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元給食営業マンが沖縄県石垣市の「具材のない豚汁」「牛乳のない」学校給食の炎上について考察してみた。

先日、沖縄県石垣市の市議がSNSに投稿した「具材なし豚汁」給食が炎上、謝罪撤回になる騒動があった。問題になったのは石垣市内の小学校で提供された給食をとらえた一枚の画像だ。リンク先参照。

news.yahoo.co.jp

この文章は給食会社の営業部長の立場から、「画像の謎」と「学校給食の炎上しやすい特性」について考察したものだ。

問題の画像は、市議が今月13日正午に学校を訪れ、許可を得たうえで撮影された当日の給食だ。その内容が貧相だったこと、「牛乳がない」など完全な配膳がなされた状態でないという指摘、指摘に対する「配膳途中」の画像を投稿したという市議の言い訳などから大炎上したのである。献立の内容は「ライス、きのこ入り豚汁、いわしのおかか煮、牛乳」。リンク先の記事の画像では、豚汁には具材が入っていない(ように見える)、イワシは何もかかっていない、牛乳がない状態。こんな給食ある?と首をかしげるようなものだった。

僕は「配膳途中の給食」という理由の意味がわからなかった。とても配膳途中には見えなかったからだ。それに配膳途中が真実であっても、それを撮影・投稿する意味がない。市議は、学校給食の実情を伝える意図があったようだが、それならば当日の献立を確認して完全な状態を報告するべきだ。まさか市議ともあろう人が、ウケねらいでSNSに投稿するなんてありえないから謎である。ちなみに市のホームページにちゃんとした当日の給食が掲示されているので確認してもらいたい。

「配膳途中」がおかしい。学校給食は学校給食センター(または自校の給食室)で調理され、運搬され、教室で配膳される。一人当たりの給食内容が決められていて、それに従って配膳される。一般的な給食では、教室で配膳される際に生徒たちがトレイをもって並び、配膳担当の生徒や先生からごはん(パン)、主菜、汁物、牛乳を受け取りトレイに乗せてから席に戻る(①とする)。あるいは生徒は席についていて配膳係たちが回ってトレイに配膳していく(②とする)。問題の画像でトレイの下にあるのは木材に見える。机かテーブルだろう。配膳途中なのにトレイは、手にもっているのではなく、木製の机のようなものに置いてある。そこから考えると①の場合、給食のセットすべてがトレイにセットされていることになる。写真の状況にはならない。②の場合、配膳係が回ってくる途中に撮影していることになる。いずれにせよ、不自然だ。ありえない。市議はゲストなので、応接室などへトレイにセットされた給食を持ってきてもらったのかもしれない。その方が自然だ。配膳されたものが運ばれてくることになり、やはり配膳途中はありえない。

ではどういう状況なのか。配膳途中というノイズを外すとわかりやすい。「品切れ」である。市議の言葉によれば、13日の正午に学校を訪れ、許可を得て撮影に至ったことになる。その時間の訪問ならば、給食が残っていない可能性がある。品切れ状態で寄せ集めた給食だったのではないか。それなら豚汁の具材や牛乳がないことも説明できる。これがいちばんすっきりする。ないものは配膳できない。「1年生の給食では切れていたけど、3年生の給食に豚汁の具が残っているので少し待ってください」みたいなやりとりがあったかもしれない。その前に市議は学校から退出した。それなら確かに「配膳途中」になる。いや、それでもそれを投稿するのはよくわからない。いろいろ考察したけれどもなんか変だ。まさか、配膳途中と弁明しなければならないような給食の画像をあえて作ったようなことはないと思うけどね。市議ともあろう人がそんなこと、まさかないよねー。

なぜ学校給食はSNSで炎上するのか。学校給食はただの給食ではないからだ。たとえば社員食堂も給食だが、貧相な食事がSNSに投稿されても「ひどい社員食堂wwww」くらいで笑いのネタとして消化されてしまう。対して、学校給食がそうはならないのは、単なる食事ではなく、政治、教育、財政、社会を反映したものだからだ。地方自治体の選挙公約で「学校給食の改善」を掲げるのも、自治体と対峙している勢力の方が「今の行政はこんな給食を子供たちに食べさせている」というふうに議会で給食をテーマにされるのはそのためだ。「地域の子供たちがどんな給食を食べているのか」は地方自治体の政治がうまくいっているかどうかのわかりやすいサンプルなのだ。だから少々貧相な内容の給食がネットにあがると炎上しやすい。

もうひとつ学校給食が炎上しやすい理由がある。学校給食は大量調理だ。自校式であれ、センター式であれ、大量に調理され配送され、配膳はクラスの現場で行われる。時間的な制約があるため集中して配膳が行われる。そのため効率的にならざるをえなくなり、凝った盛り付けは不可能だ。食器も洗浄と運搬を効率的に行う必要があるため、利便性が高く、白くて丸くて壊れにくいものを使うことになる。ひとことでいってダサくて映えない食器だ。

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例えばハンバーグなら、学校給食では、丸くて平坦な主菜皿にハンバーガー1つが置かれてしまう。街のハンバーグ屋さんだったら、付け合わせを付けたり、気の利いた盛り付け方をして映えるようにする。画像は、給食クマさんがハンバーグを学校給食へ出すときの理想と現実について悩んでいる姿である。要するにあらゆる制約によって学校給食は画像にすると映えないものになりがちなのだ。


学校給食は「単なる食事ではなく地方自治体の政治や経済や社会を反映したもの」そして「時間的な制約と効率性ゆえに映えないものになりがち」であるため、ひとたび、少々問題のある内容の学校給食の画像がSNSに投稿されると大きな話題になるのである。今回の「具のない豚汁給食」騒動のような事態を回避するために僕らにできる事は、SNSに流れてくる一枚の画像で判断するのではなく献立を確認することで(最近は献立と画像が公開されている)、炎上に加担しないことが大事になる。実際に現場の学校給食の現場は、厳しい環境や条件の中でよくやってるところがほとんどなのだ。学校給食は大事なものだ。だから大人たちの争いの道具にしてはいけない。

僕は給食の営業マンの立場から言えるのは、問題が起きている学校給食は、ほぼ、仕様や制度設計や入札等の問題である。現場はそれを押し付けられているにすぎない。だから、今回の騒動のように、何らかの意図があったかどうかはわからないけれども、たった1枚の画像で現場が責められたりするのは理不尽だしすごく悲しい。(所要時間34分)