Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

私の異常なお見合い・破 または私は如何にしてお見合い相手のチチを揉んで大きさに打ちのめされたか


 朝、目が覚めると泣いていた。布団に伸びた僕の右手は青白く、死んだ蛇のように見えた。左の掌で股間に触れてみる。シャクティーパット。エンゼルタッチ。大蛇は軟らかく死んでいた。僅かな希望とは裏腹に海綿体はとうに壊死しているのかもしれない。海綿体はどこかへ流れていってしまったのかもしれない。それでも人しか愛せない。海援隊が歌ったように、僕は。絵師の描いたエロ同人でつかの間の快楽に堕ちても、僕は。


 麦殻が詰め込まれた枕の横で三体のこけし、ディルド君、こじゅうろう君、リトルこじゅうろう君が木製らしく冷ややかに僕を見下ろしていた。やれやれ。身体を持ち上げる。鎧兜、城郭が描かれたペイント、洋風の人形が僕を囲んでいて、埋葬品に飾られたミイラが見た世界みたいで思わずぶふぅと吹きそうになる。ここは僕がお見合いをしたシノさんの家の和室。前夜、酒をがぶがぶ飲んだ挙げ句、壁に特攻し怪我をした僕は泊めてもらったのだ。シノさんは戦国時代好き西軍派趣味コスプレ、とある閉鎖的なイベントではノッピー☆と名乗っているらしい。やれやれ。ヤンデレ


 「ひどい顔をしているね。大の男がそれじゃあいけない。外見がパリッとしていないとダメだよ。アッハッハ」。シノさんの父親の口調は、古い覗き部屋を営む老婆がマジックミラーについた埃を柔らかい布で拭き取る仕草を連想させた。壁には伊達家紋「竹に雀」の掛け軸。描かれた雀の眼が白く抜かれているかどうか僕にはわからなかった。テレビの横にプラモデル日本の名城、鶴ヶ城。屋根がショッキングピンクに塗り替えられていて今にも泣き出しそうだった。シノさんの父親の言葉から漂う重厚な空気は、彼が手に持った夕刊フジから漏れた風俗面が打ち消していた。シノさんは仕事に出掛け、シノさんの母は昼スナックに赴き、この家には僕とシノパパの二人だけらしい。


 「病院に行く前にお風呂でもどうかね。そんな顔では大病人か重症人のようだ。風呂ですっきりさっぱりしよう。アッハッハ」。風俗面を愛でていたシノパパの言うお風呂が一般的な風呂なのか、特殊な、いわゆるひとつのトルコ行進的なアレなのか、石鹸王国的なアレなのか僕にはわからなかったけれど、僕は断ることが出来ずに、ただ、ミルクに浸してふにゃふにゃになったコーンフレークをスプーンで掬い口に入れた。「よーし決まりだな。アッハッハ」。シノパパの声が虚ろに響いた。


 スーパー銭湯。スーパーとは。平日午後のスーパー銭湯。スーパーとはなんぞや。服を脱いで大鏡の前に立つと顔のキズの周りが派手に腫れていた。キズは塞がっていたけれど顔全体が充血したように赤くなっていた。僕の顔は興奮し桃色吐息でハロニチワしたギャルの陥没乳首によく似ていた。人も少なかったので股間に垂れ下がった大蛇の先っちょをつまんで後ろに持っていき尻の谷に挟みこんで、君たち女の子僕たち男の子ヘイヘイ、と呟いてみた。退屈であった。僕の傍らをシノパパが振り回しながら風呂に突進していった。


 ちゃぴゅ〜ん。風呂に浸かり、味噌汁のワカメのようにびちゃびちゃになっていると、背中を流してもらえないかとシノパパ。えぇ〜オッサンの背中を流すの〜と躊躇していると、パパ再び、やらないか。元小結若瀬川レベルに背中に毛が生えたシノパパの背中を流し終えると彼は肩を揉んでくれないかと言った。躊躇していると、肩がこっているんだ。やらないか、と繰り返した。僕は仕方なくオッサン(55才)の肩、毛がない部分に手を置き、力いっぱい揉みはじめたのだった。


 ぐしぐしと揉んでいるうちにシノパパの超大蛇の首が右曲がりのダンディな感じで持ち上がってきた。うわーっ。軽やかに膨らんでるー。第三艦橋大破ー!しかもこの大きさ…この形状…ビームジャベリン…負けた…。僕はノッピー☆の超現実のルーツを湯気の向こうに垣間見た。徹底的に打ちのめされて肩揉みは終わった。風呂上がり、生ビールを飲みながら僕は呟いた。敵わない…。ビールの泡がお見合い相手の父親の笑い声で静かに揺れていた。白い泡、我を笑うようにして。