Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

隣人トラブル解決のカギは想像力(2026)

数年前から暮らしている築30年の賃貸マンションが僕の城。体感猫の額の半分ほどの狭小の部屋で奥様と慎ましいだけの生活をしている。問題はある。隣人の売人風の若者が昼もぶらぶらと怪しげな行動をしていたり、下に住む謎の住民が数か月間姿を消していたり…などといった問題のなかでもっとも厄介なものは、真上に住んでいる住民の騒音である。

上階には僕と同世代の女性が一人で暮らしている。最近、ものすごく騒々しいのだ。生活騒音なら「人間の生きている営みだよね」でスルーできるが、そんなレベルではない。真夜中に運動会をしているようにバタバタバタバタ!ドンドンドン!と騒音を立てるのだ。僕は人格者なので「きっと更年期さ。更年期ヨーヨー 更年期タツマキ更年期スピンだよ。僕も君も上の人も更年期。いつか終わるさ」と笑って平和にやりすごそうとするが、「なにが更年期スピンよ」と奥様の憤怒はおさまらない。騒ぎがはじまった当初は天井を睨みつけて「何とかしてよ」と文句を言っていたのだが、最近は天井を感情のない目で一瞥すると、虚無的な表情を浮かべて僕をじっと見つめ、右の手の親指を立てて左から右へ首を切るような仕草をするのみである。恐ろしい。この事態を打開しなければ、僕の生命が危ない。

上階の住民の騒音にはピークがある。騒がしくなったのは2016〜2018年からであるが、まだ耐えられるレベルであった。第一のピークは今から3年前2023年春である。突然、運動会レベルの騒音を出し始めた。飛んだり跳ねたり笛を吹いたり。それから3年間は比較的穏やかな騒音であったが2026年6月21日に第二のピークが突如訪れた。昨日の午後はテレビの音が聞こえないくらいの騒音であった。奥様は怒り心頭である。その怒りは問題を放置してきた僕に向かってきている。僕は何もしていないわけではない。騒々しさに何か法則があるのではないかと沈思していたのである。行動の前に何が起きているのかシミュレーションしておかなければならない。異性との激しい合体グランドクロスが原因ではないかと疑ったが、数時間継続するのがおかしい。本当にわからない。だが昨日からの騒音は過去最高レベルであり、このまま放置しては健康面での問題になりかねない。僕は思想家の看板をおろし、行動に出ることにした。

「上階の住民に直接モノ申すことにした。問題解決もさることながら、何が起きているのか知りたかったからだ。騒音から分析するとマンション内で激しく飛び跳ねるような、あるいは何かを投げるような動きをしていると推測された。合体グランドクロスでなければ、ファミリートレーナーか、TRFのダンスエクササイズDVDを疑った。どの仮説も起きている事象を満足に説明できなかった。昨日の騒音(ピーク)は、サッカー日本代表戦の時間帯に一致していたので、応援をしていた可能性は高い。だがこれまでサッカー日本代表戦、事前の練習試合をやっているときに騒音は起きていないのである。ここにどういう法則が存在しているのだろうか。僕は上階に駆け上がり住民女性に「当たって砕けろ」精神で突撃したのでございます。すると目の前に現れた人物、僕と同年代の中高年女性は奇怪な格好をしていた。広島東洋カープのキャップを深く被り、サッカー日本代表の青いレプリカユニフォームを着ていた。手にはオオタニのボブルヘッド人形。「カープ女子、お前だったのか。スポーツイベントのたびにいつも騒いでいたのは」カープ女子は、ぐったりと目をつぶったまま、ペッパーミル・パフォーマンスをしました。」
僕はなけなしの想像力を駆使して組み立てたシミュレーションを伝えてから、こんな誰も幸せにならない悲劇を起こしてはいけない、と奥様に伝えました。すると彼女は「憎しみの連鎖を断ち切るためには多少の犠牲はやむを得ないのよ。少なくとも私はそれで幸せなのよ」と冷酷な様子でつぶやくと、ふたたび天井を見つめたのである。絶対に負けられない戦いがここにはある。(所要時間19分)家族問題についてのエッセイはこちらの本にもありますよ。