Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「YAZAWAの勘」のスゴさについて。

こんな記事を読んだ。ロックンローラー矢沢永吉さんがチケットを完全電子化するらしい。なぜ?という問いにYAZAWAは「勘」と即答したという内容だ。

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僕はこれは全人類にとっての教訓になる!といたく感動したのだけれど、妻は「ただの勘ですよね…」とピンとこなかったご様子。そこで僕が「YAZAWAの勘」がどう凄くて教訓になるのか妻にプレゼンをした。これはそのときの話のまとめである。

先ほども述べたが、この記事を読んで、僕はYAZAWAのロックな姿勢に感動した。見習いたいと思った。同時に、「YAZAWAのように俺たちも【勘】で動けばウマくいくのだ!」と勘違いする人も少なからずいるだろうな、とも思った。勘をただの思いつきと誤解している人たちである。おそらく妻もそうだ。だがそれは違う。「勘」の一言でまとめてしまっているが、YAZAWAは1.問題(「チケットを欲しい人がいても不正をする不届き者のせいで手に入れられない」)を見つけて2.解決「じゃあチケット全部電子化しちゃおうよ」という実に合理的な考え方で電子化を決めている。この決断と解決の導き方は極めて普通で、普通な僕たちでも導き出せる答えであり、天才性は感じられない。YAZAWAの凄さ、天才性はその決断のスピードにある。インタビューにおいてYAZAWAが「勘」と呼んでいたもの。なぜ勘で行動することができたのか。その背景を考えてみたい。

何か問題が発生したときに、その解決が遅くなってしまう理由には大きく分けて二つある。ひとつは知識不足や経験不足からの不安によるもの。未経験のトラブルに遭遇したとき、「難しそう」「わからない」という理由で判断が遅れてしまったことは誰でもあるのではないか。もうひとつは知識や経験が足かせになって素早い判断が出来なくなってしまうものだ。たとえばクライアントから近々の納期を提示されたときに過去の経験から「きっつー」と思って躊躇してしまったり、JDから告白されても「ハニートラップかもしれない」と身を構えてしまった経験がないだろうか。図にするとこんな感じ。

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一般人の場合

YAZAWAの場合はどうだろう。彼はインタビューの中で《IT技術には詳しくない》と述べている。先ほど述べたとおり、知識がなかったり、経験がなかったりすると、決めることができなかったり遅くなってタイミングを逸してしまうことが往々にしてあるがYAZAWAは違う。やっちゃうのだ。図にするとこうである。

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YAZAWAの場合

経験不足や知識不足を言い訳にせず、YAZAWAは障害を越えてピンポイントで解決にいたっている。まるでジャンプするように、だ。

なぜジャンプすることが出来るのか。それは問題の本質をつかんでいるからである。《チケットの電子化についての知識はなかった。だが勘で決めた》という文脈の裏にはYAZAWAがチケットの電子化によってファンにもたらされるメリットとデメリットを、それが直感によるものなのか、多少の知識があったからはわからないけれど、ほぼ完全に把握していた事実の存在が読み取れるのである。詳細な知識がないのを恐れない。経験に縛られない。それがYAZAWAの勘であるが、そのベースには問題を正確に把握する能力がうかがえるのだ。

もうひとつ、これは僕がもっとも参考にしたいところなのだけど、問題解決の優先順位のつけ方もYAZAWAの勘の凄さだと思う。YAZAWAはまずチケットを買えないでいるファンを第一に考えて解決を導き出している。我々は知識や経験不足を言い訳にしたり、経験や知識が足かせになったりしない。導入にあたって予想されるトラブルや面倒は後回しにして決めてしまう。いってみれば顧客ファースト。これはブレない。僕は今管理職で、顧客ファーストという視点は忘れないよう、スタッフには話をしている。正確には「【自分都合の】【顧客目線で】案件に取り組む」だけれど、ついつい自分都合に重きを置きすぎてしまいがちなので、YAZAWAの勘は顧客ファーストの教訓として非常に参考になった。

YAZAWAが顧客ファーストの解決へジャンプできた理由。それはインタビューからも垣間見えるように、ライブを大切にしているからだ。つまり現場の声を聞く耳を持っているからだ。僕は今44才で、仕事において現場の声を聞く、現場を知ることの大切さを重々承知しているつもりだけれど、様々な経験をしているせいで、知らず知らずのうちに現場の声にバイアスをかけてしまっている気がする。自分都合に。69才、ロックの年齢になっても、現場のファンの声を聞き逃さない耳。それを維持しつづけることはなかなか出来ないと思われるが見習いたいものだ。

「YAZAWAの勘」の凄さは、現場を大事にすること、顧客ファースト、問題の正確な把握という誰にでも通じるが、おろそかになりがちなことを「勘」のひとことで軽やかにやってしまっている点にある。やっちゃえは伊達じゃないのだ。(所要時間22分)