12/8
突然、サンタさんからの手紙が届いた。
「サンタさんへお願いを」
欲しいものを書けという。偉そうに。最後にクリスマスプレゼントを貰ったのは1985年のクリスマス。以来、30年、贈る側にまわっていたので、いざ、欲しいものと言われても思い浮かばない。「何がもらえるかわからないから、ワクワクドキドキして楽しいのではないか!」とクレームを入れると妻は「私は貴方の趣味嗜好がわからないし、推測推定予想するのも面倒くさいです。欲しいものを教示いただいて購入するのが一番効率的ですー」というお答えであった。人情紙風船。
「アストンマーチンが欲しいなー」と言えば、「金額の上限は一万円。何らかの行為行動を求めるのも不可。物品に限定」という世知辛い回答。「キュベレイのプラモ」と言えば、「日本語でオッケー」という回答。キュベレイは日本語だ。
「キュベレイ」
悲しかった。最初のお見合いで盛り上がったキュベレイのことを妻が忘れていたことがたまらなく悲しかった。あのとき僕は、キュベレイを知らない君に《宇宙に咲くアナルパール》と詩的な喩えで説明したんだよ…
12/10
数日悩んだ末に僕はサンタさんにこんなリクエストをした。
「セガ3D復刻アーカイブスツインパック」
セガのレトロゲーム集である。おっさんホイホイである。
Amazon.co.jp: セガ3D復刻アーカイブス1&2 ダブルパック: ゲーム
スペースハリアー。アウトラン。ギャラクシーフォース。光り輝いていた80年代のセガ(サンダーブレードを除く)。あの頃のセガのパワーを全身に浴びれば、僕の、喪われてしまった青さや精力も復活すると思ったのだ。
妻は「字が下手くそすぎやしませんか。ではサンタさんにお伝えしておきます」と言った。多少の暴言は言わせておけばいい。聖夜、僕はセガで復活し、妻のファンタジーゾーンでパワードリフトを決めるのだ。ゲットレディ!
12/18
大惨事夫婦大戦が勃発。戦争の理由は言えない。
こんな書き置きを残して妻はご実家に帰ってしまった。怒りのあまりに字体が変化していて、それが僕を恐怖させた。このとき僕はプレゼントを諦めたのである。
12/25
ハッピークリスマス。妻は実家から無事帰還。もはや戦後ではない。仕事から帰ってきた僕を包むシンセサイザー音。ふぁーふぁふぁーふぁーふぁふぁー。喜多郎の「シルクロード」。妻の考えるベストクリスマスミュージックらしい。高まるクリスマス熱。そして諦めかけていたプレゼントが!
三十年ぶりのプレゼント!
サンタから靴下が!!
セガ3D復刻アーカイブス!キター!
嬉しさのあまり軽蔑していた開封の儀をやってしまう。
ん?なんか違う。
レイトン教授!しかも第1作目!謎解きアドベンチャー!3D復刻どころかDSっす。ワンダー!急速冷凍されていくマイハート。頭使いたくねー。
「セガはどうしたの?」とたずねると「恥ずかしくて店員さんに言えませんでした」えー!「ボケ防止のためには頭を使うこと!インターネットで調べた結果こちらをセレクトしました」と妻はこたえた。「もしかして…」僕は不安に震えながら訊く「ボケの諸症状出てる?」「最近ちょっと…」「えっ!」「いやいやいや、あくまで予防です~」本当なのだろうか。不安すぎる。きっつー。つーか、あのリクエストは何だったんだよ…。意味ねー!この高まりまくったセガ熱をどうすればいいんだよ。
このあと滅茶苦茶口論した。