Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

業務用のコメの値段が倍になりました。

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僕は給食会社の営業部長。当社に納品されている業務用のお米の価格が、先月からキロ800円前後へ値上がりした。それまでは平均400円弱だったので、ほぼ二倍。黒目が消えるかと思った。収益の悪化が予想され、各部署が対応に追われている。「ブランド米」表記でアピールしていた顧客に対しては、夜間にひっそりと「ブレンド米」に変えてしまおうという声が上がっているくらいだ(詐欺)。昨年から今年の春と違うのは、お米自体があること。米不足で需要と供給のバランスが崩れて価格が急騰したという説明はなんだったのか。

当社では、お米がもっとも取扱量の多い食材だ。昨年から続く値上げに対しては、顧客と交渉を進めて、契約を見直して、春から夏にかけての食単価アップという形でカバーしてきた。だが、それ以降の大幅な米の価格の値上げに対して顧客が応じてくれるかは流動的だ。理解のある顧客であれば応じてくれそうだが、今春に続いての二度目の値上げは、たとえば社員食堂なら労働組合との兼ね合いなどもあるため、見通しは不透明だ。

「製造原価が上がっているのだから、価格に転換するしかないだろう」というご意見を頂戴する。普通の飲食店ならそのとおり。だが、給食ではそうはいかない。給食業務委託で食単価が決められているため、一方的に価格を上げられないのだ。社会情勢や経済状況の大幅な変動があったときは、双方の話し合いで改訂できるという一文があるため、改訂は可能だ。だがそのためには交渉が必要である。時間もかかる。現在の値上げには対応できない。改訂までは泣くしかない。

不平等な契約のようだが、世の中が落ちついていれば、安定した売り上げと経費負担の軽さ等々の理由でリスクが少ないビジネスモデルなのだ。ただ、急激な価格変動に対応できていないだけだ。当面は、現状の契約のもとで価格交渉を続けつつ、物価のアップダウンに対応できる新契約を模索している。落としどころが難しい。

なお、当社の上層部は「米の値段が倍になってるなら、定食のライス量を半分にすればオッケー」と主張している。契約書上ではメニューアイテムと価格が定められている。顧客によってはメニューの構成(定食なら主菜+副菜+ライス+汁みたいに)を取り決めているものもある。契約書上では米の使用量まで決めていないため、ライスの量を半分にすることは契約違反ではない。ただ、「定食のライスが少ない」というクレームが発生して、解約につながる可能性は十分にある。上層部には余計なことはしないでこれまでどおり昼寝をしていてほしいものだ。

対して、街中にある飲食店は、米の値上がりや物価上昇にともなう値上げの実施は自由だ。給食のように契約で縛られていない。ファミレスのような外食チェーンでは、無慈悲な値上げを断行するところもある。うらやましいかぎりだ。一方で、値上げが自由なはずの個人店では値段を上げたくても上げられないという声を聞く。理由は値上げによる客の流出。その裏には長年の価格据え置き運営で店に余力が残されていないことがある。安さで売る個人店は、店主やその他数名の人件費は捻出できていても、適正な営業利益を確保できていないものが多い。余力がないため、一時的にでも売上が下がれば致命的な痛手になる。

値上げを断行するべきだが、安さと手軽さを売りにする個人店からその魅力を減少させかねないので判断は慎重にならざるをえない。本当に難しい。物価高騰直撃で経営の苦しい個人店に目をつけた悪いコンサルが「値上げをしても付加価値があれば客はついてきます」と助言したケースを知っている。コンサルは知り合いの内装業者を紹介して、無個性古民家風飲食店にリニューアルする。「60年続いているもつ煮はお店のストロングポイントです。もっと訴求するように「無二無二もっつー」に名前を変えましょう」と助言して、価格を倍にする。客単価アップが狙いだ。ところが付加価値を高めたのに期待したほど売上が上がらない。だって安くないから。こうして付加ではなく負荷を押し付けるのである。地獄だ。

食材を納品させていただいているお店にアドバイスをする機会があるけど、新たな付加価値なんて安易に言えない。なぜなら、たとえば、安さを売りにする個人店では安さこそが第一の価値だからだ。そこを改めるのなら店舗そのものを変えなきゃいけない。リニューアルでは済まない。もし、出来ることがあるとするなら、食材を安く仕入れられるルートの紹介と経営の効率化くらいだろう。

価格を自由に上げられるのに上げられない飲食店もあれば、上げたくても上げられない給食会社もある。どちらも厳しい。なお、取引のある米業者の見込みでは米の値段は上がり続けるらしい。お米自体はあるから、奪い合いになることはないぶん、まだマシと捉えていくしかないね。(所要時間26分)

相談業務でChatGPTが役に立たなくて絶望した。

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ChatGPTをはじめとした生成AIが、僕が任されている仕事(業務)でまったく役に立たないことがわかった。このまま生成AIが発達しても、この先も役に立つことはない。僕は省エネで効率よく仕事をしたい。だからAIには期待した。だが、人間の代わり、僕の代理にならないことが判明して、軽く絶望している。

ときどき、奥様から「話を聞いてほしい」と要請される。内容は、ご本人にとっては深刻なものらしいが、その多くはどうでもいいものだ。ただ、体裁が「相談」という形になっているため、日々、会社上層部から「今の株価どう思う?株もっていないけど」「楽に稼ぐ方法を探せ」と言われている僕は、何か意見を求められている感じがして、助言してしまうのだ。「こうしたらどうだろう」みたいに。これがよくないのだ。最悪、喧嘩になる。なぜなら、彼女の要望は「ただ話を聞いてもらいたい」だから。アドバイスは要らないのだ。つまり僕はアホみたいに何も言わずにただ聞いていればよかったのである。

僕は学習した。彼女からの同じような「相談」があったときは、アホみたいに口を半開きにして、頷きつつ、そうだね、なるほど、と適当に相槌を打つことにした。しかしそれでも、「話を聞いていない」「意見はないの!」とクレームを受けるのだから難しい。人間には無理だ。AIに任せたい。なお、奥様は僕からの相談事も「話を聞いているだけ」だとわかった。だから、物価上昇、栄養価不足などデータを持ち出して月額1万9千円からのアップをお願いしても通らなかったのね……。きっつー。

最近、仕事で相談を受ける機会が増えた。中小企業なので、営業部長でありながら他の役割を任されることがあり、現在は期間限定(と信じている)で、現場で働いている社員やパートの相談窓口的な業務を任されている。この仕事で持ちかけられる相談には、先ほどの奥様のように「ただ話を聞いてほしい」ケースと、的確な助言が欲しいケース、ふたつのケースがある。これらが混在してるケースもある。実に厄介である。

慣れない仕事をしているので疲れ切っている。相談に乗るのは仕事だ。逃げられない。それに相談してくる人間は真剣なので対応するしかない。相談の9割が、職場での人間関係や労使関係。助言については、過去のパターンから類似を見つけ出してそこでなされた解決案から作るのがもっとも効果が期待できるので、生成AI(ChatGPT)を利用して作っている。今のところ支障はない。負担も軽減できている。ありがとうチャッティー。

僕は、相談自体を生成AIにやってもらえばいいのではないかと考えた。そうすることによって、奥様のような「ただ話を聞いてもらい」愚痴的な相談であっても、具体的な助言が欲しい場合であっても、最適解を出してくれるはずだ。なにより相談に乗る人間がノーストレスなのがいい。実務的には相談者と一緒に生成AIにプロンプトを入力していく形になるだろう。そのような相談AIシステムが商品化されているかもしれない。僕は知らない。調べてもいない。というのも僕のアイデアは却下されてしまったからだ。

職場(同僚)から「絶対にうまくいかない」と反対された。その反対意見に僕も納得した。「相談に来る人、とくにただ話を聞いてもらいたい人は、話を聞いてくれた人間が、一緒に悩んでくれたり、同じようなストレスを感じてくれたりすることを求めている。時には健康を損なうくらいに」これが同僚の意見である。どれだけAIが優れていてもダメなのだ。悩みを共有して苦しめなければダメなのだ。つまり、求められているのは、一緒に悩んでくれる物言わぬ、胃酸過多の壁。たまったもんじゃない。確かに、解決策を見つけられなくても、すっきりした顔をして去っていく相談者は多い。こちらは現場の人間関係のドロドロや待遇への不満をぶつけられ、解決案を提示しても「そんなんじゃ解決にならない。もっと親身になって」とキレられ、胃が痛いのに、相手はスッキリ。解決していないのに…と謎だったけれども、僕の胃酸を過剰に分泌させることで彼らはスッキリしていたのだね。なるほど。

胃酸のない生成AIは相談役として全く役に立たない。開発者各位には、ストレスを感じて効率や精度が落ちて胃酸過多になるAIの開発をお願いしたい。期待はできない。なぜなら恨みや妬みや人間の業といったものはデータ化されていないし、ネットにも転がっていないからだ。学びようがないからだ。

「AIに仕事を奪われる」という話をよく耳にする。これまで順調に技術に仕事を奪われてきたのだから何を今さら感がする。しかし、生活のために社会にあわせて仕事のやり方を変えたり、新たな仕事を見つけたりしなければならない。「リーダーの体臭が我慢できない」「連続遅刻の理由は、今の業務がキャリアアップにつながらないからです」というクソみたいな悩みを、真正面から受け続けて胃腸を壊している僕が今従事している仕事こそが、AIに置き換えられない仕事のひとつであり、これからの人間の仕事のありかたのヒントになるだろう。(所要時間29分)仕事本を書きました。

 

顧客から受け入れた人物がスパイ活動をしていたので対応しました。

僕は給食会社の営業部長だ。新規事業の立ち上げなどで、一時的に、他部署の人間を預かって仕事をすることもある。中小企業なので、営業の仕事だけではすまないのだ。今は、営業の業務と並行して、某保養所案件を任されている。そうしたなかで、同僚のスパイ行為に気づいてしまった。

某企業の保養所の管理業務を受託している。スパイ疑惑のある人物は、その保養所を所有している某企業の元担当者のオッサンで、定年退職時に先方から請われて雇用されている。典型的ななんとか下りだ。ポジションは前職の経験とコネを活かしたマネージャー(得意先との折衝と保養所全般のマネジメントを行う)。本名を暴露したいところだが、アーニャ(仮)と呼ぶことにする。

アーニャを通じて、その某企業から、別の保養所の管理業務を紹介された。高原リゾート地にある保養所で、維持管理、フロント業務、食事提供などを一括管理する業務だ。現在受託している会社が、来春での撤退を申し入れてきたため、紹介されたのである。
いろいろあって僕が交渉を任された。事前に資料を確認してから現地を視察。現地はインバウンドで人材不足気味である。現地採用は、苦戦が予想された。ウチの会社は、病院や老人ホームといった人員が必要な事業は、積極的に受けないようにしている。労力に対して利益が見合わないからだ。そのため、僕も方針に沿って、この案件にも手を挙げない方向に話を持っていくつもりだった。

交渉担当かつ営業部長の僕が決めた方針に対して、アーニャが噛みついてきた。なぜか、タメ口で「あの保養所の仕事は絶対に受けるべきだよ」と意見するのである。相手は大手企業なので、受託していること自体にメリットがあるというのが、アーニャの言い分。続いてやってくるであろうアーニャ2号の受け皿になることがはたして当社のメリットなのだろうか。ウチは中小企業であって、収益の出ない事業ましてや事業圏外の事業を受ける余裕はないのよ…という僕の心の声がアーニャには聞こえないらしい。

「受託するとしたら収益と事業を安定させるために相応の金額を提示しなければなりません。条件も譲歩してもらわないと…」と言うと、アーニャは「それでは相手にメリットがないじゃないか!現業者よりも安い額を提示したうえでさらにサービスをしなければいけないよ」などと言うのである。タメ口で。アーニャはまだ元の会社の社員のつもりで仕事をしている。そのため、いちいち某企業よりの提案を出してくる。我が社の利益を損なう活動をしているという意味で、アーニャはスパイだった。ただ、こういう人物をうまく使ってこそ、企業というものは伸びるのだ。

アーニャ自身には、悪気がない。クライアントである某企業の意図を察知する役割を求められていることはわかっている。ただ、クライアントの求めるものを察知して、ウチの会社の立場に立ち、ウチに有利な方向へもっていくことがアーニャに求められている仕事なのだが、その結果が、収支を度外視しても付き合いを拡大するほうがいい、だって相手は超優良大企業だから、というズレた行動になってしまっている。

おそらく、超優良大企業に定年まで在籍していたという自尊心が抜けきれないのだ。アーニャの自尊心を破壊することは容易だ。「貴兄はウチのような弱小企業を紹介される程度だと某企業から評価されているのですよ」と耳元でささやけばいい。『SPY×FAMILY』のアーニャみたいに僕の心を読んでほしいものだ。ちちーははーアーニャりょうかい、ってね。

アーニャは間違いだらけだけど、善意でやっていることなのだ、周りが彼を支えてうまくつかえばいいのだ、と性善説に立って接してきたけれども、一緒に仕事をしているうちにときどき「今はこの会社にお世話になっているが、某企業側の人間と認識してくれて構わない」的な発言をするので、スパイとして取り扱ったほうがいいだろう。うまく取り扱わないと、クライアントである某企業との関係も難しくなるのでマジで難しい。

特定のクライアントとの窓口業務しかやっていないうえ、それ以外の仕事は機密漏洩を恐れて任せられないので、閑職に置くしかない。僕は、自分が今の仕事に携わっているあいだは、アーニャを交渉の際に同席させる一方で、アーニャの意見は参考止まりにして、あくまで自社の利益に貢献できるかどうかで判断するつもりだ。それでアーニャが拗らせてスパイ活動を活発化させたら、雇用期間満了でバイバイしてアーニャ2号を受け入れればいいだけのこと。使い捨てされるのもスパイ。

つか、マンガのアーニャやヨルさんみたいに可愛いスパイなら許容できるけど、破壊工作オッサンはいらない。スパイならヨルさんみたいな美女を送り込んでくれよ。つか他社ではアーニャみたいな人をどう扱っているの?(所要時間28分)このような中小企業エピソード満載の本を書きました→

業者を切って生成AIに切り替えたら全部うまくいった。

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先週末から体調を崩して休んでいる。営業部長なので完全休養できない。仕事は最低限に抑えている。メール対応と現在営業部で抱えている案件のチェックだけだ。具体的には企画書のチェック。企画書は某食堂コンペの一次審査に提出するものだ。〆切は来週。
ウチの会社は、僕が管理職になれることからわかるように、中小企業であり、営業部の人員もギリギリ。かけられる労力やコストには限界がある。それでも大手を含めた競合他社と戦って新規開発は進めなければならない。厳しい。このような状況を改善する目的でいくつかやり方を変えている。なかでも大きな変更はこれまでお付き合いしてきたデザイナーさんとの仕事のやり方だ。ざっくりいえば、断ったのだ。そしてその仕事を生成AIに任せたのだ。

その第一弾が今回の食堂コンペの企画書。だから体調が悪くても目を通さなければならなかった。企画書には「どのような食堂にするか」わかりやすく提示するために何点かイメージ図やパース図を掲載する必要がある。これまでは、いつもお願いしているデザイナー氏(いつも氏)にお願いしていたが、今回から生成AIを使うことにした。いつも氏との関係を解除したのだ。コストダウン目的ではない。いつも氏の仕事のやり方に問題があったからだ。氏は設定した〆切ギリギリに納品するのだ。進捗を確認すると「〆切まで待ってください」。何回かは〆切に遅れたこともある。ウチは中小企業のため、いくつかのデザイナーに並行してお願いする余力はない。コンペ形式にしてもウチのような会社に参加する業者がいるか怪しい。

なぜ、氏はギリギリ納品なのか。〆切前に余裕を持って納品したら、修正や注文を受けつけなくてはいけないからだ。ギリギリ納品なら「もう時間がない」「仕方ない」となる。しかし、そのために大きな修正は出来なかった。妥協していた。どうしようかなーと対応に困っていたところに生成AIがあらわれた。試行錯誤はあったが、企画書には納得のいくイメージ図が掲載されていた。生成AIを採用してよかった。本音をいえば、いつも氏とも試行錯誤をしたかったが仕方がない。ギリギリだからね。結果が出たので、今後はこの方針でいくつもりだ。

ただ、生成AIがデザイナーの代わりになるかといったら、まだそこまでは行っていないとも思った。そのため、より精密なイメージ図やパース図が必要なケースではデザイナーの力が必要になる。今回のコンペが二次審査以降がまさにそれである。これからはデザイナーさんに打ち合わせから参加してもらって、経験とセンスを活用してもらうことになる。今回仕事をお断りした、生成AIに仕事を奪われた形になったデザイナーいつも氏に、二次審査の資料作成には参加してもらう予定だ。いつも氏は目から炎が出るくらいやる気になっているらしい。良い仕事をしてくれると期待している。目の炎が、仕事を切った僕への復讐の炎でないと信じたい。ま、〆切りギリギリ作戦をつかわない実直なデザイナーであれば、生成AIに仕事を奪われることはないだろうね。まだ。

生成AIは、人間から仕事を奪うだけでない。これまで惰性で仕事をしていた人間に気合をいれて、やる気を起こさせ、人間の創造性を刺激するのも生成AIの役割だ。これからは、今回の第一次審査のようなイラストや図は生成AIで作成させて、労力とコストと時間を節約して、より重要な段階にそれらを集中的に使っていくことになるのではないか。

生成AIは凄いけど人間の力、創造性はまだまだ必要だよね。人間にしか出来ない仕事はまだまだあるよね、などと人間の明るい未来を確信した直後に、部下が作成した企画書の表紙に「2025年9月31日」という絶対に到来しない未来が、全角半角混在で記載されているのを見つけてしまい、人間を排除したほうが良いものができるかも…と思い直している。デデンデンデデン、デデンデンデデン(ターミネーターのあのテーマ音楽)。(所要時間22分)9月18日に本が出ました!よろしく。

真夜中にゾウを描く。

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「夏は股間がかゆくなる」とは某有名股間薬のコマーシャル内で叫ばれているフレーズである。僕の沽券に関わることなのでいわせていただくが、股間がかゆいのは夏季にかぎらないのである。年中。オールシーズンである。筆舌に尽くしがたい股間のかゆみを放置していれば人類は滅亡したかもしれない。しかし、すでに人類の叡智は股間のかゆみを克服している。そのひとつがデリケアエムズである。デリケアエムズには感謝している。デリケアエムズがなかったら、僕の人生は終わっていただろう。自宅でポロンと出してポリポリポリ、往来でスマートにポロンと出してポリポリポリポリ、会社でプレゼン資料とともにポロンと出してポリポリポリ、一日の3分の1くらいの時間はポリリズムで消耗していたのは確実である。また、公衆の面前ポロンによりポリポリポリの前段階でポリスに通報されていた可能性もある。逮捕拘留起訴されていればラスカルに会うこともかなわなかっただろう。ありがとう、デリケアエムズ。僕の人生を救ってくれて、ラスカルに会わせてくれて。このように日々デリケアエムズに感謝している。しかし、デリケアエムズとて弱点はある。経済に対する脆弱性である。股間のかゆみ、ポリポリポリ対策として、デリケアエムズは素晴らしい。しかし経済という難敵の前には手の打ちようがなくなっているのが実情である。僕の月の小遣い額19,000円。一方、デリケアエムズ35gは最寄りのドラッグストアで税抜き1,580円、税込みで1,738円である。僕は現在、デリケアエムズ1本を1週間から10日で消化している。35グラムを10日で消費、すなわち、一日あたり3.5グラムを使用している。月3本のデリケアエムズを購入すると1738円を3本なので5214円である。19,000円のうち5,214円が股間のかゆみで蒸発している。経済的にかなり厳しい。デリケートエリアの話をするなら、スナックあゆみ(仮名)へのツケ、約1万円の支払いも滞っているのだ。ただちにデリケアエムズ関税を止め、公衆や国家権力の監視をふりきってポリポリポリすれば5,000円強は手もとに残るのである。5,000円と逮捕とを両端に据えた僕の心の中の天秤は激しく揺れているのである。仮にポリポリポリでポリスにつかまり拘留された場合、デリケアエムズを求めることは可能なのだろうか。デリケアエムズは1500円強である。カツ丼よりも高価なものが支給されるとは思えない。そうなると現実路線。デリケアエムズの使用を続ける方針を堅持すると、量とは何か問題になる。デリケアエムズに印刷された用法・用量には「1日数回、適量を患部に塗布してください」とある。実にアバウトである。1日数回とは一般的には2~3回といったところだろうが、かゆさポリポリポリを未然に防ぐ回数としてはいささか心もとない回数である。僕の実際は、朝起床して自宅トイレでヌリヌリ、昼食時外回り中の公衆トイレでヌリヌリ、夕方会社トイレでヌリヌリ、就寝前布団の上でヌリヌリの1日4回が標準である。「適量」はさらに難しい。適量とは適当な量である。テキトー=いい加減ではない。僕は適量を塗布している。この適量をテキトーな量と解釈して、僕が必要以上の分量をびちゃびちゃと塗布しているわけではない。しかしながら「塗布」するエリアの面積には個人差があることは考慮しなければならない。おそらくメーカーは標準的な人の面積を想定していると思われるが、僕の面積は人よりも広いのである。個人情報なので具体的なサイズは示さないが、スマートフォンのカメラで撮影したところ15センチ四方程度の面積になる。15センチ四方に適量を塗布するにあたり1日3.5グラムがはたして適当なのか。この問題については引き続き考えていきたい。しかしながら薄く塗布した結果、かゆさに耐えられずに警察署の前でポリポリしてしまったら元も子もないので、安全策を取るしかなく、少し多めの安全な分量を塗布するほかない。インターネットで調べたところ、塗り薬の有名な目安として、FT U(フィンガーティップユニット)というものがあるらしい。それは人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量であり、それを手のひら2枚分の面積に塗布するとちょうど良いらしい。結果論になるが僕は、このフィンガーティップユニットの分量で患部をカバーしていた。科学的定量的な物差しで、僕の正当性が証明されたので、一部インターネットの無頼者から指摘されているような、不安にかられていいかげんな量を塗布しているわけでないのである。しかし問題は経済の問題なのである。フィンガーティップユニットの分量を続けた結果、月5000円以上の出費を強いられている。小遣いの額を決めているのは奥様である。彼女は鬼でも仏でもあるので治療費や医療費は、19,000円とは別枠とされている。残念ながらデリケアエムズ代は現在治療費とされていない。19000円から捻出されている。実をいえば、奥様に申告していないのである。股間のかゆみという肉体的な辛さ、夏だけではなく年中続くという継続性、リズムにのってポリポリポリ、ポリポリポリポリ、ポリリズムによって社会的に失われる社会的地位、月額5000円超の出費、それらを奥様に相談するシーンを想像するとお腹が痛くなってしまう。結婚15年目。いまさらこれらを申告したら「過去15年間、僕のあずかり知らぬところであなたは股間ポリリズムを続けてきたのか。恥ずかしい」と言い返されるのは明白である。その反応に対して「耐えがたきを耐え、人目を忍んでポリってきたのだ」などと言ったものなら、「じゃあ命尽きるまで耐えに耐えてポリっていけばいいじゃないの」と詰められるのがオチだ。言えない言えない言えない。苦悩しているうちに月末が近づく。小遣いの残りが少ない。デリケアエムズの残量も少ない。2つの道がある。ひとつは通常の使用量を続け、なくなったらポリポリポリの道。もうひとつはデリケアエムズを水で薄め月末までもたせることに重きを置く道である。後者は、薄めることによって月末まで使うことは可能になるが、薄めることによる効果の減退、さらに水っぽくなることによりパンツがびちゃびちゃになる弊害も想定される。効果効能は減退したうえ、クール感も損なわれ、得られるのはぐちゃぐちゃ感である。湿度の高まりにより股間のかゆみが増すことになったら目も当てられない。等々の要因から適量を塗布しつつなくなったあとはポリポリポリしか道は残されていないのである、僕には。もともと奥様は僕の医薬品・生活用品の使い方に疑念を抱いている。昨夜も「歯磨き粉の消費ペースが早すぎ。何か変なことに使っていないか」と言われたばかりである。奥様にデリケアエムズの負担をお願いするには、厳密な監視を受けるのは避けられない。さもなければ、僕がデリケアエムズのクール感を満喫するために身体の他の部位に塗布しているのではないかという彼女の疑念を払拭することはできないからである。具体的には1回に使用するデリケアエムズを奥様に計測していただき、事前にラップフィルムで包んでおくのである。1週間に1度あるいは月に1度位の頻度で計量したデリケアエムズをラップフィルムに包んでいく作業をするのである。奥様の監視下で、生産量をExcelで管理してね。一日に使用できるデリケアエムズ・イン・ラップは4個まで。そんな『未来世紀ブラジル』のような『華氏451度』のような暗い未来を想像していたらストレスにより股間のかゆみがマシマシで、ポリポリポリ、ポリポリポリポリ、ポリポリ、ポリポリポリポリ、ポリポリポリ、ポリポリポリポリ、ポリリズムが止まらなくなってしまった。無理だ。耐えられない。となると経済的側面からデリケアエムズがストップする暗い近未来しかない。もはや、高温多湿環境を変えていくか、あるいは股間ポリポリを社会的に認めてもらい、往来でポリポリしていても、最低限のエチケットを守っていれば「まぁ仕方ないよね」とスルーできる寛容さを社会が身につけるしかない。そんな社会がやってくることを信じたい。そして僕は真夜中に全身のかゆさから解放されたゾウの夢を見る。ぱおーん。(所要時間40分)給食営業マンが本になりました。よろしく。【電子版限定特典付き】 給食営業マン サバイバル戦記 カスハラ地獄、失注連鎖、米の仕入れも赤信号