脱サラ、脱サラ、脱サラと日々唱和しているので、フィーリングやノリで言っているような印象を与えているかもしれないが、僕の脱サラは思い付きではない。10年前に立案され、着実に実行されてきた計画である。暴走ではない。家族のコンセンサスも得ている。当時、奥様から出された条件は一つ。「現在の生活レベル=収入を維持すること」それだけだ。僕は会社員だ。営業職として28年間働いてきた。その間、会社というクソつまらない仕組みに迎合し、主任、課長、部長という役職についてきた。脱サラの条件は、(A)本業の収入(会社員としての収入)より多くの(B)副収入(B)があればオッケーというものであった。つまり「A<<B」である。
10年前、脱サラを目指して副業を始めた。メディアからの執筆のオファーを受けるようになった。これまでずっと途絶えることなく続いている。並行していくつかの書籍も出版した。先祖代々の不動産も貸しはじめた。副業で生活費はまかなえるようになった。だが不動産収入は、立地的に難しく無駄に大きな物件という要因もあり、安定して借り手がつかなかった。2件プラス1件(物置)あっていずれかが決まると、いずれかが出てしまう状態。また、リフォームの必要が出てきてしまったりして、安定しなかったのだ。簡単にまとめると「A>BときどきA=B」である。この不動産関係がようやく、落ち着いた。借り手が見つかったのだ。これら副業の収入を全部足すと、本業の収入を余裕で超える。つまり10年前に脱サラの条件として出されていたものをクリアしたのである。抜けや落ち度がないか確認をした。間違いない。「A<<B」達成。やった。
脱サラするだけであり、フリーランス、あるいはシルバー人材センターに登録して何らかの仕事はするつもりである。「仕事もしないで、ごろごろ家で寝てばかり!この怠け者が!」と非難されるいわれもない。天下10年の計が成立したことを奥様に告げた。「がんばったね。キミ」彼女は労ってくれた。天国である。だが、その直後に「でも全然足りないよ」と告げて僕を地獄に落としてくれた。なぜだ。おかしい。生活レベル=収入を落とさないという条件は間違いなくクリアしているはずだったが、そもそも生活レベル=収入の認識に相違があった。彼女のいう現時点の生活レベル=収入とは、その時点での本業と副業の収入の合計額を指していた。つまり、本業と副業の収入額を圧倒的に超える新たな収入(C)が確約されるのであれば、サラリーマンを辞めてもいいと言うことであった。「(A + B)<<<<<<C」である。無慈悲だ。
本業の収入を超える副収入があって、今と変わらない生活ができれば脱サラオッケー(^^)/という僕の認識とは微妙に異なっていた。僕が副業を頑張れば頑張るほど脱サラへの道はさらに険しくなっていたのだ。知らず知らずのうちにハードルを上げていたのである。きっつー。新たな未知の仕事(収入源)がどーんと現れて現時点の総収入を超えなければならない。この10年間の副業収入アップの取り組みは全くの無駄であったと言うことになる。こんな悲劇があるだろうか。仕事では、数値で、定量的にとらえなければダメだと言っていながら、私生活の目標設定がクソみたいに定性的でありすぎた。このままでは宝くじに当たるとか、新著が世界的ベストセラーにならないかぎり脱サラできない。僕は50歳。定年退職まで働きつづけるという諦念が波のようにひたひたと押し寄せてきて溺れかけている。(所要時間18分)