Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

リハビリきっつー

交通事故で全治6週間の重傷(左膝骨高原骨折)を負ってから今週末でちょうど6週間になる。口が魚臭くなるのを厭わず魚肉ソーセージを食べ続けた効果だろうね、おかげさまで経過は良好で、ようやくギプスが外れ、ケガをした足に3分の1の体重をかける許可が出て、リハビリを開始したところだ。今は肉がすっかり落ちてしまったり皮に余裕がなくなっているせいで膝が曲がらない状態だ。皮の余りすぎをギャルにバカにされて悩む男性もいれば皮に余裕がなくて苦悩する僕のような男もいる。人生とはなんて難儀な代物なのだろうか。しかし膝を曲げるだけで痛い。リハビリ、きっつー。とりあえず後遺症が残らないようにリハビリを頑張らなければならない。


問題は金だ。一連の治療費を僕は立て替えて支払っている。経験や知識がある皆様なら容易に金額を想像出来るだろうから敢えて金額は公表しないが、なかなかの金額に達しており、そろそろ加害者にお支払いを願わなければツラい。加害者は泥酔して自転車を運転していた八十才の年金生活者の男性だ。保険未加入。テロリストと交渉するつもりはないのでダイレクトにこれだけの金が欲しいと伝えた。反応は驚くべきものだった。「払えない」。

 

「払いたいが払えない。手持ちの金が無くなったら明日から生活が出来なくなる。それに弱い立場の年寄りから金を取るのはいかがなものか」生活が…つって同情を誘っているつもりだろうがバカなんだろうか?同情されるべきは足を折られてクソ暑い夏を風呂無し生ビール無しのギプス生活を強いられた僕の方である。生活が成り立たなくなる?立たなくて性生活が成り立たない僕に比べれば悲劇でも何でもない。はっきり言って僕に重傷を負わせた人間が生活に窮しようが、滅亡しようが僕には関係がない。そんな事態になったらおそらく喜んでしまう。ザマーミロ!天誅!僕は神でも仏でもマザーテレサでもない。加害者に同情するような奇特な性癖の人間でもない。加害者自身から「こっちも大変なのよ」と言われたら「バカなんですか?」と言い返すごくごく一般的な市民にすぎない。

 

という真理を先方にわかりやすく過激な言葉でお伝えして電話を終えた。「バカなことは言わないでください。怒りますよ」テロリストと交渉はしないのだ。逃亡の恐れはおそらくない。僕はすでに松葉杖偵察で先方がそこそこの豪邸に住んでいることを掴んでいる。

 

仕事。通院。リハビリ。交渉。まだ松葉杖を手放せない僕には忙しすぎる毎日だ。家族からは交渉はしかるべき第三者に任せるべきではないかと言われてもいる。だけどしない。大学時代のゼミ同期の弁護士に「会社員なんかよくやってられるなー」とバカにされる屈辱は二度とゴメンだし、自分の手で直接、恨みつらみを晴らせる機会をみすみす手放したくない。つーか一度も謝罪に来ないような人間に同情できる方法があるのならご教授願いたいものだ。(所要時間16分)

リストラはつらいよ

会社の悪口で盛り上がっていた仲間と袂を分かち、裏切り者の名を受けて、会社の忠犬になる。そんな今の僕の心境がわかるのはキムタクくらいのものだろう。今夏より部長になった僕は事業全体のリストラに取り組んでいる。粛々とデスノートに仲間の名を書き記す胃の痛い作業。恥部に残る仕事。きっつー。同族経営の弊社において僕が事業部のトップに登用されたのは抜本的徹底的な「聖域なきリストラ」を敢行するため。ということになっているが実のところ、リストラを敢行したいが憎まれたくない、憎まれ役は外様の人間でいい、というボスの男気の産物にすぎない。

 

スタッフの仕事を精査するために毎日現場を訪れている。権力志向の薄気味悪いオバはんを除けば、親しかった仲間はどこかよそよそしいし、露骨に避ける者もいる。統括管理する立場になった僕を畏怖し、陰で「トンカツ」「ポンコツ」という敬称で僕を呼ぶ者がいるのも知っている。とても悲しい。築き上げた薄い人間関係がいとも簡単に崩壊した現実が悲しいのではない。リストラされる側による、リストラされても仕方のないような、子供じみた対応に悲しくなったのだ。二度とあんなヒラ社員には戻りたくない。搾取する側でありたい。勝利者でありたい。

 

僕に出来ることは可能なかぎりフェアに評価を下すことだ。予断や偏見を持たず、平等に評価すること。結果として、かつての仲間に失格の烙印を押すことになってしまうかもしれない。憎悪の対象になったり、殺人予告を受けたりすることもあるかもしれない。そんな犠牲を顧みず、強い信念をもって会社を立て直す。それが僕に課せられた仕事なのだ。僕は第一次デスノートを作り上げボスに提出した。フェアな評価に基づく「聖域なきリストラ」の第一歩。なるべく憎しみのターゲットにならないよう、即刻退場していただくのは始末に負えないボンクラ数名に留めておいた。

 

ここに列挙した人物はバカとハサミのバカになれない人間なのでハサミで首チョンパしましょう、という内容の報告書。誤算は、そのボンクラ共が全員たまたまボスの親族であったことだ。まさか。フェアに精査・評価した結果がこれである。運命のイタズラ。あるいは偶然の産物が導きだした当然の結果。逃れられないボンクラの血。デスノートを見たボスはただ一言。「これは見なかったことにする」あった。《聖域なきリストラ》にも聖域はあったのだ。

 

今、僕は聖域ある聖域なきリストラのために、ボスの血縁に触れないよう注意しつつ、リストラ対象の頭数をそろえるためだけに、かつて仲間が犯した小さな失敗を漁ってはデスノートに書き入れるという恥知らずな仕事に従事している。犬!裏切り者!与えられた仕事を真面目にやっているだけなのに社内での風当たりは強まるばかり。きっつー。弊社。ジャニーズ事務所。同族経営の素晴らしさばかりが目につく今日この頃、キムタクの心境を想うだけで僕は我がことのように泣けてくるのだ。(所要時間17分)

性的な理由で別居しました。

「私は女の人の方が好きみたいです」特定の誰かがいるわけじゃないのですが、という前置きに続いて、妻からその告白を聞かされたとき、僕に大きな驚きはなかった。7月末のことだ。驚かなかったのは、インポテンツの僕には夫婦間における性的な問題について驚く権利など与えられていないし、なによりも妻の気持ちがまるで自分のことのように理解出来たからだ。僕も女性が好きだ。完璧に。偽りなく。

 

女性は素晴らしいもので、妻であれ、その辺の浮浪者であれ、女性に魅入られるのは健康で自然なことではではないか。もし、夫たる僕よりも、直視するのもきっつーな不潔なチビデブハゲや現実を直視してもらいたい無職ニート、あるいはその複合体に魅力を感じるのですとカミングアウトされていたら、僕は迷うことなく切腹していただろう。

 

価値観、思想、宗教、学歴、性別。あらゆるものが異なる夫婦間において《女性が好き》という共通の宝物を探し当てられたのだから実にラッキーだとさえ思っている。そもそも僕らはセックスレスどころかセックスゼロ。レスザンゼロ。端的に言えば今までゼロだったものが永遠のゼロになるだけのことだ。何も変わらない。変わらない。変わらない。変わらない。と念じている僕に「難しいですよね」と妻は言う。妻の言う難しさは何を指しているのだろうか?僕と生活を続けることだろうか。女性の取り扱いだろうか。よくわからない。「大丈夫だよ」と答えにならない言葉で僕は自分に執行猶予をつけた。

 

これから僕ら夫婦がどうなるかは誰にもわからない。だが僕らには《女好き》という共通点がある。《女好き》は希望で、その希望は今、僕を随分と楽観的にしてくれている。けれども僕は今の状況を整理するため、妻にしばしの別居を申し入れた。妻が結婚以来ずっと僕を女性として見ていた現実を僕はまだ受け入れられないでいる。その現実を受け入れるためには少々の時間が必要なのだ。(所要時間9分)

「シン・ゴジラ」はイタいだけ。

  

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ

 

 庵野秀明監督作品「シン・ゴジラ」は、特撮好きのエヴァの監督が使徒をゴジラに置き換えて作った痛快怪獣映画だ。エヴァを観ているときは気づかなかったのだけれど、海から現れて東京に向かうゴジラとネルフ本部を目指す使徒は驚くほどよく似ている。また、石原さとみ様の流暢すぎるネイティヴ英語は、エヴァ2号機を起動する際のアスカのドイツ語の悲劇を想起させる。繰り返しというか執拗に描かれるタテ割り組織の弊害や、所定の手続きを経ないと攻撃が出来ない自衛隊。災害や驚異に対して後手を踏み、結果的に国民を危機にさらしてしまう行政の描写(会議のたびに会議室を変えることのバカバカしさよ!)は「パトレイバー2」のそれを想わせるものだが、僕がまず連想したのは人間の目線から怪獣を見上げていた平成ガメラシリーズだ。子供の味方になり下がった怪獣ではなく畏怖の対象。UMA扱いから次第に神に近い存在になっていくゴジラに僕は平成ガメラを想わずにいられなかったのだ。また僕が一番感心したのはゴジラを前にした人間の扱いの平等さ。ゴジラの前では人間はゴミ。なのでパニック映画になぜか挿入される取り残された若い母娘を救助されるシークエンスも主要登場人物の親子関係や恋愛模様もない。救われるはずのファミリーは瓦礫に消え、政治家も無名のゴミのように説明なしに死んでいく。その、主役ゴジラを引き立てる構成が素晴らしいと思った。多摩川を防衛線にゴジラへ総攻撃を仕掛ける自衛隊。瞬殺される米軍機、木っ端微塵の総理大臣。築地市場地下の秘密基地から出動する自衛隊の秘密兵器スーパーX。ラストの爆散するゴジラの尻尾から浮かびあがる元祖東宝シンデレラ、沢口靖子。いろいろ印象的なシーンはあるけれど何よりも無人在来線爆弾のアホらしさと中学生感が素晴らしい。無人在来線爆弾や。ああ無人在来線爆弾や。無人在来線爆弾や…。

 

こんなふうに僕は、乏しい想像力を駆使して「こんなゴジラだったらいいな」を頭に浮かべながら、シン・ゴジラを観るために映画館へ向かっていた。平成28年8月6日のことである。ガードレールのない歩道を歩く僕に泥酔した年金生活者(80)が操縦する有人自転車爆弾が炸裂したのは同日午後3時すぎ。とっさの反応で頭を打つのは避けられたけれども自転車と壁に挟まれた僕の左足に激痛。ベロベロに酔った年金生活者(80)がうーうー言って僕の左足の上から動かない。いっつー。酒くっさー。まさか有人自転車爆弾で足止めを喰らうとは。「うー酔ったー」と呻く年金生活者(80)に一人で死ねボケ!いいから退け、死ぬ前に退けと受傷しながらも暖かい声をかけて励ます人の良い僕。同日午後3時半。自ら救急に通報。駆けつける警察官。近づいてくる救急車ピーポー。医師の「完全に折れてるよ」の声。休み明け整形外科の診断。左脛骨高原骨折。全治6週間。あれから4週間。ギプスで左足を固めての松葉杖生活。自慰はおろか風呂にも入れない。泥酔して自転車に乗って突っ込んでくる無保険の年金生活者はスクリーンで放射能ビームを吐いて東京を破壊するゴジラよりも恐ろしい。今、僕は楽しそうにはしゃぐ都会の若者たちが当該年金生活者共々ゴジラにミンチにされることを祈りながら、歩けない晩夏を過ごしている。まだ、シン・ゴジラを観ることはかなわない。(所要時間18分)

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部長に昇進しました。

8月1日付で部長に昇進した。同時に総務・人事部門を除く運営事業全体の統括を任されることになった。いきなり、社員・パート含めて500人の頂点に立つのだ。今回の昇進を受けて「ボスに取り入ったクソ野郎!」と陰口を叩かれた。個人的な嫌がらせと非人道的人材補完計画により相次いで部長と課長の間に追加された、部長代理、副部長、部長補佐、部長見習、部長心得、次長、次長代理、室長(すべて退職済)を飛び越えての昇進を「名誉の戦死による3階級特進」と揶揄されたりもした。そういう妬み、僻み、嫉みをぶつけてくる敗北者たちは経営状況の悪化を理由に僕の給与がしばらく据え置きであることを知らない。

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立身出世に浮かれて「ブラック企業で底辺から登りつめた私の努力」「こうすれば出来る。今からでも変われる」的な薄気味の悪い啓蒙活動をネット上ではじめてしまう浅はかな人間もいるが、僕はしない。なぜなら、昇進というものは相対的な物差しで決まるものであり、自分の実力と努力だけでどうこうなるような代物ではなく、むしろそれ以外の要因、たとえば周囲の人間の能力不足や努力不足つまり競合の失脚の方が大きいと僕は知っているからだ。もっとも、周りを見ても、仕事をしているのか寝ているのかわからぬ者ばかりで、日々、山火事を小便で消すような努力をしている僕が負けるはずないけれども。

 

親族経営の弊社において中途採用、外様の人間が運営のトップになるのも、40代前半の人間がトップに立つのも、半世紀を越える社歴で初めてのこと。僕の能力と実績を周囲のそれと天秤にかければ、英断でもなんでもない、ごくごく普通の人事が行われただけととらえるしかないが、冴えないベテラン社員の話を信じるならば、アリエナイ人事らしい。そういう話を聞かされていると、慎重な僕でも「うすうす気づいていたがもしかして僕は実力があるらしい」と思うのが自然だ。生誕の際に「あら可愛い」と褒められて以来、誰からも褒められたことのない人生。おそらく、僕にとって今回の昇進が人生最後の褒められる機会だろう。そう考えた僕は今回の人事の理由をボスに尋ねてみた。ボスは超簡単に口を割った。僕を事業全体のトップに据えたのは仁義なき非情なリストラを遂行するためだと。全社員・パートの仕事を精査してリストラ、最悪、全社員を容赦なく首チョンパ。それが僕に課せられた仕事。きっつー。

 

それはいい。だがなぜ僕なのか?その答えをボスに求めた。君の能力が必要なんだ。このリストラは君にしか出来ない。僕はそのひと言だけを期待した。それだけを言ってくれれば僕は喜んで人でなしになろう、すすんでリストラ・マシーンになろう。そんな願いも虚しく、僕の耳に届いたのは「親戚を憎しみの対象には出来ない。君ならちょうどいいやと思って」というハートフルな答えだった。これぞ親族経営。以来、1ヵ月。全社員の憎しみと警戒を一身に受けながら粛々とリストラ計画を遂行している。この地獄を生き抜くために、僕は人から憎まれることに喜びを感じられるような人格者にならなければならない。余談だが課長でなくなったことを受けて就業規則通りに年額18,000円の課長手当は削られるそうである。(所要時間18分)