Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

結婚祝いでトラブってる


 過日。部長から結婚祝いにスーツを買ってやるといわれた。スーツは中10日のローテーションで回せるくらいは所有しているので特別困っているわけではないが、あればあるだけ嬉しいもの、喜んで話を受けた。すると部長が色々と条件を出してきた。うぜー。(1)指定した紳士服量販店で購入すること。(2)その店の二着目一円サービスを利用してスーツ二着を買うこと。(3)予算は三万円以内。(4)立て替えてレシートを持ってくること。

 なんだか面倒だ。断ろう。「ありがたいお話ですが…」と切り出すと「得難い上司です…か。世辞だけは一人前だな…」とわけのわからないことを言い、まるで聞く耳をもたない。それから部長は「なんて部下思いの男なんだー!!」と他人事のように叫ぶと、囁くように、スーツが痛むから雨に濡らさないようにしろ…、直射日光をあてないようにしろ…、食べ物をこぼさないようにしろ…、などとアメリカ映画「グレムリン」を連想させるような注意を僕に与えた。うざい。


 いわれたとおりに量販店でスーツを買った。二着で29800円足す1円。29801円。スソ直しの分2000円を足して〆て32000円ほどのレシートを部長に渡した。2000円オーバー。「仕事の出来ねえ奴の法則第一は予算が守れないことだ…」とイヤミをいいながら三枚の万札を僕に渡した。足りない。「足りないのですが」。軽い気持ちで言った瞬間に後悔した。部長の顔から表情が消えていた。「裾を直すから余計な金がかかる…ボールは汗はかかないという言葉は知っているか?」。疲れるので「いえ」。「努力すると汗が出るという意味だ」。ボール関係なくね?部長は続ける。「俺ならハサミで一発だ…コスト意識がねぇヤツはこうしてこうしてこうしてやる」。部長は雄叫びをあげながらタバコを灰皿で押し潰していった。こんなふうに僕は僕の結婚祝いを嫌な気持ちで受け取った。


 何日か経って経理部長が僕のところに飛んできた。話をきくとウチの部長が妙なレシートを経費として落としたらしい。まさか、と思ったらそのまさかあのスーツのレシート。経理部長にレシートの経緯について説明するとと経理部長はこういうの困るんだよなぁ何とかしてくれと肩を落とした。


 ふざけんじゃねえ。何が結婚祝いだ。どこが俺は部下思いのいい上司だあああ!だ。せこい。せこすぎる。経費で結婚祝いと部下の指示を買うなよ。部長席に向かった。詰問した。すると部長は席についたまま目をとじた。浅黒くゴルフ焼けした薄毛の頭は僕に道に落ちている犬の糞を想わせた。路肩にある犬の糞に毛がからまっているのはなぜなんだろうと哲学していると部長が目を見開いた。


 「貴様のスーツ…経費で落とせないようだ…」「でしょうね」「そこでだ」「なんでしょう?」胸騒ぎがした。「連帯責任だ…ワリカンってことにしよう。男同士腹を割ってワリカンだ…」 貴様に恥は、プライドはないのか、テメエの血は何色だ?もう関わりたくないので全然納得できないけど了解した。逃げたい。半額分を支払い撤退しようとすると「待て」と部長が言う。それから部長は「二着のうち一着は俺のものだ。腹を割ってワリカンだからな…」と信じられないことを言うと机の上に一円を置き「スーツ代だ…一円が欲しいか?惜しいか?受け取るか?一円ごときをよぉ」と続けた。糞が。


 経理部長に経過を報告した。「えっ!」と驚く経理マン。なんでそんなに驚くのかしらん。ちゃんと処理してきたのにーとライトな感覚で話をして数分後、「えっ!」と営業マンの僕が驚いた。経理部長は「処理」したそうだ。犬糞部長のあのレシートは経費として処理されたということ。全額部長には支払われたというわけ。自分の結婚祝いを自分で買うはめになった僕は会社と部下を欺き私腹を肥やした上司への復讐について考えている。今度は戦争だ。って意気込んでみたけど実際、どうすればいいんだろ?


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