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Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

真・エア社員がやってきた

慢性的な人不足に加え、それを解消しようと既存の社員より遥かに好条件の求人を広告やハロワに出していたことが社内掲示板への匿名社員のタレコミによって発覚したものだから「行くアテないから」「めんどくさい」なんつーポジティブな理由で退職金制度がなくても会社に残っていたボンクラ社員たちの間にも厭世的な気分が広がり退職する者があらわれはじめ人不足はいっそう悪化。採用計画を立てたのはハサミも使えないバカなのだろう。かくいう僕は昨年の段階で今の状況をほぼ完璧に予想しており、皆にはわりーけどつってうしろ髪を引かれることなど皆無な晴れ晴れな気分で既に転職活動をはじめていた。活動の結果が伴わず後発の同僚どもが先に辞めていくことになるとは予想できなかったけれども。転職活動で気づいてしまった現実は僕が汎用性のない人間ということだけ。きっつー。

そんな公私ともに地獄篇の僕のもとに人事総務の人がやってきたのは先週水曜日の夕方のことである。営業部課長という肩書きを持ってはいるもののトップの意向で新規開発営業を外注化したため僕はクレーム処理や誰もやりたがらないメンドが臭いことを業務にしている。いわばネガティブワーク。人事総務の人は僕の追い詰められた現状を見越して頼みごとに来るイヤな奴。機会があればヤってやろうと思う。彼は僕にこんなことを言った。「空気になっている社員を処分したい」処分とは穏やかではない。詳しく話をきけば、エア社員をポアしたい、手を貸してくれという話だった。同僚を手にかけるような人の道を外れたことなど出来るはずがない。一方、転職の道が見えないので経済的にはあとわずかの間この会社にいなければならない現実。僕は自分の経済のためだけに同僚を貶める手伝いに加担することにした。この瞬間の僕は確かに悪魔クンでした。

しかし誰を?総務の人は「会社が障害を持った方を雇用しなければならないのは知っているな?」と僕に訊ねた。こういうクエスチョンになってないクエスチョンはろくなものがないのを僕は知っている。「もちろんです」「障害を持っている人を雇用すれば補助金がもらえ、規定の人数を雇用しなければ逆に金をおさめなければならない。しかし課長。君はその目で彼らの仕事ぶりを見たことがあるか?」こいつ何を言ってるんだ?と思いつつ僕は既に結論に行き着いていた。僕は悪魔クンだが目の前のこいつはこの人間はホンマの悪魔ではないか。「僕にその人たちを追い出せと?」「私はそんな命令はしていないよ。君の自発的な行為だよ」クソすぎる。会社には未練などない。転職先もない。だがこいつは、このクソヤローだけは許せない。道連れにしてやる。Zガンダム最終回のシロッコの気持ちがやっとわかった。僕はスマホをいじるふりをして音声レコーダーアプリをオンした。

「で、誰のことですか」僕は質問した。なんとしても名前を挙げさせねばならぬ。僕の頭の中に障害を持ちながら一生懸命に働いている同僚の姿が浮かんだ。すると何ということでしょう、総務の人は障害を持っていない同僚の名前を何人か挙げた。僕の下で事務をやってくれているピンクチョッキ君の名前もあった。意味が分からない。どういうことだ?戸惑う僕に人事の人は、《障害を持っている人たちがあれだけ仕事をしているのに今名前を挙げた者は空気みたいに何もしていない。純粋に職業能力のない者を減らして障害を持っている人を一人でも多く雇用した方がずっといい》という意味の日本語をお話になられた。彼が正しいのか正しくないのか僕にはよくわからない。ただ偏見で人を見ていたのは僕の方であった。猛反省。

無意識のうちに差別していたのは僕…。この心のダメージは転職活動をフィニッシュさせても癒されることのない、女子大生でフィニッシュしなければ癒されない種類のものだ。間違いなく。(所要時間21分)