Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

やっぱり会社で失脚しそうです。

失脚ルートを回避したつもりでいたが、どうやらまだ脱していなかった。つかルートのど真ん中にいた。社内は、社長休養不在中に爪痕を残そうとして「出勤朝礼後は帰宅して在宅勤務オッケー」「在宅勤務は年休扱い」といったトリッキーな施策を打ち出しては周囲に諌められている専務のせいで不安定さを増すばかりである。そんな専務の手先となって僕を監視している人事マンに「まだ何か隠していますよね」と言われ、「味方じゃないあなたに全部話すわけないでしょ」とブチかましていた余裕はない。今、抱えている懸念事項によっては、立場を追われることを覚悟しなければならない。失脚である。この文章は、僕がくだした判断に間違いがなかったか、恥をしのんで世に問うものである。

年上部下氏から相談を受けたのは今月の頭であった。デリケートな話題なのでオブラートにつつんだ表現をすると、身体の一部に腫瘍がみつかったとのことであった。持病である神経痛にしてはおかしい、という理由で会社を休んで病院で検査をしたところ見つかったのだという。良性か悪性かはまだわからない。痛みの原因が腫瘍によるものかも詳しく調べてみないとわからない。とのこと。深刻である。僕は「じゃ人事と相談して対応するようにしよう」といった。休職かしら、それとも異動かしら…。腰から足にかけて激痛が走るのなら、外回りが欠かせない営業職は無理だと考えたのだ。なにかが起こったとき大変なことになる。大変なことが他者に降りかかるのならまだしも管理職である僕にふりかかるのだけは避けたい。だって他人だから。そんな僕の逡巡をよそに、部下氏は「会社には黙っていてほしいです」と願い出てきた。「上司である僕も会社の一部に含まれるのだけど、ナメられているのかな」と思いつつ、理由を聞いた。理由は以下のとおりである。腫瘍が悪性であった場合今の仕事を外されてしまうから。また良性であった場合でも腫瘍ナウをカミングアウトすることによって異動させられる可能性があるから。検査ではっきりするまでは猶予してほしいから。部下氏は痛みは15分ほどなら歩けるレベルで、薬でおさえられるときもおさえられないときもある、と不安をかきたてることも言った。働いている間に事故を起こす可能性は否定できなかった。管理職として僕にできることを考えたとき、ベストは、上や人事と相談して今の仕事から彼を外すことだろう。一方で、同じ中高年の働く男として、「迷惑は絶対にかけないから今の仕事を続けさせてくれ」という気持ちも痛いほどわかった。だから僕は僕の裁量のなかで他の同僚に悟られないよう彼の仕事を軽減し、体調が悪いときは無理に仕事や移動をしないよう、車の運転は避けるよう彼に約束させた。彼の病気については確定するまでは僕のところで止めておくと決めたのだ。彼の言うことを信じるならば、痛みは腫瘍ではなく神経痛の悪化の可能性もあるし、腫瘍も良性で手術も不要かもしれないのだ。『心配ごとの9割は起こらない』という本を読んだ直後の僕はそう考えたのだ。うまい方向にいく。ヤクルトの高津監督も「絶対、大丈夫」と言って日本一になったではないか。ところがである。心配ごとの9割は起こらないということは1割は起こるということであった。起こった。昨日の夕方。部下氏が会社の駐車場で同僚を手伝って車の入れ替えをしている際に社用車を壁にこすってしまったのだ。人事から原因を詰められて、部下氏は「上司に報告済みではあるが、足が痛さに耐えられず」などと弁解して、その際に、実は精密検査待ちです、などとゲロったのである。秘密を守ってほしいと僕に懇願する一方で、己は秘密をもらしてしまうとは。自己保身おそるべし。ま、確かに「自分も誰にも言いません」とは約束していなかったけどさ、普通さ、常識的にさ、と嘆いたところで後の祭なのであった。きっつー。人事マンはノリノリで「これはマズいですねー」と言ってきて胃が痛い時間を過ごしている。以前から部下氏が運転事故を複数回起こしていること(そして当該事故のキズは目立たない)、痛みの原因である神経痛については会社に報告済みであること、腫瘍と痛みの因果関係は不明であること、以上3点に活路を見出しているけれども、僕のあげ足を取ることを生き甲斐にしている人事マンが介入しているので、見通しは暗い。僕は今、失脚ルートの真ん中を突き進んでいる。社長(休養中)はやく復帰してくれー。(所要時間23分)

お知らせ/12月16日に本が出ました。文章術の本です。→