Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「安易な値下げは己の価値を下げているだけ」という話をしたけど各方面で聞く耳を持たれませんでした。

昨日、昼食を買うために訪れたコンビニで競合他社の営業マンに会った。何回かコンペで顔をあわせるうちに、情報交換をするようになった人物で、年齢は僕と同じ。挨拶をして「最近どうよ」的な軽い話のはずが「仕事のやり方」という少々ヘビーなものになってしまう真面目な僕ら。彼は、採算が取れるギリギリか、もしかしたらアウトまで(推測)値引きをして商談をすすめることがよくあった。僕は「おいおい大丈夫かよ」と笑っていたけれども、とある見込み客との商談の中で、彼の会社安すぎない?、という話題になった。そして、彼のヤバい値引きのおかげでウチの業界自体の価格帯がヤバいレベルまで下がっていると思われていることを知った。ウチは違う。あそこは特別なんです!僕は自分の利益のために釘を刺すことにした。

「安易な値下げっていうのは営業マン自身の価値を下げているのと同じ。業界自体の価値をあげていかないと疲弊するだけっすよ。営業の仕事は商品やサービスの価値をアピールして高く売ることではありませんか。値下げ競争は、血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ」すると彼は、「フミコさんて理想主義者だったんですね。超意外。血を吐くマラソンなんて詩的ですね」といって聞く耳持たずな様子であった。僕はリアリストだ。「値下げ競争やめよう」は理想どころか、儲けるための現実なんだけどな。血を吐くマラソンは、詩的ではなく、ウルトラセブンなんだけどな。

「安い」というブランドイメージを持たれるのは、いいことばかりではない。目前の目標達成にとらわれすぎると大きなものを取り逃すというリスクもある。実際、件の見込み客は多少値段は高くても良いものを求めていて、安いイメージをもたれている彼は、土俵に乗せてもらえるか微妙であった。営業の最前線での実感だけれども、「多少値段は高くても…」という要望をもつクライアントが年々多くなっている。まあ、僕に迷惑がかからない程度に値下げ競争をして頑張ってもらいたいものだ。これは信じるものの違いであり、どちらが良いとか悪いとかという話ではない。商品やサービスの価値を上げて、それに応じた適正な値段を設定し、提案する道が僕は正しいと信じているというだけのこと。そしてそれが営業の価値だとも僕は思っている。仕事上の自分の価値くらい自分で決めたいじゃないか。

家で、血を吐きながら続ける悲しい営業の話をしたら、奥様も「私もそう思う」と同意してくれた。「どう考えても消耗戦で勝者はいないよね。誰も幸せになれない」と言ってくれた。「勝ち取っても虚しくなるだけだよ…」と言いながら、これならイケると確信して、「だよね。同じように僕のこづかいを下げ続けることも血を吐き続けるような悲しいマラソンだよ。もうやめないか。こんな誰も勝者のいない戦いは」と僕は続けた。 

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すると奥様は、「そうね。こんな不毛な争いは一秒でもはやく終わらせない」と言うと「それはそれ!これはこれ!」と声をあげてこの虚しい争いにフルパワーで終止符を打ったのでございます。きっつー。(所要時間17分)「人生をサバイブ」をテーマにしたエッセイ本を出しました。→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。