僕には理解できないのだけれどイイ話は出来るだけ早くワルイ話はなるべく後回しに伝えようとする傾向が世間一般にはあるように思われる。つまり〆切期限以前に帰ってくる返答というのは基本的にポジティブなものでしかありえず、それが早ければ早いほどポジティブ度は上昇する。一昨日、面接の最後に「安心してください。お返事は来週ということになっておりますが、出来るだけ早めにいたします」と言われた。実質的内定通知である。そして私事で恐縮なのだが先ほど午前9時すぎに予定よりも5日も早い返答が来た。とはいえ転職活動のなかで数少ない勝者と多くの敗者(僕のことだ)を目の当たりにしてきた今の僕に浮ついた気持ちはまったくない。ただ、数か月にわたるハードな転職活動を振り返り、終わった…という実感があるだけだ。
「お待たせして申し訳ありません。思った以上に選考に時間がかかってしまいまして…。今日お時間いただけますか?」条件等の詰めがあるのだろう。しかし都合がつかない。「ではお電話で。実はフミコ様以外にもうひとり候補者がおりまして。待合室にいた方わかりますか?」待合室にいた男は僕よりもかなり年上に見えた。薄毛なくせに鼻毛と耳毛はボーボーの彼の姿は僕に需要と供給のミスマッチをおもわせた。「彼とフミコさんが今回の最終候補でした。面接の際にお話させていただいたように私どもの会社は再来年に創業50周年を迎えます。50周年に向けての事業拡大が至上命令。そのためにはより若い力、これを弊社では『前進力』と呼んでいるのですが、より強い『前進力』を求めて今回の採用をおこないました。経験と技量といった職務遂行能力の点で厳密に判定させていただき、フミコ様が《上》という評価になりました」やったー!「それらも含めて総合的に判断した結果、今回フミコ様の採用は見送らせていただくことになりました」えっ。意味が分からず動揺する。若い力とは。前進力とは。
「何が選定のポイントになったのかわからない?総合的な判断としか言いようがありません。実はもう一人の方には来年大学受験を控えた双子のお子様がいらっしゃることがポイントになりました。フミコ様も食品業界に長くおられるのでご存じだと思いますが私どもセンベイ業界も他の食品外食業と同様、人材の流出が激しくその定着が大きなテーマになっております。フミコ様はお子様がいらっしゃらないですよね?大学受験を控えたお子様がいるもう一人の方の方が『すぐに転職してしまうリスク』を回避できると私どもは考えました。フミコ様はまだお若いですし、なるべく早いうちにお返事をした方がフミコ様の利益になると思いこのような早い回答とさせていただきました。それでは貴兄の御健闘をお祈り申し上げます」終わった……。
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