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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

妻のおかげでだらしがない人生をやめられました。

日記
振り返れば奔放でだらしのないどうしようもない人生だった。いよいよ妻からも三行半を突きつけられてしまいそうだ。奔放、だらしないといっても女性関係でもお決まりの男性機能の話でもない。尿漏れのことだ。英訳すると…強いて言えば「ハルンケア」になるのだろうか。

僕の下半身はとびきりだらしがなく、特にお酒を飲んだときや寒いとき、トイレを済ませて出てくるとぽつねんとズボンに染みが出来ている。強いショックを受けたり、綺麗な女性をお見かけしても漏れてしまうことがある。最初は四国くらいだった染みは、長宗我部さんも驚きだね、油断するとアメリカ合衆国くらいまで領土を広げている。

そういう染みを見つけるたびに僕は苦い記憶を再生してしまう。大学生の頃だ。真夏だった。意中の女性とジェットコースターに乗った僕は盛大にチビってしまったのだ。不幸中の幸いは当時お気に入りだった白のスラックスではなくジーンズをはいていたことくらいだった。股間にアメリカ合衆国(ハワイとアラスカ除く)を建国した僕は相当に焦ったのだろう、女性にバレないように、買ってきた缶ジュースの周囲に付着した水滴を股間のアメリカに擦り付け、国境線を曖昧にして逃げ切ろうとしたのだった。彼女にはバレなかったがそれきりになった。「そのジュース飲んでいい?」と言われて犯罪隠蔽のため、我が身可愛さのため、尿素まみれの缶を差し出してしまった罪の意識が僕を彼女から遠ざけたのだ。

最近は加齢のせいで漏れやチビりが酷くなってきた気がする。もちろん僕も下半身をこまねいていたわけではない。トイレするときはズボンとパンツを膝まで下ろし、用が済んだら、残らないように思い切り振っている。上上下下左右左右…。それでも残尿感が完全に消えることはなく、先日、同僚たちが僕が尿漏れしていることについて陰口を叩いているのを偶然耳にしてしまった。「尿漏れ課長」 なんて悲しい日本語だろうか。

今朝、恥を偲んで妻に相談してみた。「尿漏れがヒドいせいで迫害を受けている。けれど老人用オムツをする覚悟はない。僕はどうすればいい?」と。すると妻は何か決意をしたように真顔で頷くと「多い日も安心」といって女性用のナプキンを僕にくれた。横漏れギャザーというのだろうか、昨今の女性用ナプキンの発達は目覚ましいものがあるらしい。とりあえず妻の言うように当ててみたが、これが性差というものだろうね、まったく肝要なところに当たらない。仕方なく、そのものを包みこむようにセッティングしている。さながら紙の貞操帯だ。

僕が女性用ナプキンを着けているとも知らずに、いつもと同じように危機感もなくただ働いている同僚たち。二度と尿漏れ課長と言わせない。朝。トイレしたあと、僕は漢らしく振り回さなかった。今日のスーツはグレーだが僕はもう退かない、媚びない、省みない。ナプキンの吸水性は凄まじく、股間には四国はおろか沖の鳥島すら浮かんでこない。今、僕は「多い日も安心」という妻の言葉と圧倒的な吸水性を信じて、デスクに座ったままいたしてしまおうかと考えているところだ。これがテロと言われても構わない。
(この文章は貴重な昼休みの20分を割いて書かれた)