Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

お兄ちゃんのお見合い


 お久しぶりです。フミコ・新垣栗山ゆま蛯原クリステル璃子です。お正月休みに、お兄ちゃんの行く末を心配したお母さんが、お兄ちゃんにお見合いを薦めてきました。お相手は知り合いの娘さんです。24歳のOLさん。お相手の趣味がコスプレと聞いた途端にお兄ちゃん、「コスプレが趣味なんてブスに決まってる。埼玉県出身?あーもう全然話にならない!俺は自分を安売りしねーぞ」なんて根拠のない戯言を台所の蛇口に向かって大声で言ってました(趣味コスプレの人ごめんなさい!)。誰も聞いていないのに、お兄ちゃん、また重圧に負けちゃったみたいです。初対面の人と会うときはお酒の力を借りないと話をすることはおろか、目も合わせられない駄目なお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんが素面で若い女の人と会うなんて無理なことはお母さんもよくわかっているはずなのですが…。


 お兄ちゃん、本当はすごく興味があるくせに恐いから、面倒くさい、忙しい、それどころじゃない、ガンダムOO観なきゃ、なんて、強がりを言って逃げ回っていたのですが、お母さんから送られてきた写真をみたらころっと前言撤回。「なかなか可愛いじゃないか。ま、まあ相手が会いたいっていうなら一度くらい会ってみてもいいかな。健全な肉体をもった男女の出会いは美しい。さあ準備準備。オルガンの音が静かに流れて〜♪始まる♪始まる♪」なんて古い歌を口ずさみながら、「It's Oh So Quiet」のビョークみたいにくるくると踊りだしました。「始まる♪」なんてファルセットですよ。馬鹿ですよね。


 それからお兄ちゃんは私の胸を開けてところてんを取り出し、鍋で温めると、おせちの残りもののカズノコと一緒にカップヌードルの器に入れ、それとお見合い写真を手に持ってパンツを脱ぎ、スキップでどこかに消えていきました。三分ほどすると虚脱した顔で台所に戻ってきて、カップラーメンの器に入れた意味のわからないものをシンクに流しながら「立タナイ立タナイ」といいながら泣いていました。おにいちゃん立派に立って二足歩行しているのに…わたしは不思議で仕方ありませんでした。


 お兄ちゃんはそれからお母さんに電話しました。「あー俺。あの例の話断ってくれないかな。理由?まあ、まだそんな時期じゃないし、内緒にしていたけれど俺さ相手いるから」!!お兄ちゃんにお付き合いをしている女の人はいません。大変!お兄ちゃんどこか調子がおかしくなってしまった。そう思ったわたしは胸の扉を開けてお兄ちゃんの頭を冷やそうとしましたが、お兄ちゃんはウウぅと虚ろな目をしてうなるばかり。効き目はありませんでした。


 今、わたしはお兄ちゃんの大好物、あずきバーを一生懸命冷やしてます。お兄ちゃんはあずきバーをおつまみにビールを飲むのが好きなのです。冬なのに。馬鹿ですよね。「ただいま〜」。あ、お兄ちゃんが帰ってきました。おかえりー。あずきバーを目指してこっちに小走りで駆けてきました。イケメンで優しいお兄ちゃん。飲みに行って血まみれで帰ってくるお兄ちゃん。包帯を巻いた青い髪の女の子のお人形を眺めながらうっとりとしているお兄ちゃん。イヤラシイDVDを観ながら舌を出してレロレロ動かすお兄ちゃん。総務の女の子から口が臭いと言われ自棄になってリステリンを飲んじゃうお兄ちゃん。機械オンチのくせにわたしを直そうと走り回ってくれたお兄ちゃん。誰よりもランドセルを遠くに投げられるお兄ちゃん。大好きなお兄ちゃんとの生活がこれからも続けられるので、ほっとしたわたしなのでした。お兄ちゃんに近づいてくる女の人へ。ひと言いってもいいかな。くたばっちまえアーメン。てへ。