業規則に規定がありませんという謎理屈で会社のカードを返却しなかったので、総務でカードを無効化したのである。そのとき、誤って僕のカードを無効にしてしまったというのが事の次第らしい。僕はそこまで話をきいて、一瞬でも、僕に対するパワハラを疑ったことについて恥ずかしく思った。

 

こんなにうれしいことはない。僕にはまだ帰れる場所があるんだ。やるべき仕事があるのだ。僕の不在の間に営業部は上層部の一部の陰謀により、異動、退職、出社拒否、多くの理由を附されて誰もいなくなっていた。大丈夫。僕にはやるべき仕事があるのだ。たった一人になっても。その仕事が、営業部外注化に向けての顧客と販路の整理と移譲の準備という、自分の墓穴を掘るような仕事であっても。

 

「とりあえずカード使えるようにしてください」と僕は言った。その答えは僕の予想を超えていた。「君も近いうちに辞めるから、もう、いいじゃないか」

 

 午前十一時現在、僕はまだ会社に入れてもらえずにいる。この仕打ちがパワハラなのか、セクハラなのか、モラハラなのか、はたまたバイオハザードなのか、よく、わからない。これから労基署には相談に行くつもりだけど、それで、この屈辱が晴れることはないだろう。屈辱に震える一方で、こういうくだらない会社のあれこれを、僕は僕の代で終わらせたいと思う。強く思う。そのためにはもっと偉くならなければ。会社で偉くなって、このくだらない仕打ちをした人物たちに考えうるハラスメントを与え、炎天下の往来に締め出したい。そのとき僕と営業部の魂は救済されるだろう。屈辱と憤怒で頭に上ってきている。心頭滅却。せめて、この頭に上ってきている血が、不能の下半身に流れ込んでくれればいいのだけれど、うまくイカないのが人生。