Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私はコレで会社を辞めました?/私の異常な結婚 または私は如何にして夫婦間の問題で上司から会社を辞めるよう追い詰められるに至ったか。


 もし僕が会社を追われるようなことがあるのなら原因は女性問題しかないと思っているがその可能性はごくごく小さなものになっている。なぜなら最近の僕は不感症。不感症に愛人裸体を俯瞰する権利はない。僕の不感症に気づかない妻に対して僕は部分不干渉。妻の名はシノ。結婚9ヶ月になる僕らは夫婦が何から何まで干渉してもうまくいかないことを学んだ。特にお互いの職業や仕事への考え方については、勤務地と連絡先さえ教えてもらえれば、干渉しないようになっている。僕は妻の仕事について詳しく知らないし、彼女も僕と同様だろう。妻は秘書、JK、張飛、開運蝶、ダーイシ、三成、喫茶店員、牢前名電、お菓子屋さん(聞き取れなかった部分、聞き違いと思われる部分もそのまま記述しました)と加齢に伴い華麗に職業を変えていくのでとてもついていけない。「ホントはもう少し家から近いところがいいのれす〜」と妻は少々不満な様子だが昨今の不況による転職の困難もあって我慢して市内に勤めている。


 幸いなことに我が社は不況知らずだ。この不況下でも好況下と変わらずに辞めていく人が後を絶たない。僕が属する営業部は入社後1年以内に9割(直近五年は10割)、他の部署でも少なく見積もって7割が心や体の不調を理由に辞めていく。残業代は一切出ないものの、給料は年に12回口座に振り込まれ、入社するなり役職がもらえる職場はそうそうないだろうに、不思議だ。某事業部も欠員が続いていたが連休前の求人で若い女性一名の採用が決まった。


 採用されたのは妻であった。


 採用通知ギリギリ事前にある情報筋から察知した僕は、出張先の静岡から神奈川の本社に連絡をいれ、採用担当である人事部長と自称「昵懇の仲」である部長経由で「妻、女房、ワイフ」と重大情報をいれようとしたのだが、突如コンプライアンスに目覚め「てめぇ…21世紀に男女差別するつもりか?」と凄んできた部長に情報統制・検閲され握り潰されてしまった。「シノさんが受かった会社、僕の会社なんだけど…」「オヤカタサマ…冗談がキツイです〜…」直後の夫婦間の電話は終始霊安室ムードであった。


 今月10日から妻が同僚になる。部署は違えど小さな会社だ。予想される公私のバーリトゥード。ビーストモードに戻った部長は勤務時間中顔を突き合わせている終始、「俺の会社を私物化するつもりカアッ…?」「バツイチの俺に対する嫌みカアッ…?」「会社を連れ込み旅館にするのカアッ…」とカアッカアッ鳥類カラス科のような口調で話しかけてきて精神がおかしくなりそうだ。終いには「夫婦同じ会社は悪口が言いにくいから駄目だ…男女は平等だ…男のお前が身を引け。退職しろ退職しろ退職しろ退職退職自己都合退職カアッ」と退職勧告とも取れる言葉をぶつけられている。


 部長が言うには、とある事情で明文化されない出来ないが夫婦が同じ職場に勤めるのは、社会的実務上禁じられていて、それを守らない人類は《空気を読まない反乱分子》というレッテルを貼られ、社会的に半分死ぬのだそうだ。そういうもの、なのか?「会社やめるか?それとも会社をやめるか?やりづれーんだよ!」部長は右手で机を叩こうとして空振りしたのを声量でごまかすように叫んだ。


 僕が子供の頃「私はコレで会社を辞めました」という女性愛人問題でのリストラを茶化したCMがあって、自分もこういう目に遭うのかもしれないな…そんな未来について考えたりしてみたけれど、まさか自分にとっての「コレ」が愛人ではなくガチの妻になるとは夢にも思わなかった。明日がくるのが恐い。ちなみに妻の役職は係長。


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(プレス)

http://www.ips.co.jp/news/2012/03/post_9.html

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