会社を辞めて3週間。42歳。冬。まだ次の仕事は決まっていない。ノー・フューチャーでノー・プラン、何の相談もなく会社を辞めた僕のような人でなしに、家族が優しく、そして1人の人間として接してくれている、それがかえって辛い。以前と同じように接してくれたらどれほど気持ちが楽だろうか。何から、何まで。いわば全面的バックアップ、全面的サポート状態なのだ。このような恵まれた環境に甘んじていたら、再就職はともあれ、人間としてダメになってしまいそうで恐ろしい。再就職が成就するまでは別居して単身で頑張った方がいいのではないか。そう、本気で思い始めている。現在の僕を取り巻く環境および状態を説明すると、全面的なサポートと称し、近隣に住む家族の炊事、洗濯、掃除、買物等、家事のほとんどを僕がやっている。各種支払い・ローンのために僕の分まで働いている家族のために少しでも役に立ちたい、そんなピュアな思いから現住所マンションと僕実家、たまに妻実家を慌ただしく行き通い家事をこなしている。ただでさえ家事で求職活動につかうエネルギーを消耗しているというのに、昨夏遭った交通事故のリハビリが重なるのだから、たまらない。求職活動をする暇もなく一日が終わり、滲んだ夕焼けを眺める日々を過ごしている。思いのほか家事が楽しいので、再就職が遠のいていく現実を忘れてしまいそうになるけれど、頭のどこかには将来への不安があるらしく、過去最高レベルの抜け毛を連日のように記録しては風呂場で悲鳴を上げ続けている。(所要時間8分)