Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

社長の流儀をまとめてみた。

 創業五十年の記念すべき年に社長直轄になった我が営業部。マラソン大会に参加される社長の給水係として、はたまた社長のスキー旅行の運転手として、営業課長の僕は社長と接する機会が劇的に増えた。そこで今日は全人類のために、僕が社長との貴重な時間を過ごすうちに、聞きたくもないのに聞かされた「トップの考え」「トップの行動原理」の一部を「社長の流儀」として公開したい。

 

流儀1「事業がうまくいっているときこそリストラを敢行する」

 別名「積極的リストラ」。金に余裕があるうちに反乱分子を切っておくことが、事業安定と一子相伝につながるとの考え。リストラは心身ともに消耗するが、好調時なら消耗に耐えられるとの判断もあり。粛清に次ぐ粛清で、反乱分子候補を追い出し続け、弊社は創業半世紀。マンセー。


流儀2「会社はムカデ」

 事業を継続していくためには多くの手足が必要だが、頭は一つあれば十分という思想。優秀すぎる人材は扱いが難しいので不要との深慮がベースにある。結果的に大卒以上はほとんど採用されない異常事態に…。一方、社長は大学に進学していないことに強いコンプレックスを抱いており、ごくたまに大卒以上の人材を雇用しては「大卒ならこれくらい出来るだろ?」と無理難題を突きつけるなど残虐性を発揮することも社内有識者に指摘されている。ちなみに現在、本社スタッフで大卒の正社員は僕だけである。ロックオン僕。きっつー。

 

流儀3「ノルマや目標は達成した時点でゼロベース」

 達成不可能なノルマを血を流しながら達成しても、社長の考えでは「ノルマ達成までの給料は払っているので、達成時点でやっとスタート地点に到達したにすぎない」。おのずと社員の間に諦めムードが蔓延し、数値目標の多くは未達に終わるものの、財政を圧迫する労務費の圧縮だけには毎年成功、バブルもリーマン・ショックもどこ吹く風、半世紀の繁栄に。

 

流儀4「水面下における白鳥の努力は一切評価しない」

 結果至上主義を梶原一騎的に表現する社長。「見えないものはわからない」の一言で部下の努力の一切を評価しないが、表に出た数値結果のみを評価基準にしているのでそれはそれで公平公正という見方も出きる。そういう冷徹な姿勢の一方で、社長の独断でスタートさせた新規事業の数値が出なくても「細かいことは不問」の一言で蒸発させたり、社内を跋扈する社長親族が目標未達でも日々のサボりや能力努力不足といった水面下の頑張りを評価するなど人間的な温かみを見せることもある。お気に入りの社員を理由もなく昇給させることも(通称「ハンターチャンス」)。部下の出自によって異なる評価基準を用いるフレキシブルさが、21世紀の企業トップには求められているという好例。

 

流儀5「社員の笑顔が生きがい」

 社員の笑顔が会社の存在意義だと言い切る社長。社員の笑顔のためには鬼になる社長。それゆえ時に会議や集会などで言葉が厳しくなることも…。厳しい叱責を浴びせ社訓唱和をさせたあとで仏のような薄い笑顔で「笑え」と命じ、社員の引きつった笑いをひとしきり観察したあとに「よく笑えるなあ」とボヤく社長…そんな社員の笑顔を見るのが大好きな社長が、僕ら社員も好き好き大好き!


流儀6「遊びが仕事」「仕事が遊び」

 フラッシュバックが起きたので説明は割愛させていただきます。


流儀7「いい仕事をするためには休みが必要」

 仕事のベースは心身の余裕が必要と言い切る社長。社長は「ウチの社員は真面目すぎる」と嬉しそうに笑い「社員が休みを取得しやすいように上層部にはガンガン休むよう言ってある」と語る社長。結果的に休んでばかりの上層部と怠惰な上層部をカバーするために働きつづける貧困層のカーストが形成、支配力がアップして半世紀の繁栄に繋がっている。


流儀8「社長室のドアは常に開けておく」

 社員との距離感を大事にしている社長。そんな社長のお考えを反映して弊社の社長室は誰でも入れるスタンスになっている。ただし社長がヒアリングしたいのは「誰が会社に対して不満を持っているか」の一点のみ。どのような不満なのか、どうして不満を持っているのかには一切耳を貸さない。なぜなら反乱分子を摘発するのが目的だから。

 かつて社長の意図がわからず社長室のドアを叩き、意見を申し上げに向かったアホが「それは意見ではなく文句だな」と一喝されたこともあった。社長の言う距離感とは、己に楯突こうとする社員をあぶり出し、ゼロ距離射撃を浴びせるための距離感なのである。こうした社員統制が半世紀の繁栄に繋がったのは想像に難くない。

 

 以上である。方法が正しいか正しくないのかを議論するのは無意味だ。半世紀事業をまわしてきたのだから正しいに決まっているのだ。社長は正義なのだ。これらの流儀が皆様の職業生活をサバイブするためのヒントになることも願う。また、起業を考えている方は、これらの作法を参考に立派なトップになっていただければ嬉しい。

 

 なお、常々申し上げているがこのブログは会社バレしている。行間を読んで僕のStrawberry on the Shortcakeを略した英字3文字を汲み取っていただければ危険をおかした甲斐があるというもの。悲しいけどこれ、会社なのよね。それではまた。生きていたら会いましょう。

 

(この文章は昼休みに30分かけて血尿で書かれた血判状である)