Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

会社上層部に丸一日マンマークで仕事を観察されて地獄だった。

 会社上層部四天王に一日マンマークされて死にかけた。嫌な予感はしていた。「社員ひとりひとりが経営者意識を持ってほしい。皆さんとは待遇と立場が違うだけで目指す方向性は一緒です」と激ヤバ発言を繰り返していた会社上層部が、方針転換したのだろうね、先日の朝礼で「我々役員も立場と待遇の違いを越えてイチ社員の仕事をすることが大事」と根本的に間違った現場第一主義発言をしていたからだ。社員ひとりひとり経営者意識発言の時点でヤバかったのが、更にダウングレードされた感が凄かった。会社上層部四天王は、金融機関からの出向を経て取締役になっているため、ウチの業界(食品業界)のことを知らない。仕事もわからなければ、コネクションもない。プライドが高いので知ろうともしない。NAI・NAI・60(60代)なのである。

 クソ現場第一主義の一環で、四天王四番目の男、通称四番(ヨンバン)が抜き打ちで僕に密着マークをすることになった。「私に見られて困ることでもあるのかな」と挑発してくるのでカードリーダーで奴のバーコード頭をスキャンしてやりたい衝動にかられた。マンマークをされるとは思ってはいなかったが覚悟を決めた。まずは朝のミニ・ミーティング。営業部メンバーが集まって進捗状況確認と情報共有をしてから、車で出発。なお、四番は背後霊のように無言でミーティングルームの壁に背を預けて立っていた。不気味だった。

午前中は短めの商談を二つ。二つとも新商品サンプルに対する意見のヒアリングと、次四半期の受注に向けてのセールスという通常の営業。後の顧客とは来春始める予定の店舗のプロポーザルの前提条件の不明な点の確認もあった。四番は無知なので無知がバレないようすべてわかっているんだ風の達観した表情を浮かべ、僕と顧客担当者の会話に参加せず、声を発する方向にいちいち顔を向けてうなずいていた。挨拶以外は無言。アホみたいだった。商談をふたつ終えると四番は「よしっ昼休みだ!休憩しよう」と一仕事終えた感を醸し出していた。午前11時半だった。イチ社員の昼休みは12時からである。仕事終わってないよ。午後の仕事に備えて、サンプルを補充するため倉庫に寄る必要があった。「えーっ!」と四番が不満そうな顔をするのを無視して倉庫へゴー。「ボーイスカウトの面倒を見るのはごめんだぜ!」とハリウッド映画みたいな台詞が口をついて出そうだ。つか、本社の近くにあった倉庫を、経費削減で廃止したのはおたくら上層部ですよ。倉庫での積み込み作業も「暑い。暑すぎる」「休憩しないとやっていられん」と文句ばかり言って役に立たないので「休んでいてください」といって休憩を取らせた。

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で、昼休み。「蕎麦屋でも行くか―」と四番がふざけたことを言っているのを無視して、コンビニで「かにパン」を購入して車中でランチを済ませた。四番はデミグラスハンバーグ弁当を買って食べていた。13時にアポがあったので車で移動。「まだ休憩時間は終わっていないぞー」と四番は声をあげていた。いちいちうるさいので「休んでいてください」と言った。午後の商談は2件。新商品サンプルを持ち込んでの提案営業、社会福祉法人本部で8月に実施されるプロポーザル入札の資料受領と打ち合わせ。四番は、午前中同様に薄気味悪い笑みをうかべて、音のする方向に向かって頷いていた。ガストの配達ネコロボットの方が百倍役に立つだろう。

15時。「本日の商談はこれで終わりです」と告げると「充実した一日だった」と四番が言う。「充実」の言葉の意味が僕の世代とは違うようだ。僕はそれを無視して「休んでいてください」と告げ、車中でパソコンを開いてメールを確認。客先と部下からのメールに対応。30分経過。四番は缶コーヒーを飲みながら「休憩、休憩」とつぶやいていた。事務作業が終わったことを告げると休憩していた四番が「休憩をしよう。さすがに働きすぎだ」と言う。それを無視して「市役所へ行って、各福祉課と産業振興課で情報収集をします」と告げた。どれだけ休めば気が済むのだろうか。市役所の駐車場に「休憩」しか言わなくなった四番に「休んでいてください」と言い残して単独でタスクをこなした。16時半。クソ暑いなか駐車場に戻ると、四番はキンキンに冷やした車中で昼寝をしていた。これが上層部の考えたイチ社員の仕事なのだろうか。なめている。

車で本社に戻る途中の車内で四番が「今日は私が来るから特別仕事を詰めたのだろう?」などとアホなことをいうので冷静に「抜き打ちで来られたから細工は出来ませんよ。アポ相手もいるわけですしね。あと、今日の仕事は平均よりやや楽でしたね。通常なら帰社してから提案書や見積書作成をしなければならないので。今日は部下が作成した提案書のチェックとチームの一日の活動を軽くチェックするだけですので、楽ですね」と返しておいた。四番の「どこかでお茶でもして帰ろう」という言葉を無視して会社に帰った。会社でのデスクワークも背後霊のように後ろに立って観察するつもりなのかと恐れていたが、四番とはその日はそれきりだった。

翌日朝、会社上層部が打ち合わせをしていた。四番は僕の仕事ぶりを四天王に報告していたようだ。夕方、四番がやってきて「キミの仕事ぶりを観察させてもらって、キミの仕事ぶりはまだまだ余裕があると報告しておいたよ。サボってはいないが休憩が多すぎる」と言い、次の役員会で問題になるかもしれないね、と警告してきた。嫌な予感は的中した。事実捏造。抜き打ちで仕事をチェックするという既成事実から、営業部長の僕の仕事ぶりに難癖をつけることが目的だったのだ。おそらく、僕が上げた営業部増員のための予算案が、経費削減を掲げる会社上層部の気に召さなかったのだろう。

まさかこんな地獄になるとは。でも僕には地獄の底辺会社員生活をサバイブしてきた経験と悪知恵があった。金融機関の天下り風情にやられてたまるか。「昨日の取締役の視察は終始ICレコーダーで録音させていただきました。私がサボっているか聴いてもらえばわかります。もちろん、私の『取締役は休んでいてください』もばっちり撮れていますよ。次回の幹部会議で参考資料として社長に提出させていただきますねー。いい経験になりましたー」と僕が言うと四番は絶句して死にかけていた。さすが四天王最弱の男だ。その後、会社上層部のなかで「四番がやられたようだな…」「奴は四天王の中でも最弱…」「営業部長に負けるとは上層部の面汚しよ…」というやり取りがなされたのか、僕は知りませーん。(所要時間35分)