第一話(http://d.hatena.ne.jp/Delete_All/20100416#1271388564)
「カマボコから手ぬぐいまで」なんて古くさい社是を掲げる我が社にツイッターが導入されてから二週間が過ぎた。部長の気に障る発言は出来ないので、早くも廃れようとしていた。このままなくなる、会社の誰もがそう思っていた。ところが、今朝、部長が突如、
「ツイッターを見たか?」
大きな声を出した。営業部の全員がツイッターをチェックしていなかった。一斉にログインして部長のつぶやきをチェック。
部長は
顧客の文句や極秘事項を朝一番に呟いていた。解釈は間違っているが、部長は企業にとって有意義な情報をツイッターを利用して告知しようとしたらしい。信じられないことに、部長は、翌日先方に提出する見積もり金額や得意先の受付嬢の評価まで呟いていた。
これはないだろう、営業部は一丸となって、部長を問い詰めた。
部長、何を考えているのですか。部長、やって良いことと悪いことがあるのがわからないのですか。社外秘を漏らした奴は死ね、部長ご自分の発言をもうお忘れか。俺ちょっとトイレ行ってくる。営業部のメンバーは部長へ非難の集中砲火をあびせた。
すると、部長は
逆ギレして、自分に都合の悪い発言をする人間を片っ端からリムーブしていった。部長の発言は基本、ひらがななのでファミコン時代のドラゴンクエストのようであった。僕はいの一番にリムーブされた。
一時間後、営業部のメンバーは全員部長からリムーブされた。リムーブされると、多少は気持ちがへこむものだけど、部長にリムーブされた僕らはそうじゃなかった。ラッキーっていうか。自由っていう感じ。ひとことで言えば、大歓迎。
部長はツイッターの世界でひとりになった。すると部長は、
どうやら、自分をおそれて静かになったと勘違いしたらしく、たったひとりで意味のわからない発言を始めた。その様子を僕らはずっと眺めていた。
当初、営業部のメンバーのあいだでは、このような
良心の呵責から部長を気遣う呟きも最初は見られたが、部長の
発言をみているうちに、そういう部長を思いやる発言は消えていき…、
結局、
ごく自然なやりとりが行われるようになった。
こういった今日のやりとりのすべてが顔のみえる営業部のデスク上で行われたことが、なんともやりきれない。
この厳しい情勢のなかで僕の会社が生き抜けるとは到底思えない。