Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

カレーライスを食べよう。

カレーライス最高!カレーライスには作った人間と食べた人間を幸せにする力がある。だからカレーライスには金と手間をかけるようにしたいと強く思う。唐突にこんな話をするのは、高齢化の進む弊社上層部にバイキングにおけるカレーライスの役割について説明をした際、「何を言っているんだ」という顔をされ、自分の説明に自信がなくなったからである。

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バイキングというのは、ご存知のとおり、定額でいろいろな種類の食べ物が食べ放題でいただける提供スタイルだ。最近ではイチキュッパー、二ーキュッパーといった安価な価格帯で、時間制限を設けるサービスが多い。食品会社に勤めているので、クライアントさんの中にはバイキングを導入しているところがいくつかあって、食材を納品するだけでなく、メニュー提案や運営アドバイスもしている。収益のよろしくないバイキングから相談を持ちかけられたとき、僕が最初にする助言は「カレーに力を入れよう」である。

バイキング方式は、食べ放題、定額(安価)でお得、という食べる側にとってメリットばかりが目につくけれども、提供する側にとっても、盛付や配膳にかかるスタッフが抑えられる、個別オーダーを受ける手間が省ける、客単価と回転数が想定しやすい、といったメリットがある。食堂経営で大きなシェアを占める労務費が削減できるのが大きい。うまくコントロールすれば食材で損をすることもない。うまくコントロールというのは、客に「たくさん食べられた!得をした!」と思わせることである。金額(売上)と時間が確定している一方で、食べるものと量が客任せで未確定。この未確定のリスクをどう扱うかが運営のカギになる。

バイキングの運営がうまくいかないときに、陥りがちなのは「目玉商品へ過剰に力を入れる」こと。広告やビラで「超豪華!北海道直送カニ食べ放題!」と景気のいいことを言っていた店が、翌月倒産しているのはだいたいこのパターンである。たとえばメインがローストビーフやステーキなら、肉のグレードを更にあげてお得感をアッピールするような方法である。高級食材の導入、食材のグレードのアップには集客効果がある。けれども、高すぎる食材の導入は確実に収益を圧迫する(客単価は一定なので)。また、集客効果が落ち着いてしまったときに、同じ手法を使うのには限界がある。上記上層部もこの手法に執着していて、「バイキングがうまくいかないときは売りの商品を作れ」の一点張りである。食材のグレードを上げていく、高級食材で釣る、その手法だけに頼るのは、収益を悪化させるリスクがある。

バイキング方式は、どの料理(質)をどれだけ食べるか(量)が客にイニシアチブがあり未確定であるため、提供する側としては工夫して都合のいいように誘導することが大事になる。ローストビーフやステーキといった売り物になる商品はあくまで客をひきつけるエサ。そして、それ以外の料理に誘導するようにする。

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そこでカレーである。カレーは比較的安価な料理である。そしてカレー好きな人は多い。さらに匂いと香りが強めでバイキングの中にあるだけで存在感を発揮する。そのうえライスと一緒に食べればお腹が満たされる。つまり質と量を稼げる食べ物なのである。お金をかけて美味しくて嗅覚を刺激するカレーを開発して、客を惹きつければ惹きつけるほど、収益は良くなる。ステーキやローストビーフが占めるであろう胃をカレーライスで埋めてしまうのである。カレー以外にも、パスタやうどん・そば、それから唐揚げやフライドポテトといったバイキングで良くある食べ物も、質と量を稼げる食べ物である。その中でもカレーは好きな人も多く、お腹にたまるので最強。カレーを見るだけで食欲を刺激される人も多いのではないか。

バイキングの収支を改善したいなら、「お金をかけてカレーを改良しろ」というのはこういう理由からである。僕は客としてバイキングにいって、美味しそうな唐揚げや「カレーが一段と美味しくなりました」と書かれたポスターをみると「経営努力しているなー」と関心する。バイキングでカレーをたくさん食べて幸せそうな人を見るだけで、「こちらこそありがとうございます」と手をあわせたくなるほど幸せな気持ちになる。

しかし、どういうわけかウチの上層部のようにバイキングをいうものは、売りになる食材に金をかけて、その投資した分をそれ以外の部分のコストを削減して捻出しようとする人がまだまだ多い。粗末になったサイドメニューに手をつける人は少なくなり、売りになる食材に集中するようになる。そして売りになる食材への過剰な投資は収益を圧迫して、残念ながらの値上げになり、最終的には閉店のお知らせを出すハメになる。違うのだ。ウリになる料理以外のものを美味しくして、現地で惹きつけるようにするのだ。なかでもカレー。カレーにコストをかけて開発改良してそこでしか食べられないカレーや食欲を刺激するようなカレーをつくり、それで客の満足感と胃袋を満たすようにするだけで収益は改善する。つまりバイキングのカレーはおまけではあるけれどもおまけではないのだ。

という至極明快な説明をしてあげたのにもかかわらず、上層部は高齢による思考の硬直化によって理解できずに「おまけのカレーにお金をかけても無駄だ」と言うばかりで耳を傾けようとしない。加齢とは本当に嫌なものである。(所要時間29分)