Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

オッパイを救って世界を幸せにしよう


世界が幸せになる方法を僕なりに考えている。



 乳房のことを考えている。たとえば、居酒屋の呼び出しブザーを押すとき。たとえば、山々や月といった、自然の風景を眺めるとき。僕はそこに乳房の影をみてしまう。そうだ。僕は四六時中乳房のことを考えている。朝起きて、眠るまで。休むことなく、乳房について考えている。そのうち、僕自身が乳房になってしまうのではないか。そんな錯覚にとらわれる。僕の頭部が乳首、首から下が乳房といった具合に。僕は壊れ始めているのかもしれない。


 クリスマス。電車の中。正面に座った女性。目撃。物理法則に反抗して持ち上げられ、強引に寄せられた乳房。偽りの谷間。僕は悲しくなる。乳房になった僕は息苦しくなる。窒息しそうになる。鎖と縄で締め付けられたかのような苦しみ。鞭で打たれる痛み。古の奴隷の気持ちがわかるような気がする。これは圧政だ。ブラジャーによる乳房への。


 そんなもの外しちゃおうぜ。無理するのやめようぜ。あるがままに生きようぜ。こんな無理をさせられている乳房が世界中には幾千万もあるのだろう。愕然とする。唖然となる。下着を付けるなと言っているのではない。それでは圧政者と変わらない。ただ、乳房の代理者として、声無き乳房の為に、適正な下着をつけようぜって言っている。


 想像してみようよ。幾千万の乳房が正当な下着を得たとき、どれだけの量の繊維が余るのかを。そして僕ならその繊維をやわらかい生地にする。シャツを、ズボンを、靴下を作って貧しい国の子供たちに贈る。ミルクやパンや鉛筆や薬と同じ船便に乗せて。遠い国のどこかの村へ。夢と希望を。オッパイもキッズも幸せになる。たくさんの笑顔が目に浮かぶ。


 僕の前の女性が居眠り。表情に苦悶がみえる。胸が苦しいのだろう。同情。かわいそうに。その乳房を解放しよう。楽になろう。ブラジャーをしたことがないからわからないけれど、そういう無理やりなやつって針金みたいなの、入っているんじゃないかな。僕ならその針金を束ねて鉄鋼にして、学校のない村に鉄筋入りの校舎を建てるね。そこで子供たちが本を読み、昼休みにサッカーをする。そういうのって素敵じゃないか?


 僕にはオッパイはないけれど、心のなかは誰よりもオッパイなんだ。誰よりもオッパイを愛し、オッパイのあるこの世界を愛している。