アベノミクスのおかげで景気は上向き。新たな雇用が創出され、慣れない仕事に頑張っている人もおられるのではないか。とにかくアベノミクス、サイコー!なのである。僕が勤めている食品会社もアベノミクスの恩恵を若干受けており、本当にサイコーで桜満開な春を送らせていただいている。
僕の仕事は法人向け新規開発営業なのだけど、今まで国内出張は行き先が北海道だろうが沖縄だろうが離島だろうが、トップ(社長)の意向により飛行機の使用が禁じられていた。幸い、今日まで尖閣諸島や竹島への出張がなかったので救われていただけだ。
なぜトップが飛行機の使用を禁止していたのか?諸説あるが「かつて搭乗した飛行機が乱気流に巻き込まれ、大変恐ろしい思いをしたトップが従業員に同じ思いをさせたくないから」というのが公式見解となっている。実のところは従業員に自分の頭の上を飛ばれるのが我慢ならないらしい。誤解を恐れずにいうならば…いや、クビがこわいからいうのはやめておこう。
だが、アベノミクスの恩恵で株で大儲けしトップの懐が緩くなったことにより、ついに、ついに弊社でも飛行機移動が解禁された。アベノミクス、サイコー!
仕事の面でもアベノミクス様々、お陰様で年初から有名ホテルチェーンのレストランのプロデュースを任されるようになった。アベノミクス、サイコー!と安倍晋三首相を称えて○国神社に向かって叫ぶほか喜びを表す手段がない(○は富田靖子の靖)。
ところがである。アベノミクス、サイコー!なのは弊社だけであるはずがない。つーか周りの業界または競合他社の方が遥かにアベノミクス、サイコーの超好景気だったりする。その結果、件のホテルのレストランはいくら求人をかけても人が集まらないでいる。
元々、外食産業はブラックというか、一段低くみられる傾向があって、景気が悪いときは人を集められるのだけど、いざ景気が上向きになると他業種に流れて人を集めることに難儀する。
僕は十年以上今の業界にいるけど、今回の景気上向きによる求人の不調は尋常ではない。件のホテルなどは欠員というかホールスタッフ全コケ。具体的には15人欠。最悪なのは、1人決まってもローテーションが組めない状況を悲観してその人の携帯は採用2日目から着信拒否。そんな着信拒否をする人がもう3人。アベノミクス、サイコー…。
その上サイコーなのは4月からの消費税増税に伴う値上げと、昨今の「外食控えよ…」ムードが原因と思しき、件のレストランの売上の不振である。求人総コケで募集費もうなぎのぼり。アベノミクス、サイコー…。
現在、当該レストランの欠員を埋めるために本社スタッフが総動員されている。パートの仕事ホールスタッフを五十歳のおっさん重役がやっている。おっさんしかいない時間帯もある。そんな仁丹臭いレストランをナウい女性が使うだろうか?やれやれだ。
もちろん営業の僕も動員されている。「君はまだまだ若いから」つって普段は加齢臭加齢臭いわれているのに、こういうときだけ若者扱いされるも納得いかない。そういうわけで僕は毎朝5時からホテルのレストランで働いている。
本社スタッフの動員は若い社員からなされたのだけれど、たとえば昨秋、「外食業界で働くのが私の夢でした」と面接で目を輝かせて語り中途入社してきた若手女性社員など、人情紙風船というかドライというか冷たいもので、動員を持ちかけるや否や「なんでまだ若い私が、アベノミクスで様々な業界からの求人が溢れているのに外食産業なんかで、しかも朝5時から働かなきゃいけないのですか!」と吐き捨てるように言い、その場で速攻退職。アベノミクス、サイコー…。
余談であるが彼女のあとを受けて営業課長の僕がネスカフェアンバサダーに就任したことをこの場を借りて申し上げておく。
そんなアベノミクスサイコー!アンバサダー就任な状況で僕も朝5時から休日もなく働いている次第なのである。ツラい。「早くから働いているのだから早く帰ればいいだけだろう。ボケ」と仰る聡明な方もおられるだろうけれども僕の本業は新規開発営業。ノルマに追われる悲しき生き物。休めばノルマを達成出来ず減給、それに伴う生活苦、そして離婚、重くのしかかる慰謝料の負担。
そのような悲劇を回避するため、僕は午前中のレストランで嘘臭い笑顔を振りまき、午後からは一転、髭の伸びた小汚い顔で営業活動、嘘臭い言葉を並べるのである。
飛行機が解禁されたの不幸中の幸いだ。来週の出張は中国地方。飛行機が使えるので移動時間は減少、負担も軽減。日帰りも可能だ。アベノミクスのおかげで出張の負担が大幅に減少!そんな僕の来週のワークスケジュールは以下のとおり、月曜5~19時/火曜 日帰り出張(中国地方)帰宅予定23時/水曜5~19時/木曜5~19時/金曜5~19時/土曜5~13時/日曜9時~13時。軽く死ぬね。アベノミクス、サイコー!○国に向かって安倍晋三首相の顔を思い浮かべて僕は頭を垂れるばかりなのである。
現在4月10日21時半。疲労困憊の体に鞭打ってブログを書いているのはアベノミクスで超サイコーな方に経済的に救っていただきたいという浅ましい考えからの行動である。この状態が続くようなら営業ノルマの達成は厳しく、減給を免れないと思われるので。
フミコフミオ四十歳。このようなくだらない文章を四十分で書くことしか出来ませんが、お仕事の依頼をお待ちしております。何卒、何卒。