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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「シン・ゴジラ」はイタいだけ。

  

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

 

 庵野秀明監督作品「シン・ゴジラ」は、特撮好きのエヴァの監督が使徒をゴジラに置き換えて作った痛快怪獣映画だ。エヴァを観ているときは気づかなかったのだけれど、海から現れて東京に向かうゴジラとネルフ本部を目指す使徒は驚くほどよく似ている。また、石原さとみ様の流暢すぎるネイティヴ英語は、エヴァ2号機を起動する際のアスカのドイツ語の悲劇を想起させる。繰り返しというか執拗に描かれるタテ割り組織の弊害や、所定の手続きを経ないと攻撃が出来ない自衛隊。災害や驚異に対して後手を踏み、結果的に国民を危機にさらしてしまう行政の描写(会議のたびに会議室を変えることのバカバカしさよ!)は「パトレイバー2」のそれを想わせるものだが、僕がまず連想したのは人間の目線から怪獣を見上げていた平成ガメラシリーズだ。子供の味方になり下がった怪獣ではなく畏怖の対象。UMA扱いから次第に神に近い存在になっていくゴジラに僕は平成ガメラを想わずにいられなかったのだ。また僕が一番感心したのはゴジラを前にした人間の扱いの平等さ。ゴジラの前では人間はゴミ。なのでパニック映画になぜか挿入される取り残された若い母娘を救助されるシークエンスも主要登場人物の親子関係や恋愛模様もない。救われるはずのファミリーは瓦礫に消え、政治家も無名のゴミのように説明なしに死んでいく。その、主役ゴジラを引き立てる構成が素晴らしいと思った。多摩川を防衛線にゴジラへ総攻撃を仕掛ける自衛隊。瞬殺される米軍機、木っ端微塵の総理大臣。築地市場地下の秘密基地から出動する自衛隊の秘密兵器スーパーX。ラストの爆散するゴジラの尻尾から浮かびあがる元祖東宝シンデレラ、沢口靖子。いろいろ印象的なシーンはあるけれど何よりも無人在来線爆弾のアホらしさと中学生感が素晴らしい。無人在来線爆弾や。ああ無人在来線爆弾や。無人在来線爆弾や…。

 

こんなふうに僕は、乏しい想像力を駆使して「こんなゴジラだったらいいな」を頭に浮かべながら、シン・ゴジラを観るために映画館へ向かっていた。平成28年8月6日のことである。ガードレールのない歩道を歩く僕に泥酔した年金生活者(80)が操縦する有人自転車爆弾が炸裂したのは同日午後3時すぎ。とっさの反応で頭を打つのは避けられたけれども自転車と壁に挟まれた僕の左足に激痛。ベロベロに酔った年金生活者(80)がうーうー言って僕の左足の上から動かない。いっつー。酒くっさー。まさか有人自転車爆弾で足止めを喰らうとは。「うー酔ったー」と呻く年金生活者(80)に一人で死ねボケ!いいから退け、死ぬ前に退けと受傷しながらも暖かい声をかけて励ます人の良い僕。同日午後3時半。自ら救急に通報。駆けつける警察官。近づいてくる救急車ピーポー。医師の「完全に折れてるよ」の声。休み明け整形外科の診断。左脛骨高原骨折。全治6週間。あれから4週間。ギプスで左足を固めての松葉杖生活。自慰はおろか風呂にも入れない。泥酔して自転車に乗って突っ込んでくる無保険の年金生活者はスクリーンで放射能ビームを吐いて東京を破壊するゴジラよりも恐ろしい。今、僕は楽しそうにはしゃぐ都会の若者たちが当該年金生活者共々ゴジラにミンチにされることを祈りながら、歩けない晩夏を過ごしている。まだ、シン・ゴジラを観ることはかなわない。(所要時間18分)

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