Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

僕の会社における働き方改革とそれを動かす闇の力について。

僕は現在、食品関係会社の営業開発部長として働いている。先日、早朝部長会議が行われ、社長から「現状の給与や待遇を維持しつつ、現在8時間の所定労働時間を7時間へ短縮するための研究をしろ」と指示が出た。簡単に短縮できそうだが、よくよく考えてみるとなかなか難しい。取引先との調整が不可欠であるし、社長から《1.会社全体同時に》《2.事業に支障なく》《3.速やかに(来期)》という3条件が出されたからだ。即座に出た「会社の管理部門だけであれば速やかに実施が可能」という意見に対しては、社長はフェアではないと却下した。「経理や総務に携わる人間から導入したら、他の部署は面白くないと思わないか?」「出来ることから取り掛かるのは大事だが、その前提にはフェアさがなければならない。管理部門から導入はフェアではない」と社長。すげえ。僕が前に勤めていたブラッキーな会社で「フェア」なんて言葉を発したら、その瞬間、足下の床に穴が開いて地獄へ落とされるだろう。就業規則等の変更、スキームの改訂、各契約の見直し、生産性の向上、効率化を同時に進めていかなければならない。僕が預かっているのは営業開発部門だ。新規開発のベースになる訪問数や見込み客数といった「数」は、原則、営業にかける時間に比例して増えていく。つまり、今、僕が取り組んでいる営業開発部における効率化も「営業にかける時間を増やすための効率化」であり、そもそもの労働時間を1時間短縮するというのは、前提条件が変わってくるので、「聞いてないよ!」レベルのなかなか厳しい宿題なのだ。月20日×1時間短縮=月20時間短縮。きっつー。「ノルマや売上の目標数値を1時間分下げるというのは…」、僕がジョークのつもりで言いかけたのを「事業に支障なく、と言ったよね」とピシャリと遮った社長の乾いた笑顔がまだ頭から離れない。人手不足というと真っ先に名のあがる介護業界や保育園業界に負けず劣らず、僕のいる業界も人手不足だ。労働力人口は減る一方なので、このままでは事業が回らなくなってしまう。特にウチの会社の手がける店舗は「手作り」を付加価値にしているので、機械化には限界があり、どうしても労働集約型にならざるをえず、人材不足は致命傷。社長の狙いは、働きやすい環境による人材の確保と流出の阻止である。表向きは。だが僕は知っている。今までの経験で上から発信の改革が打ち出されるときはだいたいロクでもないことを知っている。ブラッキーな環境で研ぎ澄まされた生き残るための嗅覚がくんくん反応していた。こいつはくせえッーと。なので、会議に出席している面々の醸し出す、「環境が良くなるヤター!」みたいな空気は理解しがたいものがあった。社長は釘を刺すつもりだろうね、「予算や数値目標は最低の目標であって、これをクリアするのは当たり前であり、たとえ労働時間を削減しても、必達しなければならない。もし、仮に一時間が簡単に削減できるようなら、キミたちが今、部下に課している仕事、つまり仕事のスキームに甘さがあったということだよ」とお考えを述べられると、一同シーン。突然、「これは難題だ…」「今でも切り詰めているのに…」「達成出来るかわからない…」と白々しいことを言い始める各々。大丈夫だろうか。社長は人材の確保には職場環境の改善が必要といい、そのためには生産性を向上させなければならないと言っているが、たぶん、本音はちがう。逆だ。社長の本当の目的は、ともすると労働集約型事業であることを理由に、徹底的な検討を避けてしまいがちな、生産性の向上にこそある。実際、社長は「条件がクリアできなかったら、労働時間カットは見送る」と宣言している。僕には社長が「現有戦力を限界までコキ使う」と言っているように思えてならなかった。生産性を高めるとは悪い言いかたをすれば社員コキ使いである。各セクションの長は、労働時間短縮のために生産性の向上に取りかかるだろう。それなりの結果は出るはずだ。最悪、生産性向上以外の条件がクリア出来ずに労働時間カットが見送られたら…コキ使いが8時間も続いてしまうだけはないか、超きっつー、と会社を信じることが出来ない僕などは考えてしまうのだ。負け方の下手な今の会社の皆さんのなかで、そういう考えをする人はいないみたいだが、おめでたいことである。まあ、僕に出来ることは与えられた難題をクリアするしかない。会社の労働環境を変えるために必要なのは、働き方改革、職場環境整備や生産性の向上などなどいかなる旗のもとであっても、「社員を使い切る」というトップの考えであり、それはブラックだろうがホワイトだろうが変わらないように僕には思えてならない。もしかしたら、ブラック労働になるかどうかを分けているものは、法令を遵守しているかどうか、トップが責任を取るかどうか、社員に利益が還元されているかどうか、そのくらいの違いしかないのかもしれない。まあ、その違いが大きいのだけれどさ。(所要時間23分)