クララは立たなかった。目が覚めたとき股間にテントは立っていなかった。もしかしたら昨日のタッタッタは幻?そんなはずはない。立つんだ。立つんだじょー、と揺さぶっても意気地なしのクララは情けないペーターのようにこうべを垂れるばかり。タッタッタした前夜の行動「魔法のレシピ」を正確にトレースすれば再びタッタッタという目論見は外れたわけだ。今、僕は絶望している。タッタッタしなかったことによる絶望、それよりも深い絶望に傷ついている。前夜の行動を完璧に再現することは思いのほか難しかった。たとえば入浴の際クララに熱湯と冷水を交互にかける強化ルーティンの正確な回数。熱さに耐えかね「ACHI CHI A CHI 感じてるのか!」と絶叫しながら行っているのでそれが20回なのか21回なのか、不徳の致すところで、わからない。色気も出てしまった。タッタッタより強力なバケラッタを求めて亜鉛サプリを前夜より多く摂取してしまった。そして何より、前夜はメジャーリーガー青木宣親選手がヤクルトスワローズに復帰するニュースを胸を熱くしたのだが、さすがに2日連続ではそれほど熱くなれなかった。スマン青木。これは何を意味するのかというとバリバリのメジャーリーガーがヤクルトスワローズに電撃入団して僕の海綿体に新線な電撃を流してくれなければ僕のクララはタッタッタしないということ。連日スワローズにダルビッシュやマエケンやイチローが加わらないとシュッシュッ出来ないのだ。ダルビッシュがヤクルトスワローズ、タッタッタからのシュッシュッシュッー。そんな未来はおそらくやって来ない。ここまでが絶望。より深い絶望とは、妻に指摘されて気づいたのだが、昨日のタッタッタは苦節10年の集大成、神様がくれたご褒美かもしれないということだ。僕が短期的な戦略による成功ととらえていたものが、実は10年にわたるEDとの闘いの結果がタマタマ昨日あらわれたのかもしれない。次は10年先。そのとき僕は54才。深い絶望の真っ只中にいるけれど、ダルビッシュのスワローズ入団が僕の血流を改善し、クララがタッタッタする奇跡を信じて今日も生きるよ。(所要時間9分)
クララが立ちました。
目が覚めると立っていた。平成30年1月31日、愛妻の日の朝、つまり今朝の出来事だ。薬に頼らないタッタッタは実に10年ぶり。ブリーフが引っ張られる、窮屈だが幸せな、あの感じ。忘れかけていたあの熱さ。男の帰還。僕にはまだ立たせるところがあるんだ。こんなに嬉しいことはない。たかが、と笑わないでほしい。ここ10年の僕の人生はEDとJDで構成されていたのだから。人類にとっては小さなインポだが、僕にとっては大きなインポなのだ。だが、僕が肩に触れようとすると、その旧友はしゅるしゅると萎んで消えてしまった。僕は逞しいタッタッタがあった空間に手を伸ばし、慈しむように掌を開いたり閉じたりした。あのタッタッタから1時間ほど経過している。今はあれは夢が幻だったように思える。いや、確実にあった。この手につかんではいないが。僕は今夜、一度きりの奇跡に終わらせないための戦いを始めようと思う。タッタッタをSTAP細胞にはしない。必ず再現してみせる。昨日就寝する前の状況を再現して、明日の朝、ふたたびクララを立たせる。10年もの長きに渡り続けてきた戦いが明日終わる。そこで昨夜の魔法のレシピを忘れないように今のうちに書き留めておくことにした。帰宅。夕食は肉じゃがと納豆となめこの味噌汁。みかんを1個食してからポケモンウルトラムーンを1時間プレイ。ディアゴスティーニのニードルフェルトねこあつめ創刊号(しろねこさん)を読む。洗顔。入浴、その際クララに熱湯と冷水を交互にかける強化ルーティンも。亜鉛サプリとマカサプリ摂取。プレイステーション4でゲーム(1時間)。そういや入浴中にガンズアンドローゼスのスイート・チャイルド・オブ・マインを歌ったんだ。サビの「OH!OH!OH!OH!」に合わせて腰を前後左右に激しくフルフルしたのだ。スマホでメジャーリーガー青木宣親選手がヤクルトスワローズに復帰するニュースを再確認し胸を熱くしてから床に入る。就寝。以上だ。驚くことに珍しくエロ動画を視聴していない。昨日と同じ食事をして、今夜このレシピを完璧に再現し、明朝、僕は奇跡を起こす。いや、奇跡を日常に引きずり落とす。勃ちやがれニッポン。吉報を震えて待て。(所要時間9分)
妻がインフルに感染したので休みたいと会社に言った結果が生き地獄だった。
妻がインフルエンザに感染した。日曜の朝から体調を崩していたので、仕事は休ませ、炊事、洗濯、掃除、一切の家事を僕がやっていた。起床。洗濯をすませ、朝食と昼食の準備をしてから出勤。仕事。定時にあがって食べ物や生活品を購入してから帰宅。夕食をつくり片付け、風呂清掃を済ませてから就寝。そんな日、月、火の3日間であった。共働きという事情もあって、僕ら夫婦間には普段から最低限の会話と接触しか存在していないし、寝室も別、家事もかっちり分担しているから、妻との会話がゼロになりいくぶん家事の負担が増えてしまったところで、日常と大きくかけ離れた生活になっているわけではない。ラクショー。昨日、熱が下がらないので診察を受けさせたらインフルエンザと診断された。今週いっぱいは自宅で療養しなければならない。念のために僕も診察も受けたが、シーズン前のワクチン接種やマスクや手洗いなどの地道な予防対策、狭まることのない妻との日常的な距離感が功を奏して、感染していなかった。インフルエンザを甘く見てはならぬ。荒れ狂う川に橋をかけるみたいにこの身を投げ出そう。僕は看護のために会社を休もうと思った。良き夫をアッピールできるし、もしかしたらニンテンドースイッチ購入許可に繋がるかもしれない。そして何よりも8月から今の職場で働き始め、自分自身を高く売り込んでプレッシャーがかかっていたのだろうね、正直なところ、疲れを感じていたのだ。寝込んでいる妻を看護するという大義名分で仕事を休めるのなら、終日プレイステーション4で遊べるなら、こんなに素晴らしいことはない。問題は、家族のインフル感染看護を理由に仕事を休めるかどうかだ。今の会社は、社員を大切にするというボスの強い信念があるので問題はないと思うが、それまで20年超の足が折れても働かされた悲惨な会社員生活がそんな淡い期待を悪魔のように打ち消そうとしてくるのだった。ボスのひとことで僕の懸念は懸念のままで終わった。「問題ありません。家族の看護は立派な《休む》理由です」とボスは言ってくれた。ボスは、中途半端な仕事は嫌いなんです、と厳しさも見せた。「家族に不安があってはしっかりと仕事は出来ません。中途半端な仕事は会社にとってマイナスです。インフルエンザが治るまで休んでください。もちろんこの休みは君の評価を下げるものではないので安心してください」そんなありがたいボスの言葉に報うには仕事しかない。僕をうまくつかいこなす、ボスは賢者だ。そしてテレビゲームをやるために仕事のハードルを上げる僕は愚者でしかない。こうしてめでたく本日平成30年1月25日と翌26日は会社を休めることになった。妻に事の次第を告げると、彼女は僕の立場を憂慮したのだろうね、「休まないで。キミがおウチにいると騒々しくて心身が落ち着かず治るものも治りません」と言った。ひとことでいってウザいんですと容赦ない追い討ちをかける妻を僕は尊敬する。まさかのゲット・アウト通告。あるいはパートタイム家政婦でオッケー宣告であった。今朝、家事を済ませてから追い出されるように出社するとボスから「家族がインフルエンザなのに仕事ですか。今すぐ帰らないと君を見損ないますよ。これ以上、失望させないでください」とダメ出しをくらってしまった。妻からも職場からも望まれず、今、僕は過去最強クラスの寒空の下で居場所を失っている。夕方、家事をはじめるまで何もすることがない。リストラされたことを家族にいえず夕方まで時間を潰す親父の心境なんて知りたくなかった。「僕はどうすればいい?」話しかけた野良猫の背中が静かに小さくなっていく。(所要時間19分)
小室哲哉氏の引退とぼくらの七日間戦争
若手社員の発言に見るホワイト企業とブラック企業の違い
おかげさまで大変素晴らしい環境で働くことができている。この年齢(まもなく44才)で前職(人様からはブラック環境と指摘されている)よりも好条件で採ってもらえたのは、ひとえに僕自身の類まれな能力と実績のおかげだが、それなりに幸運も寄与したと言わざるをえないだろう。試用期間が終わるまでの半年間、粛々と働いてみて驚いたことがある。前のブラックな環境と現在のホワイトな環境とで、そこにいる若手社員の発言が似通っているのだ。なぜだろう?劣悪な環境であれ、恵まれた環境であれ、両極端な環境に置かれた人間は感覚が削ぎ落とされてしまうのだろうか。僕はこの謎を解き明かしたい。なぜなら、このまま恵まれた環境に浸かっていて、前の職場にいたときと同様に、心身を削られるのはゴメンだからだ。この謎を解き明かすべく、いくつかの若手営業社員諸兄の発言を挙げてみたい。なお、能力面でいえば、ホワイトにいる若者は優秀な人が多く、ブラックで腐っている若者は総じてイマイチ。共通するのは意識が若干高い点である。
1.長期休暇について
ホワイト企業で働いている若手社員(以後「ホ」).「年末年始の休み。長すぎませんか?」
ブラック企業で労働に従事する若手社員(以後「ブ」).「夏休み、天候に恵まれなかったのでもう一度取っていいっすか?リベンジさせてくださいよ」
2.朝早くから出社している若手社員にその理由を聞いてみると、
ホ.「すみません。自分、チカラをセーブ出来ないんですよ」
ブ.「仕事が夢に出てきて眠っていられないので出社しました…」
3.仕事についての考え
ホ.「仕事楽しいです!」聞いてもいないのになぜ主張するのだろうか。
ブ.「仕事楽しいです!」朝の朝礼でボスから「仕事楽しいだろ?」と凄まれて。
4.失注に際し敗者の弁
ホ.「クライアントの求めるものは完璧に掴んでいましたが…、ニーズを掴み損なったことが今回の敗因です」真顔で言われてもきついだけ。
ブ.「クライアントの要求がまったくわからなかったのが敗因です。よくある《どうにもならない相性の不一致》ってやつですよ」次の勝利が駆け足で遠ざかっていくのが見えました。
5.残業について
ホ.「仕事が楽しくて家に帰るのが惜しいくらいです」この分かりやすい信号を発している若者を見過ごしていいものだろうかと軽く悩む。
ブ.「帰宅する体力がなくなったので今日は社に泊まります」千代の富士を引退に追い込んだ、体力の限界。
6.プライベートの活用
ホ.「筋トレと勉強、つまり明日の準備と未来への投資です」
ブ.「仕事以外はパチンコだけやっているわけではないです。パチンコで勝つ方法を研究しています」姿形こそ違えど未来への投資なのは変わらない…。
7.ノルマについて
ホ.「これ以上、契約を取って現場回りますかね…」ノルマ達成見込み
ブ.「人不足の実態を考慮してあえて契約を取りませんでした」ノルマ未達
8.ゲーム感覚
ホ.「仕事が厳しいときほど、これをこなせばスコアが付く、アレを終わらせればステージクリアと自分の中で設定する、いってみればゲーム感覚で取り組んでいます」
ブ.「仕事って要はテレビゲームですよね。ダメならリセット」残機ゼロ。
9.失注したときのスタンス
ホ.「己の未熟さを思い知りました。精進します」
ブ.「相手が未熟すぎました。レベルの低い相手に合わせるの苦痛っすよ」
10.好きなことで生きていく人たち
ホ.「この仕事が終わらなきゃいいのに」仕事が楽しすぎるらしい。大丈夫だろうか。
ブ.「この仕事…終わらなきゃいいのに…」今の仕事終わらせるとよりキツい仕事がやってくるのに恐怖しているらしい。大丈夫だろうか。
11.アフターファイブの活用法
ホ.「平日の夜はだいたいジムかボルダリングに通っています。一緒にどうです?いい汗かけますよ」結果、ボルダリングに参加した僕は墜落して肩痛悪化。
ブ.「平日の夜は睡眠にあてています。それ以外に何かありますか…」思わず涙。「休日は通院です」で号泣。
12.自分を高める
ホ.「新たな発見と挑戦を通じてこの会社で自分を高めたい。自分の手でこの会社を高めたい」頑張ってほしい。僕のいないところで。
ブ.「仕事で身体を壊さない程度に免疫力を高めたい」
13.夢
ホ.「自分の正しい努力で夢を実現したいと考えています」
ブ.「夢を見るなんて余裕のある人間の戯言ですよ」
14.マネー/ボーナスを支給されて
ホ.「こんなにボーナスをもらってもいいのですか!頑張ります!」
ブ.「ボーナスと言える額ですか?会社、頑張ってくださいよ~」成約ゼロ男の叫びは虚しい。
15.目標
ホ.「高い目標が、私を成長させてくれます」 黄シグナルが出てるような…。
ブ.「目標が高すぎるとヤル気が失せるっす。無理ゲーっすよこんなん」営業マン向いてない信号が点灯。
16.キミは千パーセント
ホ.「99%達成は未達成です…」
ブ.「4割達成なら四捨五入で達成ということでいいじゃないですか」言葉の意味が良くわからないがとにかくすごい自信だ。
17.逆算して行動する/デイリーの行動計画の立て方を尋ねて
ホ.「年間目標から、月間、週間、日間と逆算で割り出してます」
ブ.「年間目標が無理っぽくなった時点で一発大逆転を狙います」
18.チームで戦う
ホ.「自分の案件は基本的に一人で追いますが、それが難しいと感じた時点でご相談します」
ブ.「どうせ一人ではやり切れないので、最初っから周りを巻き込んでいきます。そうすれば責任取らなくて楽じゃないですか」
19.上司
ホ.「上司へのホウレンソウは欠かさないのが大前提です」
ブ.「ホウレンソウを怠ったのは謝りますが、それも含めて上司の責任でしょう」モンスター爆誕。
20.会社とは
ホ.「自分の人生の一部です」 冗談にしては笑えないし、マジだったらヤバい。
ブ.「私は会社の一部品です」 マジでしかない。
21.結婚観
ホ.「結婚したら家族のためにもっと頑張らないと…」彼女アリ
ブ.「結婚しても寿退社できるわけじゃないから無意味です」彼女ナシ
22.転職について
ホ.「ヘッドハンティングされるくらいの人材になりたい。と常に考えながら仕事に取り組んでいます。転職するかどうかは別の問題です」
ブ.「あー今すぐにでも転職したいけれど、転職活動する体力気力がもうナイから諦めました…」
23.緊急時対応
ホ.「雪で帰れなくなったら仕事するしかないですね!」←NEW!2018年1月22日の雪で。快適な環境環境へGO!
ブ.「ベランダに雪だるま作っていいですか?」 快適な職場環境へNO!
24.見込み客の発掘
ホ.「刈取りと同時に種まきもする。明日がどうなるか不確定な営業として当然の行動ですね」
ブ.「見込み客発掘www明日がどうなるかわからないのに熱心にやるわけないでしょう?会社を辞めてるかもしれないし、死んでるかもしれないし、地球がなくなってるかもしれないのに。楽観的すぎでしょwww」 死んでくれたら、と思います。
以上である。言葉そのものは、ホワイトで働く若者もブラックで従事する若者も似ているような気がしないだろうか。両者に共通するのは、誰かに強制されての発言ではなく、(例外もあるが)自発的な発言であること。もしかしたら、ホワイト企業もブラック企業も、ある種の洗脳で従業員をコントロールしている点では同じで、その影響を若い人が受けやすいのではないかと僕は考えている。この記事を参考にシグナルを察知していただき、若年層離職率改善に役立ててもらえたら嬉しい。それでは。(所要時間28分)