Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

楽な勝ち方よりうまい負け方を教えてくれ。

キズつくのを極度に恐れるガラスの四十代の僕には勝ち方よりも負け方が超重要。知りたいのは、上手な負け方、ダメージを最小限に抑える負け方だが、それらを求めて書店のビジネス本や自己啓発本コーナーを眺めても、たとえば紀州のドン・ファンのように勝った人間の語る勝つ方法ばかりで、お目当てのものは見つからない。せいぜい負けからの奇跡の大逆転勝利ストーリー。稀に自虐的に負けた経験を語る人もいるが、それらは「ビジネスで負けるの正直きっつー…でも僕は人生に負けずに明るく生きていくよ」的な浪花節で、うまい負け方をレクチャーするものではない。「しくじり先生」というテレビ番組も似たようなものだ。身も蓋もないことをいえば、勝つときは何もせずとも勝つのだ。競合ライバルが勝手に自滅したりして。サクセス本というのは本質的にはどれも同じで、これこれをやったから勝ったという体裁こそ取っているが、勝てば官軍といわれるように内容は勝ったから言えるだけのこと。そもそもビジネス本を出すような面白経歴と能力を持つスーパーマンたちの勝利メソッドが一般人にそのまま適用できるはずがない。読む価値はない。と断言すると付き合いのある出版社から仕事を切られて難儀するので、断言はしない。読む価値なくはないよ。上下2巻構成にして、上巻で期限設定した施策を公表して、期限到来後に刊行される下巻で結果と分析を掲載するならね。下巻の刊行が諸事情により見送られることがなければいいけれども。では、なぜ負けたときに傷つくのか。負け方を教えられていない僕らは、その負けの大部分を自分の責任と捉えてしまいがちだからだ。もちろん負ける原因となった失敗については反省しなければならない。だが負けるというのは相手との兼ね合いもある。実際の割合は知らないが、勝負は運9割実力1割の結果だと思えばいいのではないか。負けてしまったけれど、実力の占める割合など1割と気楽にとらえ、その1割にベストを尽くしたかどうかで判断をすればいい。それが過度に傷つかない、ダメージコントロールの効いた、うまい負け方につながるのではないだろうか。勝ち組の皆様はおそらく9割はご自分の実力と才能と努力の結果だととらえていて、だからこそ編集者から「貴兄の成功体験をフィードバックして世の中の財産にしましょう」とそそのかされて勝つ方法的な書籍をご自分の手あるいはゴーストライターの手で執筆されているのだとは容易に推測できるのでございますが、ここはひとつ「勝ったのは要因の9割を占める運に恵まれただけでございます」という謙虚なスタンスを取っていただき、「発信力を身につけよう!」「自分ブランド化!」「気づきに感謝!」「体験を共有!」等々の薄気味悪い発言連発の書籍の発売を控えていただければ、紙資源の節約にもなり、大変ありがたい。あとこれらは意識の持ち方の問題なので「負けたけど僕チンの実力や努力なんてその1割しか占めてないよー。敗北を知りたい」などとかつての僕のように日本語に仕立ててて発声すると間違いなく白い目で見られるので、敗北が明らかになった当日くらいは茫然自失な雰囲気を演出するのは忘れないでもらいたい。(所要時間14分)