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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

歴女の妻が専業主婦にジョブチェンジした。

 僕の妻は歴女だ。戦国時代好きの西軍派。推しメンは石田三成。そんな妻が専業主婦になった。仕事を辞めた理由について妻は「仕事で燃え尽きたくないのです。惜しまれるうちに辞めたい。そして私は私らしい有意義な生き方をしたい」と仕事で真っ白に燃え尽きている名ばかり管理職の僕に言う。最近は高学歴な女性が専業主婦を志向する流れがあると聞いたことがある。そういう時代なのだろう。
 
 
「 いいよ」僕は妻の申し出を認めた。正直、家事の負担が軽くなるのは家事が苦手な僕にとって喜ぶべきことであった。アベノミクスの恩恵で経済的にも楽観視している。僕の賞与は対月給0.07%、今期は赤字間違いなしで、給料は現状維持がやっとといったところ。こうなったら猫の手を借りて藁をもすがって楽観視するしかない。
 
 
「これからは節制していかないといけないよ」「削れるところから削りましょう。私は城を守ります」こうしてまず僕の小遣いが1万円(食費込み/税別)に減らされたのである。妻の小遣いがいくらなのか僕は知らない。知らないほうがいい。
 
  妻が専業主婦になるに伴い、協議のうえ、家事の割り当てを変えた。ほとんどの家事を妻が担当することになった。妻が望んだのだ。
 
  しばらくして妻に変化が現れた。最初の兆候は、世の流れに敏感になったことだ。妻はあまり俗世間に興味がない人間だった。よく言えばぼーっとしている、悪くいえばボケーっとしてるような人柄。もちろん城巡りのように熱くなるときもあるが。
 
   たとえば、最近のトレンドについて「なんたら女子とかなんとかガールとか美魔女とか女子力とかほにゃジョとかそういうキーワードで召喚されちゃう女性は何らかの小さくない問題を抱えてるにちがいないです。私は絶対召喚されはしない!」「美魔女は更年期を隠蔽しているだけよ」と苦言を呈したり、殺人事件について「無職は消毒だ!」「なぜ中年男性がJKと交際できるの?どうして?」と怒りを露わにするようになった。
 
僕は夫だ。男性機能はなくても夫としての役目を果たす。果たさねば。懸命に妻の話を聞き「ほにゃジョはクソだよ。ドロンジョ以外はね」「JKと交際する方法を知っていたらとっくに実践して愛するワイフに教えてる」と妻が望んでいるであろう言葉を返してやる。もっとも妻がどれだけ苛烈な発言をしたところで言い争いにはならない。僕らは反「テラスハウス」で一枚岩だし、プルシェンコがフルチンコに聞こえてしまう妻の滑舌の悪さがその場所の空気を和ませてしまうから。フルチンコ!
 
しばらくして、確かルンバのバッタもんが壊れて動かなくなった頃だと思うけれど、妻にまた別の変化が見られるようになった。僕に対する不満をあらわすようになったのだ。ホワイ?僕はまじめに働いているのに。「もう少しなんとかなりませんか」「これだけですか」と僕の収入についての不満から「愛人100人出来るかな!なんて低い目標を掲げてるからダメなんですよ」「口が臭い。肛門みたい」「フルチンコ!」と僕の男性的な部分についての不満まで妻は口にするようになった。
 
本人も認めているけど仕事ほど時間に追われなくなったので余計なことを考えるようになったらしい。不安と不満。専業主婦は家と家計からそれらに直面している。もしかしたら慣れない専業主婦業、家事に疲れているのかもしれない。申し訳ないと思う。収入や甲斐性については申し訳ないとしか言いようがないが、口の臭いを肛門に喩えられたのは許せないので「君の肛門は臭いのかい?」とだけ返しておいた。
 
僕には妻の苛立ちがわかった。理想の専業主婦像に届かない苛立ち。ネットで槍の通販などの副業をやり習い事をして家事も完璧なスーパー専業主婦。そんなのはまやかしだ。スーパーでなくたっていいのだ。僕は金銭面以外は受け止めなくてはいけない。
 
 
  最近は愛について言及するようになってきたのでもしかしたら危機なのかもしれない。「愛でお金は買えるし、お金で愛は買える。ただレートが人によって違うだけ…」「イケメンと結婚したつもりはない」。悲しいことだ。僕がイケメンでないことが不満なのか、イケメンぶりが結婚後に判明したことが不満なのかわからないけれど。僕は危機を嬉々に変えたい。
 
 
  不穏なことを言うようにもなった。生命保険の証書と契約を確認したあとで「保険料を無駄にしないで」「死ぬまで働いて」。まるで過労死や保険金を望んでいるような言葉に深くキズつく単純な僕を、妻は魔法の言葉で救ってくれる。「誤解しないでオヤカタサマ。保険料が掛け捨てになっても元気でいてくれたらいいの。倒れずに働いてくれれば」
 
だよね。
 
 
僕は簡単だからこれだけで頑張れてしまう。深刻な事態にならないようにするにはあまり深刻に考えないことだ。妻の負担を減らすために家事の分担を見直した。休日の掃除は僕の仕事だ。次の休日も僕は人間ルンバとなって床と世界をさまよう。隅々までゆき届かなくたっていい。
 
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