Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

そのときは妻によろしく


 妻を呼び捨てたことがない。「シノ!」と言うや否や照れくさい感が充満してきて「シノさん…」あるいは「ノッピー☆…」と言い直す始末。なんか恥ずかしいんだぜ、呼び捨てなんてロックの歌詞みたいなんだぜ、真顔で呼び捨てなんてロックンローラーみたいなんだぜとロックな人のような語尾で言い訳をしながら行きつけの飲み屋でひとり、生ビール中ジョッキ、冷酒、焼酎、ウイスキー、醤油などをがぶがぶ飲んでいるといつしか尿意常時。席が暖まる間もなく便所便所便所。インポテンツで役立たずの竿を握りしめ用を足すたびに、便所の窓から、ネオンに照らされ闇のパープルアイのような二対の淡い光になった男女が、迷いなく、きゅっきゅとターンしてラブホテルに入っていくさまが否応なく視界に入ってきて、そのたびに僕は、いいなぁ、と呟き、唾を吐いた。それから残尿感そのものが形になったものを握り締めてめそめそ小便器の前で泣いた。

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