Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

若手に頼みごとをしたら「これは仕事ですか?」と言い返されました。

人間は自分の聞きたいことしか聞かない生き物だとあらためて思う出来事があった。隣の部署に所属する比較的若手の社員が、以前から交際していた女性と結婚すると報告してきたのだ。挙式はやらないらしい。で、同僚の皆さまと飲んでいるとき、ささやかながら彼のお祝いのパーティーをやろうではないか、来月12月は忘年会もあるから11月中に、という話になり、賛成する強い理由はないが、反対する理由も特にないので、なんとなく、いいね、いいねと中ジョッキを傾けていたら、どうぞ、どうぞ、って感じで幹事になっていた。

数日後、「祝!比較的若手氏結婚!」と毎日顔を合わせている本社スタッフ全員にパーティーをアナウンスした。比較的若手氏には本社メンバー全員に声をかけると告げた。大失敗であった。「申し訳ないですが…」といって欠席表明する人が続出したのだ。寂しい気持ちになった。なぜ、仲間の門出を喜べないのか。ワン・チームじゃないのか。必死だった。比較的若手氏のためではなく、幹事失格の烙印を押されたくなかった。僕を愕然とさせたのは断られた事実よりも「部長、これは仕事ですか?」と言われたこと。「コレハ業務命令デスカ」と僕には聞こえた。仲間の結婚パーティー、イヤだけれど業務命令なら従いますよ、という従順の皮を被った拒否であった。内心では、半分仕事みたいなものだと思っていても、昭和時代ではあるまいし、この令和の時代に「仕事だよ」つって強制できるはずがない。ましてやウチの会社は時間外労働ゼロを目標にしている。

なぜ、比較的若手氏の結婚を祝えないのか。それほど良いヤツではないかもしれないが、猛烈にイヤなヤツでもない。謎すぎる。比較的若手氏と同年代の社員何人かに質問してみた。総合すると、比較的若手氏は、陰口をしている相手と陰口の対象の関係性を考えずに陰口を叩くのでイヤな気分になる、付き合っていると人間関係が壊れる、だから仕事以外では付き合いたくない、ということであった。「仕事ではないけれども、円滑に仕事をすすめるための準仕事だと思って参加してよ」と食い下がっていると、とある若手の1人から「部長も言われてますよ」と気になるひとこと。「何を」「悪口」「嘘。絡みないんだけど」「聞きたいですか」「うん。やめとく」きっつー。

聞きたくないものは聞きたくない。聞きたい話だけを聞きたい。好き嫌いを職場に持ち込むのはやめろと常日頃から言っているが、僕も血の流れている人間。悪口を言っているような人間のためにわざわざアクションしようとは思わない。だから「部長、これは仕事ですか」という態度には「仕事じゃないから無理に参加しなくていいよー」「こっちでうまくやっとくわー」と対応した。そもそも幹事は仕事ではない。ノルマもない。ねえ?神様。

結局、参加者は僕を含めて数名であった。比較的若手氏には本社メンバー全員を誘ったと言ってしまった手前、この惨状をどう本人に伝えればいいか、令和元年11月14日18時すぎのデスクで僕は頭を抱えてしまった。正直にチミの人望がないからだと告げるべきか。それとも君の結婚を祝うことより重大な用事があるらしいよと忖度すべきか。出たとこ勝負と心を決め、比較的若手氏が帰ろうとするところをつかまえ「パーティーの件、参ったよ」と声をかけた。ノー・プラン。だが僕も営業畑で生きてきた男。相手の反応にあわせて対応する。そう。いつだってそうだった。アドリブだった。ノリだった。何とかなる。進学も結婚もその場で決めた。そして後悔した。我が人生にいっぱいの悔いあり。いまさら悔いのひとつふたつ増えたところでたいして変わらんさ。

「だと思いましたよ」比較的若手氏はそういって笑った。まさか、こいつ人望の無さを自覚しているのか。だとしたら大人物だ。「月内に本社のメンバー50人近くが入る会場を押さえるのは今からじゃ難しいでしょう」「ちがう」「いいんですよ気をつかわなくて」「ちが」「来月、忘年会の席で皆さんに祝っていただくということでいかがですか。その方が私も気が楽です。ではそういうことで」比較的若手氏はそれだけ言って去っていった。彼もまた自分が聞きたい話だけ聞きたい人間のようである。それから僕は「このたびは私のために」と挨拶する上機嫌な比較的若手氏と、し~んと静まり返った面々、悲惨な忘年会を想像して胃が痛くなってきてしまう。きっつー。「これは仕事ですか」なんて甘すぎる、こんなの仕事だと思わないとやっていられないよ。マジで。(所要時間22分)会社員生き方本を書きました→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。