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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

病院の対応に感謝。ただただ感謝。

日記
大病を患ったことも大怪我を負ったこともない。医者や看護士でもない。ましてや女医でもない。そんな病院素人の僕が言うことなので、医療に携わっている方々からみればただの阿呆と思われるかもしれない。クレーマーと罵られるかもしれない。だがそういったリスクを恐れずに今更僕がこのようなことを書くのは義憤、のような立派なものではなく私怨であり、ただひたすらにムカついたからである。

昔々。つってもたかだか数ヶ月前、リフォームのためにごく一時的に近隣C市で暮らしていたときのことなのだけれど、駅前まで買い物に出ていた僕は突然、めまい、頭痛、寒気の黒い三連星に襲われ立っていられなくなった。当時の僕は自宅療養のために休業していたのだけれど、数日ほど咳が続いていたことを除けば、療養という言葉が大袈裟に聞こえるほど、普通に生活をしていた。それがなんということだろうか、僕は立っていることすらままならず、ガードレールに腰をかけ、ロダンの考える人のように頭が揺れないように右手で顎を支え、堪えるしか出来なかった。

7月の日曜日。摂氏35度はあったはずだ。僕はタクシーを捕まえ、市民病院へ向かった。車内から、茶道教室にいる妻に電話した。妻に拠れば、その茶道は戦国時代に発達した流派で、敵襲に備えて座らずにお茶を立てるらしい。それならば現代の敵襲たる着信にも即座に対応出来るに違いない。そんな僕の希望は即座に裏切られ、妻からコールバックがあったのは10分後、既に病院のロビーに到着していたときである。状況を報告すると、妻は、結婚前に戻ったような優しい声で「いい?ちゃんと持病や経緯をお医者さんやナースに話すのよ」と念を押し「今日夕ご飯つくらなくていいね」といって慌ただしく切った。彼女は僕ではなく茶道に恋をしていた。念を押す。療養のため休業中。持病ED。数日前からの首痛と止まらない咳。エトセトラ。

日曜日の市民病院はよくいえば夜の墓地、悪くいえば昼の霊安室のように静まり返っていた。受付カウンターまでふらふら、やっとの思いでたどり着き、中にいた中年女性スタッフに声を掛けた。頭痛悪寒眩暈がする。咳もとまらない。ヘルプミー。すると女性スタッフは「ここは緊急なんですけど電話を入れていただきましたかっ?」とヒステリックに言う。今、何と?予約制なの?死にかけでたどり着いたのだから電話なんかかけているわけがない。あのあのあの、と不明瞭でもごもごしてる僕にふたたび「お電話されましたか!」。この人意地悪。まったく混雑していないのだから、僕が電話をかけていないことなど承知の上でやっているとしか思えない。僕を使って私生活のイライラを発散しないおくれよナイチンゲール。


女性スタッフは隣にいた男性スタッフに目配せをしたり、バインダーに挟んだ紙を乱暴にパラパラめくったりしたあとでこう言った。「ここは緊急なんですから、今度からは電話をしてからお越しください」弱体化していた僕はその勢いに気圧されて「すみません」と言ってしまう。くっそー。「まあ今日はた・ま・た・ま空いているのであちらで診察をお待ちください」とその女性スタッフは言い診察に繋げてくれた。たまたま死んだらどうするつもりなのだろうか。女性スタッフは僕の後ろにいた、明らかに足が曲がってはいけない方向に曲がっている青白顔オッサンにも「お電話いただきましたかっ」とイヤな感じで言っていた。返事もままならないオッサンにお電話は?お電話は?お電話は?アタック。私生活のイライラはディズニーランドで発散してもらいたい。看板には市民病院とあるが、死民病院の間違いではなかろうか。

ひんやりとして陰気な廊下。あちらこちらに床を見つめている患者たち。一様に暗い。しばらく待っているとナースなのか、ドクターなのか、病院ビギナーの僕には判別出来ない格好をした若い女性スタッフがやって来て、僕に書類を書くよう促しつつ、症状について訊ねてきた。ここまでつらつらと語っていられるのは事後だからであって、当時の僕は本当に死にそうな状態であった。僕はふらふらな頭で妻の言葉を思い出す。療養。休業。キャプテンED。ここ数日間の変調。順序立てて。夕飯いらない。それから吐き気を堪えながら「実は…療養で…仕事を休んでおりまして…数年間キャプ、キャプテンED…ここ数日も…咳が…」

しかし。必死に吐き出していた僕の言葉はドクターだかナースだかわからない女性から「あー!ここは緊急だから今、現時点の症状だけ教えてくださーい」と極めてビジネスライクに断ち切られてしまう。その後、実はドクターだった当該女性から風邪と診断され追い出された。ところが処方された風邪薬を飲んでもまったく回復せず、咳はひどくなる一方。このままでは死ぬと思い、翌々日、別の病院に行ったら風邪じゃなくてセキ喘息と診断され、薬を飲んだらあっという間に回復。生きているからいいけど、これ、プチ誤診ではないの?ぞんざいな対応をしてくれてありがとう市民病院。緊急でも要電話予約と教えてくれてありがとう市民病院。死民病院サイコー!

(この文章を執筆するのに要した時間はご想像にお任せします)