Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

痴情最大の侵略がきつすぎる。

まだ暑かった時期に送られてきた一枚の画像が僕を悩ませている。生後数か月と思われる女児の画像。文面は「かわいい」のみ。送り主は今世紀初頭に僕とチョメチョメな関係にあった女性(メールのタイトルに名前が記されていた)。生きていれば現在40代前半。彼女が今どこで何をしているのか僕は知らない。この文章を書く前に共通の知人へ彼女の現状をたずねるメッセージを送ったので近いうちにわかるはずである。


女児の画像は僕へのリベンジだと考えた。「私はこんな可愛い子供に恵まれて充実した人生を送っている。あなたはどうですか?」という冴えない人生を送る僕にジェラシーを起こさせるようなメッセージ、あるいは「あなたのような人物が我が国の少子化に拍車をかけている」というバンクシーの作品のような批評性のあるメッセージ。そういった強いメッセージを画像にこめて僕を追い詰めようとしているのではないかと。もしくは、僕の精子、あの目に見えない、小さなオタマジャクシーが僕の許可なく冷凍保存されており「かわいい子供だねえ」とメールに反応したら「あなたの子供です…」という言葉が返ってくる驚きの展開も考えた。近いうちに届くかもしれぬ養育費の請求書に震えた。そんなことが倫理的に許されるはずがない。だがどれだけ僕が「倫理ガー!常識ガー!」と騒いだところで敵の手中に僕のオタマジャクシーがあるかぎり無力だ。第二第三の女児が「次女よパパ」「三女ですパパ」と襲撃してくるかもしれない。キャッツ・アイの来生3姉妹のようにセクシーな3姉妹ならウエルカムだがそれは儚い夢。厳しい現実は強烈なコシノ3姉妹もどきを僕のもとに派遣してくるのだ。きっつー。妻にオタマジャクシーの冷凍保存についてたずねたら「本体の人間が死ねば、冷凍保存されている種も廃棄処分されるのではありませんか」という答えがかえってきた。神は冷蔵庫より冷酷であった。

十数年という年月をこえての復讐。やはりあれか、ベッドの上で筋肉バスターをかけたのを根に持っているのだろうか。人間は自分が他人に屈辱を与えたことなどひとかけらのケーキで記憶の奥底に沈めてしまうが、受けた屈辱は永遠に忘れない。今、知人から連絡が入った。バンクシーでもオタマジャクシーでもなかった。「彼女には子供がいない」という事実が明らかになって、あずかり知らぬオタマジャクシーの冷凍保存より遥かに強い恐怖が僕の心を侵略していく。何のために…つか、その子誰なんだよ。怖いよ。(所要時間12分)

本を出しました。こういう日常を破壊する小さな悲劇についても書いてます。ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。