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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

非童貞を殺す言葉

日記

かつての恋人が言ってくれた「内臓の位置が変わっちゃう!」という言葉を胸に抱いて死んでいきたい。言葉の主は、お嬢様大学を卒業後、外資系企業に勤務していた女性で、別れの原因はボタンの掛け違いという言い回しが大袈裟に聞こえるほど些細なものだった。性格。ルックス。収入。勤務先。将来性。乗用車。趣味。性癖。ビジョン。たったそれだけのことで僕らは別れてしまった。彼女は今でいうところのキラキラ女子だった。彼女との記憶の美しさは、マイナスな意味で使われがちな「キラキラ女子」に、ポジティブなイメージを与え続けている。

 

彼女と出会う前の僕は、極端にいえば女性が怖かった。憎んでいたのかもしれない。ずっと昔の話。「こういう迷惑メールを送ってくるの。恥ずかしくないのかな」これは僕が送ったデートのお誘いメールに対する返事だった。相手は会社の後輩で、今思えば独りよがりだったのだけれどイイ関係にあると僕が思っていた相手。明らかに第三者へ送るはずの僕への悪口だった。このときのリアルガチで凹んだ気分を僕は忘れることは出来ないだろう。震える手でケータイを操作したことも。「メールの相手間違ってるみたいだよ(^_^)v」精一杯の返事だった。彼女からは形だけの謝罪が送られただけで疎遠になった。不幸な事故だった。
 
事故じゃなかった。第三者は同僚の男だった。そいつからウザがられてるの気づかないと本気で嫌われるぞと忠告された。彼女が事故を装ってメールを送ったという事実も教えられた。故意だった。「何でそんな偽装をしたんだい?」僕が訊ねると彼は答えた。「真正面から送ったらお前ストーカーになりそうじゃん」「お前執拗な性格してるだろ。地獄の底まで追いかけて行きそうな意味不明な行動力あるだろ」「ストーカーになりそうな顔をしてるんだよ」当時絶賛大ブームだったストーカーというワードで責め立てられた。や、やめてー。数年後、彼と彼女が結婚したことを知った。恋だった。起業して成金になった彼らはキラキラと見てくれだけキレイな場所で見た目だけゴージャスな食事をSNSにアップし続けているのを僕は今も執拗に監視し続けている。
 
 
「本気でキッツいから電話切るね」こんなことを女性に言われたこともあった。彼女もキラキラしていた。目が常時獲物を狙うようにキラキラと輝いていたので、何らかの薬物をキメキメしていたのかもしれない。原因を指摘されるのもきっついが指摘されないのはもっときっつい。
 
僕がノーマルだと考えている行動が異常だったら僕に明るい未来はないからだ。何がキッツいのか教えてほしい。後学のために知りたいんだ。君のような微妙なルックスのババアよりも上級の女性と付き合うために!僕は悪意や恨みからではなくピュアな気持ちでそう訊ねた。「キッツいから切るね」それから彼女は「電話代勿体ないから」と捨て台詞を残して電話を切り僕の前から永遠に消えた。なぜ女性は電話代かさんで迷惑してると宇多田ヒカルみたいなことを言うのだろうか。わからない。こういう女性との素敵な別れたちが僕を女性不信に変えたのだった。
 
内臓の位置を変えてしまった彼女の話だった。彼女との別れの土俵際で僕は粘らずにいられなかった。無理、無理、無理。彼女の突き押しを土俵際で受けた僕は「君の内臓の位置を変えてしまった責任が僕にはある!」と絶叫した。「そんなことあるわけねーだろ。死ね!」そう彼女は言い返して僕は土俵を割った。それが最後だった。
 
今、僕が生きていられるのは「内臓の位置が変わっちゃう!」という彼女の言葉があるからだ。今まで何人かの女性と付き合ってきたけれど、結局、僕の心に残ったのはその言葉だけだった。生きていくためには醜いものには蓋をしてキレイなところだけを取捨選択していくことも大事なのだ。つまり誰の中にもキラキラ女子はいる。キラキラ女子を笑うとき、それは自分自身を笑っているのと変わらないのだ。
 
(この文章は朝コーヒーを飲みながら20分かけて書かれた)