Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

物語ることは人生をデザインすることである。(12/16発売『神・文章術』より)

人生は「物語」にたとえられる。物語を語ることは、劇的な人生を送っている、特別な人にだけ許される行為ではない。誰にでも平等に与えられた権利だ。40数年生きてきてわかったのは、誰にでも物語があるということだ。起死回生の大逆転や、ライバルへの倍返しといったドラマはない。疲れていても家族サービスを休めない、毎朝、上司からの嫌味を聞かされてうんざりする、といった、まだ語られていない物語が僕らにはある。

人生は物語だ。これからの人生を物語ることができれば、人生をその物語に近づけていくことだってできる。ボードレールやポーの詩に自分の人生を近づけることに比べれば、はるかに簡単だ。

「熱狂をもたらす」「多くの共感を得ている」ビジネスの成功者は物語るのが好きだ。自分の言葉を使って物語ることで、現実を自らの物語に近づけている。物語ることで夢や理想を現実化している。

マーク・ザッカーバーグ氏(Facebookの共同創業者兼会長兼CEO)

「人々が情報をもっとオープンに交換するようになれば、世界はもっと良い場所になる。Facebookはその実現を助ける」

松下幸之助氏(パナソニック〈旧松下電器産業〉グループ創業者)

「松下は人をつくるところでございます。併せて商品もつくっております」

「企業は人なり」

ザッカーバーグ氏も松下幸之助氏も、平易な言葉で、夢を語り、それを実現させている。

 

年始に目標を立てるのも、「物語り」のひとつだ。その目標を手帳に書き込まなければ、その目標は達成できない。心のなかでこんなことをしたいとぼんやり思うだけではなく、自分の言葉へ変換して明確することで、初めて、意識にインプットされる。

「物語り」は自分の言葉で自由にやろう。そして最後まで書ききろう。その際、できる限りディティールにこだわってみよう。そのほうが、自分と物語との位置関係や距離感をはかりやすく、人生を寄せやすいものになる。

プロサッカーチームのコーチが、重要な試合の前に、選手たちに、最高のパスをつなげたゴールや粘り強い守備でゴールを守った瞬間、勝利の凱歌をサポーターとともに歌う姿をまとめたビデオを見せて、チームに活を入れることがある。具体的な成功体験を物語にして、自分たちの未来をそこに近づけようとしているのだ。「物語る」ことで、人生はよりよいものにできる。自分の言葉で「物語る」ことが、人生を良いものに変えていくのだ。

「物語る」ことで、より大きく強い世界観が手に入る。小説家が短いエッセイと長編小説を書いたとき、その小説家の世界観がより強くにじみ出るのは長編小説になることが多い。大きく「物語る」なかで、様々な対象と自分との位置関係や距離をはかって言葉にしていく機会も増える。その分、世界観も強くなる。つまり、大きな物語を「物語る」ことによって圧倒的な世界観をも手に入れられる。

 

この記事は12月16日にKADOKAWAから発売される僕の新著『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』からの先出しです。