Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

再就職したホワイト環境職場で苦悩しているが相談する相手もいない。

悩んでいる。猛烈に悩んでいる。悩みすぎて吐きそうだ。俗にいう職場の悩みというやつである。悩みからくるストレスからだろうね、腸内環境が悪化し、切れ痔になってしまった。再就職した会社は実に働きやすい環境で僕の職業生活上最高レベルの充実した毎日を過ごせている。所定時間外労働は皆無。座席でうずくまり突然の耐えがたき便意に悶えていれば「大丈夫ですか」と声を掛けられる。スポーツクラブは会社負担で通わせてくれる。何より嬉しいのはきちんと仕事をして実績をあげれば認めて評価してくれること。前の職場では考えられないことだ。仕事をして実績をあげると、それを良く思わない同僚に足を引っ張られたり、妨害を受けたりした。なぜなら当時のトップが、仕事の出来ない人間に対しキタチョーのような厳しい叱責制裁を食らわしていたからだ。「デキる人間がいるとデキない俺たちが目立ってしまう。死ぬ。ならばデキる人間を引きずりおろしてしまおう。頑張っても給料上がらないし。その方が省エネだし」そういう人間の醜さと愚かさ、エゴとエコがぶつかり合うような環境だった。だから今の恵まれすぎている環境にはまだ慣れないでいる。実際、理解のある上司や協力的な同僚はファンタジー上の存在に思えてならないし、仕事に対する評価にも何か裏があるような気がしてならない。協力的な態度を見せられるたび、「えー!会社が払ってくれるのだからスポーツクラブに入りましょうよー」などとポジティブな意見を言われるたび「こいつ何を企んでいる?」「裏で妙な動きをしているのでは?」そんなふうに想像して、警戒し、胸が苦しくなったり、変な汗をかいたりしている。戦地から戻ってきた帰還兵がキツイ体験のフラッシュバックなど後遺症に悩まされ普通の生活に戻れないという話を聞くが、僕もブラックな環境から普通の環境への順応に苦戦しているのかもしれない。前と比べて緩すぎるようにしか思えない環境、身内に敵がいない環境に慣れないのだ。いってみればブラックPTSD。だが、それが僕を苦しめている悩みではない。悩みはもっと深いところにある。というのも今の環境には順応していける自信があるからだ。時間はかかるかもしれないけれど、基本的にはいい方向に向かっているとわかっているからだ。入社一ヵ月の時点でボスと面談をした。内容は任されている仕事の進捗状況と僕が会社でやっていけそうかどうかの確認だった。「今のところ仕事も予定通りですし、皆ともうまくやっていけそうです」僕が答えるとボスは「まあ、それは結構なことですが…」とどこか不満そうであった。優等生な返答をしたつもりだったので、その微妙な反応に困惑しているとボスは「キミには我が社には吹いていない風、つまりウインドを期待していたんですが」などと詩的に仰るのでますます困惑してしまう。フラッシュバックする8か月もの長きに及んだ失業期間、炎天下の駐車場での切符もぎりのアルバイト。ボスの言いたいことを日本語と英語で要約すると次のようであった。《非常にブラッキーできっつい環境で長年働いてきたキミには、社員同士も仲が良く働きやすい環境、ともするとお友達サークルになりがちな今の会社に、ブラッキーな管理職として厳しい風を吹かせてもらいたい》《Wind is blowing from black company.》ボスはひとことでこうも言った。「嫌われ役になってほしい」。きっつー。新しい環境、働きやすいホワイトな環境で皆と仲良く心機一転やり直したい。ブラック環境を忘れたい。そう思っていた僕にボスよ。あなたはブラックで在り続けろと仰るのか。僕の悩みはボスの仰るブラック環境を僕が知らないことに起因している。ボスはブラックを厳しい環境ととらえている。違う。断じて違う。ブラックとは厳しいのではなく、ただただどこまでもヤバいのだ。僕はヤバい職場環境しか知らない。ボスのいう厳しい環境を知らない。僕は厳しい管理職ではなく、単にヤバい奴になってしまうだろう。このままではボスの期待に応えられない。同僚からも忌避されるだろう。脳裏をかすめる離職からの失業のコンボ。はたして僕にブラックの呪縛から逃れられる日は訪れるのだろうか。僕の見事にパカーンと割れた切れ痔は、映画「十戒」の海を割って民のために道を切り開いたシーンを想い起こさせるけれど、僕を安住の地へ導くことはない。(所要時間18分)

前立腺の手術を受けた僕にGOサインが舞い降りた。

ちょっと前になるが前立腺肥大症の手術を受けた。ホーケイ手術のように術後ドラマティックにオーケイな感じへ見た目が変わるわけでもなく、麻酔をかけられて寝ている間に終わっていただけなので、気付きや学びといった類はない。正直に告白するならば、ドクターによる手術の説明、「オットセイの先っちょから管のようなものを奥までズイズイズイと挿入してチョッキンするだけ」が恐ろしすぎて、ただいっさいがすぎていくのを待っていただけなのだ。気付きもなく、学びもない。虚しさしか残らないこの手術で僕が得たものは、「オットセイの先っちょから入れたんだよ…」と妻に告げたときに彼女が言ってくれた「素晴らしい…成し遂げた勇者ってわけですね…」というお褒めの言葉くらいしかない。そんなわけで《オットセイの先っちょからズイズイズイ》は僕の中ではすでに過去になりつつある。気がかりなのは昨年から引き続く下半身受難。左足は昨年の夏に交通事故で左膝を骨折して全治3ヵ月。そのうえ真ん中の足はかねてからの勃起不全に加えてこのたびの前立腺肥大。因果応報。僕の行いが悪いのだろう…と過去を振り返ってみたところ、下半身に災禍をもたらすような所業をしていたのを思い出してしまった。32年前。小学校の修学旅行。中禅寺湖畔にある、とある古旅館の大浴場でのこと。仲のいい友人や仲の悪い友人との旅行でテンションがあがった僕は、郷ひろみの「男の子女の子」という楽曲を歌唱し、そのメロディーとリズムに合わせて己自身を弄んだのである。贖罪の意味も込めて具体的に説明すると、当該楽曲の「君たち女の子」というフレーズの箇所では、オットセイを股に挟んで隠蔽、あたかも女の子であると世を欺くように偽装し、続く、「僕たち男の子」というフレーズで、股の力を緩めてオットセイを開放し、男の子アッピールをしたのである。その後のヘイヘイヘイヘイヘイヘイという掛け声に合わせてオットセイを振り回したあのときの自分を、今からでもいい、殺しに行きたい。おそらくこの悪魔のような所業、サバトが、僕の人生を悩ませ続けることになるファイザー製薬頼みの下半身と、前立腺肥大というデーモンを召喚したのだろう。余談になるが僕と共にオットセイを弄った友人Kも爾来30数年間没落した人生を送り続けている。前立腺肥大が解消されたら勃起不全も解消されるかもしれないなどと言われていたが、現時点でそんな吉兆は1ミリもないので、おそらく、僕は男の子女の子ヘイヘイヘイで悪魔を召喚すると同時に神をも殺したのだと思う。もし、あのとき、あの中禅寺湖畔の大風呂で、GOはGOでも「男の子女の子」ではなく「2億4千万の瞳」を歌っていたら…。億千万!億千万!と絶叫していたら…。もっとGOGOな人生を送っていたのではないか、億万長者になっていたのではないか…後悔もオットセイも先に立たずなのである。己の愚かな選択が悔やまれてならない。(所要時間14分)

「好きなことを仕事にする」ということはなぜ気持ちいいのか。

僕は2007年の春にツイッターをはじめた。はじめたきっかけは忘れてしまった。たぶん女の子にモテるためとかそういう類のどうしようもないことだろう。それから2017年までの10年間タイムラインを眺めてきて学んだことはほとんどないけれど、強いて挙げるとするならば「世の中に反対している人は世の中が変わってもずっと反対し続けていること」、「好きなことで生きていこう」「すばらしい!」的なやり取りは見た目を変えながら繰り返されていること、以上二点くらいのものだ。実際、好きなことが仕事に出来たらそれはとても素晴らしいことだ。ベストな生き方のひとつであるのは間違いない。僕だって好きなことで生きてみたい。たとえば、唾を遠くへ飛ばしたり、昼も夜もバットを振り回したりすることでお金を稼いでみたかった。残念ながら現在ではそんなことは仕事になりえない。生まれるのが早すぎた。だが、裏返してみれば、好きなことを仕事にするのが素晴らしい、という明白なことはいちいち人に言われなくてもわかっているはずだ。なぜ、誰もがわかりきったことをインターネットや講演などで時には金を貰って発言し、それを時に金を払ってありがたがって聞いているのだろうか、僕には不思議でならない。本当に必要とされるのは「好きでもないことを仕事としてやっていくにはどうすればいいのか?」ではないか。おそらく成功者という立ち位置から「好きなことで生きていこう」的な発言をなさっているのだろうが、ひねくれ者の僕にはそれが思い上がりに見えてしまうのだ。僕は他人の生活に憧れたことがないが(才能とか才能が産み出す作品には憧れる)、好きなことで生計を立てている生活に憧れる気持ちはよくわかっているつもりだ。それでもそのクエスチョンに対する解を見つけられずにいた。昨夜、偶然、その解を見つけた。前職の後輩と会って仕事の悩みを打ち明けられたのだ。話を終わらせるために「そんな仕事は今すぐ辞めて、好きなことを仕事にしようよ!君なら出来る!絶対にやれる!」と心にもないことを言ってみた。とても気持ちよかった。その気持ち良さの原因は何かと考えてみた。好きなことは人それぞれであるため、基本的にそれをサーチしてトライするのは聞き手側がやること、つまり話し手側には聞き手が成功しようが失敗しようが何の責任もない、無責任であること。さらに昨夜の相手が僕の言葉に対して「ですよねー」つって気持ち良さげであったように、お前は出来るやれるキテるって持ち上げているため気分がいい。お互いが気持ちがいい。責任がない。無責任で気持ちがいいなんて最高ではないか。人間は、気持ちがいいことを求めるし繰り返す。金銭の授受が発生するのも然り。つまり「好きなことを仕事にしよう」などと言うのは双方が無責任に気楽に気持ちよくなれる魔法の言葉なのである。講演やセミナーなどでそのような当たり前のことを金を貰って語れてしまう人たちにはどのような精進をすれば他人へそんな無責任なことを言えるようになれるのかご教授願いたいところだ。僕は、サラリーマンを20年ほどやってみて、ようやく好きではないことを仕事としている自分のことを好きになりはじめている。好きなことを仕事にすることがベストとするなら、ベターとしかいえないかもしれないがこれはこれでいいと僕は思っている。(所要時間16分)

【続】元給食営業マンが話題の「マズい」学校給食を考察してみた。

神奈川県大磯町の中学校給食がそのマズさと、異常な残食率と、異物混入件数とでニュースになっているのを受けて先日このような記事を書いた。

元給食営業マンが話題の「マズい」学校給食を考察してみた。 - Everything you've ever Dreamed

書いた理由は「委託や給食やデリバリー方式が悪い」という片寄った報道が多すぎて「いや委託側にも非はあるよ」と、大磯町と近い湘南エリアの元給食業界にいた者として言い返したかったからだ。そういう意図で書かれていたので、なぜ、当該受託業者に決まったのかと、導入プランの拙さについてはほとんど触れていなかった。その点を補足するのがこの文章の狙いである。なので補足なので先の記事を読んでからにして欲しい。先の記事で、僕はこの大磯の事態の大きな原因として「条件の悪さ」を挙げた。特に業務委託料(総額134,224千円【580日分】/1日当たり231,420円)は調理盛付け配送を相応のクオリティと安全安心を確保しつつ実施するには心もとないものだとした。安く済ませようという委託側と安く受ける受託側双方の責任だと。ではなぜ委託側はそのような安い条件を出し、業者は受託してしまうのか。それは給食業界の特性に一因がある。現在給食業界にはマネー的にオイシイ仕事がない。かつては一般企業の社食や社員寮、社員クラブという案件があったが、現在、それらを新規に立ち上げるのは、ごく一部の例外はあるが大企業のみ。また既存の事業所も廉価な外食、コンビニ等の中食との競争が激化している(企業内にコンビニやファストフードを設置してるのを見たことあるよね)。オイシイ新設案件と既存案件売上の減少、福祉施設の給食に手を出すがこれまた年中無休3食提供で人はかかるわ生産性は低いわでひとことでいえば「大変」なのである。売上増や利益の確保が図れず、それをカバーするために、営業マンはうま味がないのを知りながらも今回の大磯町の中学校給食案件のような入札案件に手を出すのである。参加する業者があれば入札は有効になる。入札が有効となれば繰り返すのがお役所。どの業界も同じだと思うが入札案件負のスパイラルはこうして出来あがるのだ。ましてや当該受託業者は大磯の中学給食事業の受託1年後の平成29年に工場を新設している。

給食のエンゼルフーズ、神奈川に新工場 横浜の中学に弁当供給 :日本経済新聞

大規模な設備投資が予定されていたら、尚更、仕事を取りに行くよね…。多少無理してでも…ってことになるかもしれない。業務拡大の結果、衛生管理がずさんになった可能性もあるだろう。また、学校給食(公立保育所給食)契約の特性として、「労務委託方式(食材の売上は委託側に計上される契約形態)」と「契約期間の業務委託金」が保証されている点がある。業者にとっては、利益が少なくても確実に売上が確保できるのは大きい(大磯町の当該案件は3年度)。売上が多かろうが少なかろうが評価が良かろうが悪かろうがその委託金額の中で契約期間を乗り切ればいいのだ。悪く考えれば食数がどうであれ委託金額が確保されるので、食数が減ったほうが労務費は浮き、利益は出る(そんな業者はいないと信じたいが)。では、なぜ大磯町が今回の入札に当たりこのような条件を付し、マズいといわれる給食で全国区になってしまったのか。悪い人たちの話し合いがないと信じるならば、準備不足に尽きる。前の記事で書いたとおりに募集要項によれば業者導入スケジュールは「平成27年7月開始、10月業者決定、翌1月スタート」とあるように非常にタイトなものになっている。タイトなスケジュールは業界あるあるなのだけども調べてみると選定のキモであるポジション担当栄養士を入札とほぼ同時に募集している。

学校栄養士(任期付職員)を募集(締め切りました)/大磯町ホームページ

入札公募とほぼ同時に担当栄養士を募集して十分な準備が出来るだろうか。僕が給食担当営業時代に学校や保育所相手の営業でもっとも苦戦したのは、口うるさい栄養士オバハンだったものだが…。大磯町は不在。業者天国かよ。しかもこの担当栄養士の募集、条件が月給171,296円~である。給食業界にいる人なら皆知ってるが栄養士さんは薄給で、この条件も業界あるあるだが、それでも昨今の人不足で栄養士さんの給与も上がり気味であるし、ましてや学校給食の知識を十分に持った方をこの条件で採用できるか疑問である。さらに、大磯町の場合は1時間以上かかる場所からのデリバリー方式を前提条件としている。はたしてその条件とスケジュールで、学校給食の知識と通常の自校式やセンター式学校給食とデリバリー方式の特徴と差異を熟知した献立の作成と発注が出来る栄養士を確保できるだろうか。自校式センター式とデリバリー式では使える食材もメニューも別物である。それをこなせる逸材新卒が17万円で採用されたと願ってやまない。どうしても町側の杜撰な導入計画が透けてみえてしまうのだ(町がどのように委託金額も設定したのかもお察しだろう)。次に、入札の方式そのものの問題。今回の大磯町中学校給食の入札は公募プロポーザル方式が採られている。公募とは字のとおり公にして業者を募る方式だ(学校給食ではスタンダード)。公募といっても期日に町のホームページや掲示板に貼られるくらいで実務的には担当者から業者の営業に「何月何日からホームページに要項が出るのでよろしく」的な連絡が入るのが一般的(余程アンテナを立ててないかぎり知りようがない)。今回の案件も恐らくそういう流れで業者に声がけが行われているはず。聞くところによると参加した業者は2社だけだったらしい。たまたま別件で連絡を取ることがあって、競合他社営業マンに話を聞いたら大磯町の案件は誰も知らなかった。連絡がなかったからだ。なぜ当該2社だけだったのか。公募の名の下、連絡の段階で実質的な業者の選定が行われていたのではないかと疑ってしまう。今回ばかりは公募ではなく、デリバリー方式で学校給食を運営できる県に業者登録をしている企業から指名入札をすべきだったのではないか。確かに指名よりも公募の方がオープンでトレンドだが、安全性が確保されるのは間違いない。実際、横浜市の公立保育所は公募ではなく指名入札を採用し、信用できない業者を入札前に排除している(実効力があるかは別の問題だが)。また、先の記事で、異常な異物混入件数については異物が髪の毛、虫であることから調理後の混入が濃厚で前の記事では工程に無理があり目視チェックが行き届いていないと推測したが(新工場設置による人員不足と熟練度の不足もあるかも)、もうひとつファクターがある。意図的なものである。普通に注意を払って業務に当たれば年に100件の異物混入は起こるはずがない。僕が実際に経験した意図的は異物混入は「こんなマズい給食フザケンナ。トラブルを起こして迷惑をかけてやろう」的な食べる側が起こすテロ型と「仕事多すぎる。トラブルを起こして仕事を減らそう。どーせ人不足で首にならないし」的なブラック環境型があるので関係各位には原因の究明に努めてもらいたい。僕の推察では先の記事で書いたとおり工程の無理があってチェックが行き届かないが第一候補で、ブラック環境型が大穴ってところだ。テロ型を排除したのはそれが衛生管理の問題ではなくクレーム処理、顧客対応の問題だからだ。いずれにせよ、大磯町の中学校給食の問題は、コストと手間を惜しんだことに由来している。安全で美味しい給食事業にはお金がかかるのだ。大磯町には財政の余裕がないというのは言い訳にならない。同じ神奈川県中郡二宮町は大磯町より若干小規模な自治体ながら立派な給食センターを保有して町内中学校の給食をまかなっているのだ。このページを見てもらいたい。小さな町で大きな負担になっているはずだが立派に給食センターを運営している。

学校給食センター/二宮町ホームページ

僕は給食営業を担当しているとき、ケチっているクライアントに「社員食堂なんて利益を産み出すものではありません。中途半端に五をかけて五を無駄にするのではなく十をフルに活用していい食堂を作りましょう」と何度か言ったことがある。金が出せないなら満足な運営は出来ないとこちらから断ったことも多くあった。やるのもプロ、断るのもプロなのだ。学校給食も同じで安全で美味しい食事を提供するには金と時間は必要不可欠なのだ。大磯町の件はそういう考えが委託側と受託側に欠けているように見えてならない。まとめると給食ナメんなってこと。つらつらと業者だけが悪いわけではなく町の給食導入プロセスに問題があると述べてきたけど、町が入札の不備を認めるとは考えにくいので、おそらく受託した業者の衛生管理の問題とすることで幕引きをはかると予想しているけど、そんな幕引きでは問題解決にならないとだけは言っておきたい…。つって〆の言葉としようとしたら大磯町が予想通りの対応でおったまげたよ!

“異物混入給食”大磯町「業者変更せず」(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース

(所要時間55分)

元給食営業マンが話題の「マズい」学校給食を考察してみた。

町導入の中学校給食「まずい」食べ残す生徒続々 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 神奈川県大磯町の中学校給食のマズさと異常な残食率と異物混入件数がニュースになっているのを聞いてとても悲しい気分になった。なぜなら僕が長年食品業界に勤めており、一時期数年間ほどだが給食の営業を担当していたことがあるからだ。ましてや神奈川湘南西湘エリアは僕の地元。そのエリアで展開しているほとんどの給食会社は(完璧ではないものの)全体的には良くやっているのを知っている。なので、一部の業者のテキトーな仕事のせいで、学校給食はマズイ、委託最悪、デリバリーは不衛生みたいな風評が蔓延するのはちょっと我慢ならないというかいただけない。そんな義憤と、台風で外出できない状況から、なぜ大磯町の学校給食がマズくなったのか考察してみたい。先ず、契約について。公立の学校給食は通常、公募プロポーザル入札で決定される。大磯町もその例に従っている。中学校給食・調理配送等事業者を募集(募集を締め切りました)/大磯町ホームページ

給食業界の営業マンはここにある募集要項と仕様書を確認して入札に参加するかどうか決定する。この募集要項をザッと見てみるとポイントは2つ。献立作成と食材の発注は委託側(町)となっていること(つまり大磯町の栄養士が担当)。そして契約期間内の業務委託料。当該業務委託料は平成28年1月から平成31年3月末までで134,224千円。金だけの面でいえばこの金額で業務を遂行して利益を出せるか否かで給食の営業マンは入札に参加するかどうか決めるのである。1億3千万超の大金だが「こんなに金をかけてあの給食なのか」と思うことなかれ。1日当たりに換算してみる。要項に拠れば1年度における給食提供日数は180日とされている(平成28年1月から3月までは40日)。つまり契約期間内の給食提供日数は180日×3年度プラス40日なので580日。業務委託料総額134,224千円を580日で割ると1日当たりの業務委託料は231,420円。食材については町が発注調達となっているため(食材からは利益を得られない)、この金額内で1日870人分の調理盛付配送業務を行う労務費と経費をカバーし、その上で利益を確保しなければならないのである。会社によってこの規模の給食にどれだけの人員をかけるかは違うけれども、まあ普通に考えて余裕はないよね。少なくともこの業務を遂行するうえで必要な機材やスペースを新設することは難しいと言わざるを得ない(そのあたりが異物混入の遠因になっていると思う)。つまり、大磯町がこの委託金額をどういう根拠で設定したのかはわからないけれども、安全で美味しい給食を提供するには十分な金額ではない。契約形態に関していえば、食材の発注調達と献立の作成を町が請け負い、その他の調理盛付配送業務を業者に委託する方式(労務委託方式/学校給食では一般的な契約形態)の悪い面が出ている。この方式の場合、食材の発注調達と献立を作成する担当者と実際に調理をする業者と提供がなされる場所(学校)間の連絡が密に出来る環境が必要となる。今回の場合、大磯町の栄養士と委託業者(綾瀬市)と現場の距離がありすぎる。神奈川に住んでいる僕の感覚でいえば大磯町と調理業務を行う業者所在地まで1時間以上かかる。給食のトラブルで大事なのはスピード感のある対応である。なぜ近隣の市町村にある業者に委託しなかったのだろうか。不思議だ。契約形態に続いては提供方法についてだが、当該給食は調理した食事をランチボックスに盛付けて配送するデリバリー方式で行われている。つまり弁当である。クックサーブ方式(現場調理提供)と比べてコストは安く済むけれども、基本的に火を入れなければならない、適温提供が出来ないなどメニューと食材の制限が多いやり方でもある(例/生野菜→温野菜。揚げ物の多用。色どりは全体的に茶色っぽくなる。ニュースで見た当該給食も茶色っぽい)。そのデメリットを選考と導入の段階で周知されていたのだろうか。今回の大磯町のケースはさらに提供場所から車で1時間以上の工場からの配送という要因が加わる。業者サイドとしては食中毒を恐れ、弁当が傷まないようにするのが第一となって味や見た目が二の次になったのは想像に難くない。人の味覚はそれぞれなので何ともいえない部分があるけれども、大磯町の中学校給食がマズくなった理由は金額面と運営面で無理があったからだと僕は考えている。続いて異物混入の多さについて。ニュースから知るかぎり混入物が髪やビニル片や虫なので、意図的なものでないかぎり、弁当の盛付時と配送までの間で混入されたと思われる(フタ付きの弁当容器であるため、フタをしたあとは混入しない)。委託開始1年半で100件超の異物混入は異常としかいえないが、ひとつ原因があるとしたら、工程的な無理だろう。先の募集要項にこの給食業務は厚労省が策定した「大量調理マニュアル」に沿って行うとある。このマニュアルは給食業務に携わる人間にとっては一般的なものなのだが、そこには調理後2時間以内に喫食が望ましいとされていて、保健所からもそのように指導されている。2時間以内提供を守ろうとすれば、今回の場合、業者と提供場所(中学校)の間が車で1時間程度なので、調理後の盛付けはかなりのスピードで行われているはず。先述のとおり金額面で余裕はないので十分な人員を確保できるはずもなく、盛付けと確認作業は雑になっているのではないか(事実、盛付けのムラは報告されている)。また、僕のいた会社ではスタッフが目視でひとつひとつ確認していた。1日870食の弁当の目視を時間内に行うにはそれなりに労務費がかかるのである。もし少ない人員で混入チェックをするなら相応の時間が必要となり、その間、フタをするまでの時間は長くなり異物混入のリスクは高まる(古い工場なら天井からゴミや虫が落ちてきたりする)。一方、募集要項をみると金額面だけでなく時間的にもタイトなのが見て取れる。28年1月業務開始の2ヶ月前27年10月中旬に業者決定。年末年始を挟んだその2ヶ月間に先述の限られた予算内で870人分のキャパをカバーしたうえ、安全面を考慮した設備と人員の確保が出来るだろうか。安全を確保するには金と時間としっかりした導入計画が必要なのだ。最後にもうひとつ、これは大磯町特有のファクターなのだが、なぜデリバリー方式を採用したのだろうか。コスト面を考慮したのはわかるけれども、隣接する平塚市と二宮町は僕の知るかぎりデリバリー方式ではなくそれぞれ自治体でセンターを設置運営するセンター方式を採用して中学校に給食提供をしている(平塚の一部は自校式かもしれない)。平塚市はともかく予算規模的に小さな二宮町でさえ、給食センター方式を採用している、その理由について考察しなかったのだろうか。なぜ二宮町がデリバリー方式を採用しなかったのか。エリア内にデリバリー方式を安全に行える企業がないという前提条件は考慮されなかったのだろうか。この問題の根本には給食運営と安全性の確保に対する大磯町の甘い認識があったとしか思えないのだ。長々と書いてきたけど以上である。元給食営業マンから言わせていただくと、給食ナメるなってこと。ちなみに僕が現役の給食担当だったら募集要項を読んだだけで大磯町の中学校給食の入札に参加しなかったと思う。この事案は、安く済ませようとする委託側、安く受ける受託業者、実際にマズい給食を食べない両者が両者とも罪深いのだ。(所要時間50分)