Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

新型コロナとの戦いは人間の弱さとの戦いかもしれない。

午後3時、在宅で働いていると社長から連絡があった。話を要約すると、「弊社従業員の家族の近くで新型コロナ感染者が出て、現場が混乱している。クライアントの信頼を失って、担当事業部長が対応に苦労しているから手を貸してくれ」

午後4時現着。現場は弊社が食事提供を行っている施設。対応している弊社事業部長に話を訊く。今朝出勤してきたパートスタッフ(女性)の「飲食店で働く父親の同僚が検査の結果、新型コロナに感染した。父親に濃厚接触の疑いがある」という話を現場責任者から報告を受け、当該パート(症状なし)を家に帰らせるよう指示をしたあと、速やかにクライアントに連絡を入れたとのこと。
対応は間違っていない。当該パートは厨房従事者用の駐車場で帰宅させたので施設内には入っていない。厨房内の拭きあげ消毒作業も終えている。なぜこれがクライアントの信頼を失う結果になるのか、わからなかった。後に確認ミスが発覚する。今振り返れば、客先と話す前に、新型コロナの危険性が周知されているのに、パートスタッフが出勤して、責任者に口頭で連絡をした事実に、もっと注意を払えばよかった。

午後4時半。クライアントの担当者に時間を割いてもらい状況を確認する。事業部長は僕に教えてくれた内容を担当者にそのまま伝えていた。にもかかわらず担当者は「御社は信用できない」と憤慨していた。クライアント担当者は報告を受けた際、パートスタッフを濃厚接触者と解釈して、消毒作業と人員の入れ替えを要請した。弊社事業部長は快諾。ところが、しばらくしてから、事業部長から「急なことなので人員の総入れ替えは難しい」という申出があった。担当者は「緊急なので、サービスが提供されれば、内容が多少変わっていても構わない」と譲歩したが「人員の入れ替えは出来ない」と再度いわれ、最終的に「パートスタッフは父親と同居していないので対応する必要はない」と説明が二転三転したのでたまらず社長に連絡を入れた、というのが顛末であった。僕が事業部長から聞いた話と食い違っている。おいおいである。

午後5時半。一度退出してもういちど事実を確認する。情報を整理すると「当該パートスタッフは父親と同居していない、正月から顔をあわせていない」「新型コロナに感染したのは父親の同僚」「父親には濃厚接触の疑いがある(確定はしていない)」「パートスタッフは濃厚接触していない」になる。ノー接触だからパートスタッフは出勤してきたのだ。最初に僕が覚えた違和感のもとはそれであった。

では、なぜ、事実をそのまま報告しなかったのか。問題はそこだ。弊社事業部長に尋ねた。「最初の報告の段階で、パートと父親は同居しているという先入観をもって話をしてしまった」と彼は答えた。それから彼は「同居の事実がないことを知ったときには、相手がナーバスになって聞く耳を持たなかった」と続けた。相手がナーバス、は主観と自己弁護だろう。クライアントの目線でみれば、人員を出せないから事実を捻じ曲げたように見えても仕方がない。こうして長年かけて築き上げた信頼はいとも簡単に失われていくのだ。

「濃厚接触者と同居しているか否か」 たったこれだけの確認がなぜ出来なかったのか。いろいろ原因は考えられるけれど、いちばん大きなものは、新型コロナという脅威を前にして冷静さを失ってしまったからではないだろうか。見えない敵を相手に、緊張が続いていて、過敏になりすぎている。もっとも「濃厚接触者は存在しない」と後出しジャンケンをしてクライアントからの信頼を失ったことは非難されてしかるべきだが。

弊社事業部長だけではない。クライアントの担当者も事実関係を再確認するタイミングはあったはずだ(言えないけど)。彼も冷静さを欠いて、利用者とその家族に連絡を入れて対応を約束した以上、「従業員名簿に濃厚接触者はいませんでした、いませんでした」と言えなくなってしまったのではないか。みんなコロナ疲れしている。でも、こんな状況だからこそ、冷静であることを意識しなければならない。僕は15才も年上の事業部長に「確実に情報を確認してから対応してください。先入観はやめてください」と注意した。

午後7時。クライアントに人員の入れ替えと書面での事情説明を約束してから帰宅。仮眠。午後11時半。自宅で報告書を作成しながら、「自分なら事実を確認してから相手に報告して大事にはせずに鎮火できただろうな…」と想像しているうちに、ふと気づいた。そもそも今回の件は、相手に報告する必要がない。そうだろう?濃厚接触した人は存在しないのだ。新型コロナを前にしても冷静であるよう努めましょう、と偉そうに言っている僕も冷静さを欠いていた。きっつー。 

この状況は長期化しそうなので、無理せずに対応できるようにしていきたい。近いうちに社内で必ず新型コロナ感染者や濃厚接触者はあらわれる。そういう前提のもと、会社としても対応マニュアルを役所からダウンロードしたものではなく、もっと実践的なものにしていかなければならない。いろいろ考えると疲れる。緊張もする。「どうぶつの森」でこの緊張感を和らげようと思ったけれども、今日の僕には遊ぶ気力が残っていなかった。こうやって少しずつ消耗していくのだろうな…(所要時間26分)