Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

辞めた会社の社長から復帰を打診されているのだが、その言葉が刺さりすぎてヤバい。

昨年末めでたく怨恨退職した会社のボスが僕を呼び戻したいと言っているのを人づてに聞いた。ボスとは色々あったけれども実にありがたいことだ。昨今、北朝鮮ミサイル発射、佐々木希さんご結婚等々、世知辛い出来事ばかりで、世の中にはこのような暖かみのある出来事が不足しているのではないか。だからこそこのたびボスからいただいた、心に刺さる言葉の数々を皆さんとシェアしたいと思う。なお、当方絶賛失業中につき、新聞に掲載されているサラリーマン川柳を読むくらいしかやることがない都合上、ところどころフリースタイルで吟じてしまっているがスルーしていただけたら甚だ幸いである。


・「本当は 他の人間 戻したい かなわないから いたしかたなく」→(解説)「第一候補は他にいるけどとりあえず人がいないから奴で仕方ないだろう」などとボスは謙虚なことを仰っているらしい。一般的な人間が外れドラフト一位と言われて喜んで戻ると思っているのだろうか。遠慮なくドラフト一位を指名していただけたらと願うばかりだ。


・「宣伝を 見直してくれ 言われても 無理ゲーすぎる 鍵あるかぎり」→(解説)元同僚から「社長が《広報担当として僕を呼び戻して、公式ホームページやなぜかフォロワーの増えない会社公式ツイッターのテコ入れをさせたい》と口にしているぞー」と聞いて当該公式ツイッターアカウントを確認しにいって、鍵がかかっていたときの絶望を、わたし、絶対忘れない。


・「あいた穴 小さいけれど 歪すぎ」→(解説)「奴が抜けた穴は小さい。極めて小さい。小さすぎる。ザコすぎる。だがそのザコい穴が歪すぎて誰にも埋められないから仕方ないから戻したい。小さい穴を埋めるだけなので待遇もそれなりに小さいが」とボスは仰っておられるらしいが、そんな口説き文句が響く相手がこの宇宙にいると思っているのだろうか。正気か。

 

・「海の家 切り盛りできる あいつなら 頭を下げる 価値はないけど」→(解説)「あいつなら海の家を切り盛りして行き詰まった状況を打破してくれるだろう。頭を下げるつもりはないけど受け入れてもいい」かつて。運営していた海の家の失敗を僕一人に押し付けておいて傲慢なお言葉。呼び戻す側の言葉とは思えない。まったく刺さらない。


・「戻っても 新人たちと 同じ場所 辞めた人間 見せしめのため」 →(解説)ボス曰く「あいつには戻ってきてもらいたいが役職や待遇は低いところからやり直しになる。仕方ないよね。人を憎んで罪を憎まず」。いつでも戻って来られるようにドアをあけてあると豪語するボスの心の広さと器の小ささの対比をあらわした悲しい歌でございます。呼び戻す気あるのか。痴呆か?


・「あいつなら バイトのシフト 埋められる 決まらなければ 苔のむすまで」 →(解説)人不足の飲食業界。依然としてアルバイトも埋まらないような状況で「奴を呼び戻して嫌がらせで埋めさせよう。バイトが決まらないようなら(苔がびっしりと生えるくらい)長い期間穴埋めしてもらおう。それで潰れても、一度辞めた人間だから別にいいだろう」と漏らしているらしいボス。戻す気ないだろ。


・「あやまちを 正せるならば 命がけ 辞めた人間 再教育」→(解説)「私の教育が間違っていた。捲土重来の機会があったら今度は命をかけて辞めていった人間を再教育しアイアイサーしかいえない戦士に洗脳したい」と仰っているらしいが、「むしろ貴兄が精子から教育をやり直したほうがよろしいのでは…」以外に返す言葉が思い当たらない。

 

・「今こそは 部下の失敗 受け入れる 我が失策で 散るぞ悲しき」 →(解説)部下の失敗を受け入れなかった己の未熟さを悔いる歌に見えてしまうのは僕の技量不足。申し訳ない。ボスは「部下の失敗を受け入れておけば会社が潰れるとき自分だけの責任にならなくていいよね」などと都合のよろしいことを相変わらず仰っているらしいです。死ね。


・「壊れない こき使っても 壊れない 無事これ名馬 闇駆け抜ける」→(解説)ボスは「あれだけこき使っても壊れない人間はいない」と僕を評価してくれているらしいけれども、闇のブラック企業ぶりに蹂躙された僕が数年前に身心を壊して休職したことはお忘れなご様子。ずいぶんと都合のいい記憶力でございますね。脳が死んでいるのだろうか。


以上である。もしあなたたちがかつて所属した組織の長たる人物からこのような打診を受けたら警戒してもらいたい。血のかよった人間が発したとは到底思えない酷い言葉ばかりだが、僕の心に刺さったのも事実である。「こんなバカな冷血漢に仕えていたのか…」という取り返しのつかない悔恨がぐさりと心臓に突き刺さったのだ。ちなみにこれらの言葉は元同僚たちから聞いたものである。僕の退職後、会社は相当に厳しい様子で、元同僚たちからも復帰&助力を申し入れられている。「お願いします元部長」「元部長もう一度やりましょう」…そんな言葉に一ミリほど心動いて酒を交わした席で「貴様だけ逃げるなんて許せない」「ズルい」「死なばもろとも」という彼らの薄汚い本音を知ってしまい、一ミリでも心が動いてしまった己を恥じているところでございます。とはいえ、かつて共に戦った仲間たちに「死ね」とまでは言えない。彼らには苔のむすまで死なない程度に苦しんでいただきたい。(所要時間25分)

会社のヤバい兆候をまとめてみた。

昨年末に怨恨退職をした会社が僕が在籍していたときよりも酷い状況に陥っているらしい。元同僚たちも悲惨な目に遭っているようだ。僕に力を貸してくれなかった方々が滅びようとも知ったことではない。笑いをこらえるのに必死、ザマーミロな気分だ。だが、そのような悪態ばかりついていると地獄に堕ちてしまうので良い行いをしてバランスを取りたい。具体的には皆様のために僕が目撃してきたヤバい会社の兆候を列挙する。ひとつでも該当する項目があったら荷物をまとめてもらいたい。さもないと僕みたいに手遅れになるよ。

・ワンマン経営をしていた社長が苦しくなった途端に「社員一人一人が経営者」と言い出す。

・本社若手社員の早期離職率が劇的に改善。→若手社員が全員退職したため

・「労働組合」という法で認められた存在について誰も口にしようとしない。→恐怖政治

・流行りのランチミーティングを突然導入。

・ランチミーティングがクチャラーミーティングにレベルアップ。参加者の多くが口まわりの筋力低下著しい中高年男性のためクチャラーミーティングとなる。「それでですねクチャ。総務部とクチャしてはですクチャね」「クチャクチャ、それだけはクチャも譲れませんよクチャ」クチャクチャ地獄。

・「残業代は全額支払うと執拗に表明」。→「残業代は支払うから欠員分含めて死ぬほど働いてくれ」時給換算される労働者の命。

・朝礼時のラジオ体操が復活。→表向きは社員の健康増進のためとなっているが、上層部が毎朝の訓辞を考えるのがメンド―になったから。

・「ピンチはチャンス」とピンチを招いた社長ご自身が言う。→ツッコミ入れたら即死

・親族経営のくせに実力主義をアッピールしはじめる。「血縁の異常な出世スピードは実力のため」という北朝鮮メソッドを導入。

・苦境により賞与がなくなる。但し役員向けの期末報酬は維持するという一縷の希望だけは残る。→死ね。

・社長ご子息『経営戦略の天才』『面接を受けず入社が決まる天才』通称ジュニアさんが実力でコネ入社。

・ジュニアさんが入社翌日から「NIKEエアジョーダン1」を履いて出社。

・ジュニアさんのために部署経営戦略研究室が新設。

・なぜか会社の組織図に載らない経営戦略研究室(KSK)。
 
・KSKが社員の間で「クソか…」という隠語でささやかれるようになる。

・ジュニアさん入社1ヶ月でエアジョーダンを履いたまま部長待遇(室長)に。

・ジュニアさん逃亡(退職)
→終わりのはじまり。この時点で会社クライシスに気づいた者多数

・毎年のように行われる抜本的組織改革。

・社長直轄のプロジェクトチームが多数設立。→ほとんどが立ち上げミーティングで活動停止。自己満足サイコー。

・社用車がボコボコ 

・「若手」が若くない。→四十代の僕も退職まで若手若手と言われ続けていた。わかってねえ。

・ウェブサイトのコンテンツの多くが建設中

・そもそもウェブサイトがホームページビルダーのテンプレまんま。

・アクセスカウンターあるよ。→最近なくなったらしい。悲しい。

・ウェブサイトの社長の写真が別人。→理由は言えない。

・社長のマラソンを本社スタッフ全員が自由意志で休日返上で応援。なお、声援が大きいと評価アップ。

・海の家をはじめる。→店長候補が逃亡退職したために、僕がひと夏のあいだ店長代理をやらされてました。

・海の家がつぶれる。→やる人がいない。

・「社員の給料をあげてやりたいがあげられない」と言う。あげられない理由は社会情勢と日本の景気。なお、役員報酬は毎年自動的にアップ。

・就業規則の制裁規定が充実

・社長への意見箱設置。→密告者の量産。疑心暗鬼地獄に。

・上層部がベストセラー本のタイトル、内容を訓辞に取り入れはじめる。→「置かれた部署で咲きなさい」「片付けると人生がトキメキマス」スキトキメキトキス。

・「頑張れば頑張った分だけ報います」 →頑張らない分は固定給からも無慈悲にカット宣言

・「死ぬほど働け死ぬまで働けという経営者は失格。私は社員に死んでることすら気づかせない」 →ただの悪魔やん。 

・報酬金制度がエグい

・会社内の本棚が「スピリチュアル」「陰謀論」「浜 矩子先生」「中国は滅びる」系。→スピリチュアルについては某団体出版。関係ないけど清水富美加さんお元気ですかね。

・人材不足解消のために長年働いている人間よりもはるかに好条件の求人を出す。→発覚してモチベーションだだ下がり。

・年休を本人の知らないうちに取得させる。→現在僕はこれで揉めてます。

・流行りに乗じて新社歌をつくる。→そのうちユーチューブ動画をつくると予想。

・社歌の歌詞が無駄にアツい。「いちご~~いちえ~~~のせいし~んで~」→暑苦しさこの上なし。

・上層部が「同一労働同一賃金」をドイツ連邦共和国の制度と誤解していた悲しい事実が発覚。→このときほど社員のあいだに深い絶望が広がったときはない。

・レクリエーションをたびたびレボリューションと良い間違える社長。→もしかしてだけどもしかしてだけどエデュケーションが足りない。

・退職者続出するも社長が社員の辞める理由がまるでわかっていない。→理由:社長。

・社長「社長室のドアは開けてあるのに退職者はなぜ会社や仕事に対する不満を言って来ない」と憤る。→だって、あなたが理由だもの。

・社長「私の代わりに退職理由を聞いてこい」と無理ゲーのクリアを命じるの巻。

・命じられた者が社長と本当の退職理由の板挟みにあい心を病んで休職。

・特に何も手を打たないでいたら本業に行き詰まる。→前年比マイナス・コンティニュー

・会社理念と伝統を理由に旧来のやり方に殉じる。→といえば聞こえはいいが何もしていないだけ。

・ウェブサイト内に「わが社のこだわり」的コンテンツはリンク切れ。

・あっさりと新しいことに挑戦しはじめる。→合言葉は「革新」「前進」「試しに」

・新規事業としてギャル向けのネイルサロンに手を出す。→きっつー。

・サロン向けの立地条件最高の場所ゲットだぜ。→高まる不安。

・会社乗っ取りを危惧した社長がネイルサロン経験者を閣僚に加えるのを拒否。→不安クライマックス。

・ネイルアートを見たことすらない中高年男性ネイルサロン店長が爆誕。→登用理由は闇。毎朝デスクで爪を切っていたからという信じたくない噂あり。

・あえなく閉店。→テコ入れで配りまくったタダ券がダメ押しとなる。

・飛行機出張は原則禁止(理由不明。2011まで)

・大阪出張の際、上司に付き合わされてUSJ同行。

・営業接待弾丸富士登山(毎年から隔年に)。

・婚活マッチングサービスのポスターが休憩室に貼られて大問題になる。

・「今よりも昔の会社の方が良かったとは口が裂けても言えない」と正直に言うベテラン社員。→オールタイムブラックの証拠。

・「こんなとこ入らなきゃ良かった」と失意のまま諦念退職していく数名のベテラン社員。 
 
・全体会議を出張のために欠席せざるをえなかった社員を激しく叱責する一方、当該会議においてだけ社長を褒め称えつつ立派な発言をする幹部を称賛。→北朝鮮メソッド炸裂。マンセー。

・会社のパーティーにド派手なギャルが来訪。→闇その2
 
・「残業は会社として全面的に禁止していると社長自ら表明。→その真意は、所定労働時間外は社員が己の自由意志でやってるから当局は一切関知しないというミッション・インポッシブル的なアレ。陰湿な殺しのライセンス。
 
・社長が飲みの席で「こんな仕事やりたくなかった」と本音を吐露。→じゃあやめてくれ
 
・「私の言うことを聞いて黙ってやれ」から「社員一丸となってこの危機を乗り越えよう」へ華麗なる転身を決めた社長。→もしかして己の責任を全員で分担しようとしてるだけでは…疑惑。
 
・社長の「一丸となって…」という言葉に感銘を受けた一部社員が一丸となって退職届を提出
 
・ほぼ全額、会社負担の社員旅行だけは経営状況が悪くても隔年開催。
 
・役員以外は参加費(2000円)徴収の社員旅行。→素晴らしい!
 
・退職したはずのジュニアさんが社員旅行に参戦。
 
・社員旅行のビンゴ大会、景品は年々豪華に。→こんな旅行に金を使うなら少しでも賞与を…という社員の声は届かない。無情なり。
 
・社長が社員の誰よりも早くポケモンGOをはじめる。
 
・社長、運転手付の車でポケモンの聖地江ノ島に赴きポケモンゲットだぜ!→「まだそんなレベル低いのか?」と社長様に馬鹿にされたおかげで僕はポケゴーから卒業できました。ありがとう社長。

・数年前「うちの社員ども」現在「社員の皆様」→呼び方の変遷で会社がわかる。

以上が僕が経験で学んだ会社のヤバい兆候だ。傾向としては、良いときに手を打たなかったり、状況が悪くなった途端に社員を巻き込み始めたら要注意。では皆さんが楽しい労働者人生を送れるよう草葉の陰、バイト先から祈っております。(所要時間40分)

個人的傑作とは何か/『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観て

いい作品とははたして何を指しているのだろうか。映画でも小説でもゲームでも、創作物なら何でもいいのだけれど、それらに触れる際に他人の評価を気にしすぎるのは人生の損失と同義ではないかと僕は思っている。一度きりの人生なのだから、自分の目で見て、耳で聞いて素直にいいと感じたものが良きもの、つまり傑作なのであって、それが、他人から評価されようがされまいが、はたまた酷評されていようが別に構わないではないか。大勢が良いと思っているものが、それほど良いと感じられなかった経験が誰にでもあるのではないか。そんなとき「多くの人が賛美しているのだから…」と自分の感じたものより、他人の言葉を信用してしまうのは、なんだか自分を捻じ曲げているようで、寂しいものに僕には思える。もっと自分らしく生きて欲しい。人の意見に左右されない自分なりの基準を持って欲しいと老婆心で思う次第である。とはいえ、平凡なセンスと、平均的な目と耳と思考能力しか持ち合わせていない一般人に、即座に、自分の頭で考え、自分だけの基準を持とう!というのはどだい無理な話である。皆様には時間をかけて自分なりの基準を作り上げていただき、豊かな人生を送ってもらいたいけれども、皆さんが豊かな人生を送ろうが送れまいが僕にはどうでもいいことなのも、ひとつの事実なのである。こんなことをいっていると、天邪鬼と思われるばかりなので、僕が己の人生をかけて築きあげた基準のひとつをお披露目したい。先日、「ゴースト・イン・ザ・シェル」という日本の漫画「攻殻機動隊」を原作にもつハリウッド映画を観た。無職に降格している僕から「攻殻機動隊」についてあれこれ教わるのは、正社員の皆さんの自尊心を傷つけてしまいかねないので、各自ウィキペディアなどで調べてもらいたい。僕と「攻殻機動隊」の関わりはせいぜい士郎正宗氏による単行本(1)(2)(1.5)を読み、アニメ映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「イノセンス」を劇場、テレビアニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」「〃2ndGIG」「〃SSS」をDVDで鑑賞したくらい、最近製作された新アニメはまったく知らない、その程度なので、とてもディープなファンといえない。そんな僕が観ても、今回の「ゴースト・イン・ザ・シェル」は普通にいい映画だった。既にご覧になった皆さんにとってもいい映画であって欲しいとは思うけれども、そんなことはどうでもいい。ここで冒頭の、いい作品とは何か、というクエスチョンに舞い戻る。僕にとって最高の映画か否かの基準は《鑑賞中、ハラハラドキドキし続けているかかどうか》である。この基準に拠って最高の映画としたのは、『ダイ・ハード』『T2』『青春の殺人者』『青い体験』シリーズ…。聡明な皆様はすでに気づいているだろうが、今回鑑賞した『ゴースト・イン・ザ・シェル』のことを僕は最高の映画ではなく、いい映画と評した。僕にとっていい映画とは何か。それは不眠気味の僕が映画上映時間内の相応の時間を眠って過ごせた作品。その基準に拠るとアニメ版をトレースするような描写が続き冒頭20分程度で眠りに落ちてしまった『ゴースト・イン・ザ・シェル』は非常に眠れるいい映画ということになる。僕の判定基準が正しいとは全く思わない。ただ、バカバカしくてもいいので自分なりのブレない基準を持つことが大事という話なのである。さて、僕が今までの人生で「いい映画」と判定してきた作品を列挙してこの文章の〆とさせていただきたい。『機動警察パトレイバー2』『スカイ・クロラ』『アヴァロン』『ASSAULT GIRLS』愛すべきこれらの作品には、どれも「開始20分以内で深い眠りに落ちた」という共通点以外に、大きな共通点があるのだが、それをここに記載すると戦争になりかねないので控えさせていただく。(所要時間19分)

事故被害者なのに加害者から謝罪を求められている。

示談金だか、慰謝料だか、治療費だか、名称は知らないが、それなりの大金を手に入れる見通しがついた。昨年8月の交通事故で堕った全治2ヶ月の左脛骨高原骨折、リハビリ6ヵ月の怪我に対する相手方からのマネーである。この件は、法律の専門家の先生に一任しているので金額については割愛させていただくが、国産車を一括で買える程度の金額、と思っていただければ間違いないと思う。国産車ときいて、大衆車をイメージするのか、レクサスを頭に浮かべるのか、はたまた軽自動車か、あるいは中古車か、これを読んでいるあなたの人間力や生活レベルに依存するということである。相手は泥酔して自転車に乗っていた80代の年金生活者のジジイで、道路交通法違反の分際で、生活がきつくて、つい…とか、一日一日生活するのがやっと…などどちょいちょい社会的弱者アッピールするところが気に食わないので、餓死するくらいまでムシりとって欲しいのが僕の本音ではあるけれど、正直なところ、示談金的なものについては半ばあきらめていた。金額についての評価はちょっと少ない気もしないではないが、まあ、これで良しとしよう、という気持ちになりつつある。ところが、先生の仰るところによると、強制ではないが、相手が条件を出してきたというのである。なんと謝罪を求めてきたのだ。ついにボケたかあのジジイ…と思ったが、どうやら違うらしく、事故直後、僕は痛さのあまり覚えていないのだが、相手のジジイをひどく罵ったらしいのである。死ね。クソジジイ。ぶっ殺す。テメー。というような美辞麗句を投げつけられて、心が傷ついてしまい、あの事故のあった通りを通るたびに気が滅入るそうである。まったく覚えていないが、なんつーか、すげー言ってそうである。さらに、病院に担ぎ込まれて精神が落ち着いたときに、相手からの謝罪の電話に対して、暴言を吐いたというのである。これは記憶にある。すみませんでした。今度からは気をつけます。というテンプレ謝罪のあとに「こんな歳になるまで、自転車に乗って走り回らなきゃならない社会をつくった世の中が悪いのだ」などとふざけたことをぬかしやがったので「あんた、80ですよね。今の世の中をつくったのはあなた方の世代じゃないの。無責任すぎやしないか。むしろ僕の世代があなた世代がつくったこのクソみたいな世の中のせいで酷い目になっている。バカなんですか。アホなんですか」と言った記憶はある。年金の受け取りにいくたびに、この僕の言葉がフラッシュバックして倒れそうになるらしい。事故を起こしたのは悪かったが一連の暴言についての謝罪文がほしい、さもなければ支払いたくない、と主張しているのである。迷惑な老害である。事故直後の美辞麗句は無意識な叫びにすぎないし、テメーが作ったこの社会の責任くらいテメーで負え、というのも事実を乱暴なオブラートに包んで言葉にしているだけである。なんで被害者の僕が謝罪をしなければならないのか。意味がわからん。僕は思うのだけれど、あの世代は日本が調子良い時代しか知らない世代なので、負け方が分からないのではないか。はっきりいって勝つときってのはどんなウスラバカでもそこそこ勝てるのである。そういうしょぼい勝者のメンタリティーがバカなことを言い出す原因なのではないか。いずれにせよ、謝罪のかわりといってはなんだが、無料で説教をプレゼントして差し上げるつもりでいるし、金はきちんとお支払いただくつもりである。一連の精算の後は付き合うつもりはないけれども、恨みっこなしで、加害者の彼が、どうか不元気で、どうしようもない人生を孤独に終えてくれることを切に祈っている。(所要時間17分)

バイト生活の僕に向けられた、妻の厳しすぎる言葉を分析してみた。

アルバイト、中ジョッキ、中ジョッキ、アルバイト、中ジョッキ、アルバイト、中ジョッキ、そんなハードな一週間を過ごしていたら「いいかげん君には飽き飽きしました」と妻に言われてしまった。マイッタナー。愛想を尽かされたかもしれん。来月から正社員になる妻、順調にいけば、その扶養家族になる予定の僕である。この甲斐性なしのアルバイト(43)、三行半をつきつけられても仕方ないではないか、むしろ遅すぎたくらいだ、きっつー、と普通なら考えるところだが、妻は空前絶後の超ド級ひねくれ人間。なので額面通りに言葉を受けとることは離婚問題になりかねない。取り扱い注意物件なのである。先日も突然「私の欲しいものがわかりますか?」と訊かれた。定職に就くために努力しなければならない身の上であるのについつい定食屋で生ビールを飲んでしまう自分自身のことすらノーフューチャーで、何を考えているかわからないのに他者のことなどわかるわけがない。それがたとえ寝食を共にしていない妻であってもだ。考える材料も持ち合わせていないので検討することなく「僕は超能力者じゃないからね。わからないよ」と即答。すると妻は「そういうところ…なんだよね…」と僕のスタンスを誉めてくれた。妻が欲しいもの。答えを明かすとハンギョドンのグッズだった。(注)ハンギョドンはこいつ→

LCS-055 ハンギョドン ステッカー

ハンギョドンのことを念頭にいれて日常生活を送っている人類がどれだけいるだろうか…。有史以来、僕の聴力が及ぶエリア内で妻の口がハンギョドンと動いたことは一度としてない。ヒントがあってもわかるわけがない。つまり、お利口さんの僕にはなぜこのような非論理的な行動をとるのか理解出来ないけれども、妻は相手が答えらない質問をしていたのである。それくらい妻はミステリアスでひねくれていてワンダーなのだ。さて、一般的に美人は三日で飽きると言われている。ワンダーな妻のいう《君にはいいかげん飽き飽きしました》の《飽き飽き》は、僕のことを美男子と誉め讃えているのである。扶養していただけるうえに顔の造作を誉められるとは。ありがたいことだ。素直に「ありがとう」とお礼を言うと「何を言ってるのですか」と惚ける妻。たまらない。妻は仕事で忙しいにもかかわらず、会社を辞めてから生活が不規則になりがちな僕の体調を心配してくれてもいる。「死ぬまで元気でいてくださいね。介護したくないから」「もし意識がなくなったら1日で外すからね。君が苦しむところ見たくないもん」という妻の思いやりの言葉は重い槍となって僕の胸に突き刺さっている。遺していく家族のために各種保険にも加入させられた。色々思うところはあるけれども、考えすぎないようにすること、そしてあえて考えないようにすることがが生きていくうえで必要なときもあるのだ。これからは絶対に要介護にならないように健康状態には気をつけなければならない。僕らは間もなく結婚から丸六年になる。最近は生ビール(僕)と仕事(妻)で忙しいお互いを気づかって、自ずと必要最低限の言葉しか交わさないようになってきている。「いい距離感を保ちたい」という妻の強い意向によりLINEはお互いに登録していない。メモ帳や連絡用ホワイトボードでやり取りすることも多い。会話の少ない静かなマンション。サウンド・オブ・サイレンス、落ち着いた日々。愛想をつかされるというのは愛を想って尽くされるということではないかと僕は思う。一緒に歳を重ねて共に苦楽を重ねた夫婦は言葉を介せずにわかり会えるようなると聞いたことがある。僕らも一歩一歩、確実に、その足取りは少々おぼつかないかもしれないけれども、その領域に近づいていると僕は信じている。信じているんだ。(所要時間17分)